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埼玉のゲームセンターに1カ月で30万人が集まる理由

■話し手:東洋 中村秀夫さん

#埼玉県 #クレーンゲーム #ゲーム


クレーンゲームの市場(日本・アジア圏)は右肩上がりで成長している。日本アミューズメント産業界が発表した資料(28年度アミューズメント産業界実態調査報告書)によると、クレーンゲーム機の販売高は82億円で、前年比137.3パーセント。(株)東洋の代表取締役である中村秀夫さんは、この活況をもたらす要因の一つとして、クレーンゲーム機と景品の大型化でライトユーザーを取り込んだことを挙げる。クレーンゲームの裾野が広がるなか、同社がオープンしたクレーンゲーム専門店「エブリデイとってき屋 東京本店」は1カ月で30万人もの来場者を集めることに成功した。クレーンゲームは今、参入すべき儲かるビジネスなのだろうか? 



クレーンゲーム設置台数、世界一! 野菜もカレーも宝石も100円で取れる


当社はもともと、埼玉県行田市で「エブリデイ行田店」というゲームセンターを運営していますが、2019年7月13日、2号店となる「エブリデイとってき屋 東京本店(以下、とってき屋)」を埼玉県八潮市に新規オープンしました。1カ月で30万人のお客さまにご来店いただき、順調に客足は伸びています(10月1日時点で60万人)。


土・日・祝日となると駐車場前には車の大行列ができることも


たしかに追い風は吹いている状況ですが、「とってき屋」はクレーンゲーム専門のゲームセンターとして、圧倒的なスケール感と、業界初の試みであるクレーンゲームアドバイザーで明確な差別化を図っています。


「エブリデイ行田店」は「世界一、クレーンゲームの設置台数が多いゲームセンター」としてギネスにも登録されていますが、そちらの240台を大きく超える448台を用意しました。


景品数も非常に多く、店頭に出ているだけで5000点は超えています。人気のキャラクターグッズはもちろん、カレー総合研究所の井上岳久さんに協力していただいたカレーキャッチャーなど、変わり種も多数用意しています。1回10~100円でさまざまな景品に挑戦できる。その圧倒的なスケールがまずはファンの心をつかんだわけです。


1回10円で楽しめる10円キャッチャー、埼玉県の野菜や多彩なレトルトカレーは100円で!


なかでも子どもから大人まで幅広い世代に人気があるのが、宝石キャッチャーです。宝石キャッチャーでは、100円でダイヤモンドやルビーなど、本物の天然石を取ることができるんです。休日ともなると、行列ができるほどです。


「宝石鑑定士が鑑別した正真正銘の天然宝石」が人気の秘けつ



唯一無二の存在! クレーンゲームアドバイザーの使命は「客育」!?


クレーンゲームは「つかんで」景品を取ると考えるのが普通ですよね。だから、大きいぬいぐるみをアームでつかんだまではいいものの、途中で落ちてしまった、という経験は多くのお客さまにあるはずです。クレーンゲームは1プレイ100円が基本ですから、100円、200円、300円と挑戦してみて、まったく手ごたえがないと、たいていのお客さまはあきらめてしまいます。


でも、仕入原価(最大800円という決まりがある)を考えると、大きな景品はそう簡単には取れないようになっているわけです。つかむのではなく、少しずつズラして取る、といったテクニックが必要になってくるんです。コアユーザーでもないかぎり、なかなか難しい。


とはいえ、「こっちも商売だから、しかたがないよね」で済ませてしまってはいけない。せっかくクレーンゲームを楽しむ人が増えている状況で、遊んだ人が「クレーンゲームは取れないもの」と思ってしまったら、次はやらないですよね。今は盛り上がっているからいいけれど、この調子でクレーンゲームをやらない人が増えてしまったら、将来的に業界がなくなってしまいます。


だから、当社のゲームセンターには、無料で取り方を教えるクレーンゲームアドバイザーがいます。アドバイザーは、ほかのゲームセンターではあまり見かけません。アドバイスしてくれる店員はいると思いますが、他店の目的はあくまでも「お客さまに取らせる」ことです。


当社の場合、「お客さまにうまくなってもらう」ことを重視しています。だから、取り出し口の近くに景品を置いて取らせてあげるといったこともしません。どこのゲームセンターでも取れるように、最初の状態から取れるまで一つ一つ教えます。言ってみれば客育ですね。


(株)東洋 代表取締役の中村秀夫さん。起業後、30年で10以上の事業を手がける


もともとの発想は、私が小売業出身であることが大きいかもしれません。1987年、私はサラリーマンを辞めて、家電のディスカウントショップで起業したんです。小売りの場合、お客さまはお店に来て、商品を選び、お金を払って帰ります。でも、クレーンゲームだと、お金を払ったのに何も取らないで帰ることが少なくないのです。


お客さまの満足度は景品を取って帰らないと上がりません。「エブリデイ行田店」がギネスに認定されて来場者が増えたとき、県内だけでなく遠方からわざわざ車でお越しいただく方が増えました。でも、家族5人で遊んで、少ししか景品を持って帰らないことが少なくない。それが非常にむなしくなってしまった。せっかく遊びに来てくれたのに、手ぶらで返すわけにはいかない。だから、「お客さまに取っていただきなさい」と社員に言い続けています。



クレーンゲームは非効率なビジネス?


ゲームセンターの経営は、基本的に人が集まる場所に出店して、最新の機械を入れ、少ない人件費で儲けを出す、というのが基本です。そういう場合、クレーンゲームは集客装置として使われることが少なくありません。つまり、ゲームセンターの入り口付近にしかないんです。そして、奥にあるメダルゲームや音ゲーを遊んでもらうわけです。


クレーンゲームって、じつは割りに合わないんです。景品を仕入れて、倉庫で在庫管理して、景品がなくなれば補充するわけですが、つねに補充できるようにするには、在庫を管理する広いスペースが必要です。具体的には、クレーンゲーム機1台に対して2倍の倉庫量が必要となります。


クレーンゲーム機は1台1坪ほど。その1坪の2倍の倉庫量となると2坪が必要となり、合計で3坪必要になります。都内で1坪月10万円の家賃が必要だとしたら、ゲーム機1台で30万円をかせがないとなりません。当然、家賃に加えて人件費や光熱費、仕入れもかかります。都内の狭いスペースをすべてクレーンゲームにしてしまうと、大赤字になってしまいます。


だから、アクセスが決してよくない場所にクレーンゲーム専門店をつくったり、人件費のかかるクレーンゲームアドバイザーを用意したりといったことは、業界の常識とは真逆です。


「とってき屋」を出店したこの土地は、過去に4回、さまざまなお店が出店しては撤退しているんです。そんな土地になぜお客さまが1カ月で30万人も来てくれたのか。それはお客さまが集まる場所にゲームセンターを作ったのではなく、どこにもないものを作ったから、お客さまがわざわざ足を運んでくれたというわけです。


約30年前、ディスカウントショップのオープン日。大きな店舗を持つスタイルは昔から。周りに何もない田舎の田んぼのど真ん中に、いきなりドーンと大きな建物が建ったので、かなり目立ったとか



アミューズメント業界の「ドン・キホーテ」を目指す


私の経営哲学では、お金があれば誰でもできることにはあまり興味がありません。大きな投資をして、一等地に最新型の機械をならべて、という投資で目立つより、誰にもやらないことで目立つほうが、お客さまにも感動を与えられるはずです。


今でこそ、このような哲学にいきつましたが、私にも苦い経験があります。日本一の大きさのオンラインダーツ場をつくったのですが、またたく間に潰してしまったんです。一時期はオンラインダーツ台を60台ほどズラリと並べ、都内からわざわざ電車とタクシーで人がやってくるほど流行り、ダーツ台はつねに埋まっている状態でした。オンラインダーツという一過性のブームに乗って、調子に乗ってどんどん規模を拡大したのですが、あれよあれよという間に業績は落ち込み、撤退を余儀なくされました。


クレーンゲームは非常にアナログな遊びです。デジタル化が進めば進むほど、アナログ的な切り口は目立つことができます。最新の機械だけに頼らなくても、宝石や野菜という景品で注目されるフックをつくることができるんです。店内を歩くだけでも楽しめる、そんな場所にしていきたい。


日本最大級の総合ディスカウントストア「ドン・キホーテ」は、お店に入るだけで楽しいですよね。小売業をしていたせいか、クレーンゲームで「ドン・キホーテ」と同じワクワク感を与えられるものをつくりたいとずっと思っていました。


クレーンゲームは体感できることが大事です。自分の五感を使って楽しめる。ゲームセンターというより、テーマパークに近いものを目指しています。「とってき屋」のお客さまの滞在時間は非常に長い。普通のゲームセンターでクレーンゲームを遊べば、30分も遊べないところ、3時間滞在するお客さまがいます。


将来的には「埼玉県のテーマパークといえばココ!」というところまでもっていく。そのためには、子ども向けのクレーンゲーム教室を開いたり、ファミリー対抗の大会を開いたり、いろいろ仕掛けていきたいですね。

エブリデイとってき屋 東京本店

埼玉県八潮市大字上馬場460-1

TEL:048-999-5343

営業時間:10:00~22:00

https://everyday-cranegame-world.com/

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