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ビジネスパーソンの必須スキル「だじゃれ」の本当の使い方

■話し手:一般社団法人日本だじゃれ活用協会 中島ピロタカさん

#だじゃれ #ビジネススキル #地方創生



だじゃれ――それを口にした瞬間に場の雰囲気がこおりつき、本人は後ろ指をさされる。これはいささか極端かもしれないが、一定の理解は得られるはずだ。一方、「だじゃれはビジネスに役立つスキル」と主張しても、同意はほとんど得られないだろう。ところが、だじゃれはシンプルな言葉遊びでありながら、実は高い創造性と柔軟な発想が問われる知的活動なのだ。だじゃれを使いこなすことができれば、ふだんのコミュニケーションを円滑に進めたり、ビジネスシーンで交渉を有利に進めたり、新しいアイデアを生み出すことだってできる(かもしれない)。そんなだじゃれの魅力や発想方法を、一般社団法人日本だじゃれ活用協会の中島ピロタカさんに教えていただいた。



だじゃれとおやじギャグは同じもの? 違うもの?


――最初に日本だじゃれ活用協会について教えてください。

私たちはだじゃれの秘めた無限の力を活用して、世の中に笑顔と希望を届けることを目標に掲げて活動しています。協会にはファシリテーター(活動を支援する人)が何人もいて、全国各地で講演をしたり、ワークショップを開催したりしているんです。

――中島さんもそのファシリテーターの一人?

そうですね。子どもたちに教えることが得意な人もいれば、商品やサービスをヒットさせる企画を考えることが得意な人、地方を活性化させるイベントを手がける人など、それぞれ得意分野を生かして活動しています。


中島ピロタカさん。2016年にファシリテーターとして加入。「タイなのにヒラメいちゃいました? 貸切列車『鯛パニック号』」のイベント企画やBS朝日『飯尾和樹のぺっこり☆だじゃれ研究会』の監修を行うなど、だじゃれで地方活性化に貢献している

――だじゃれって「ネコがねころんだ」みたいなやつですよね。

そうですね。同じあるいは非常に似た音を持つ言葉をかけてあそぶ言葉遊びのことをだじゃれと言います。その歴史は古くて、『万葉集』や『古今和歌集』に収録されている和歌にも見ることができます。和歌を詠む技法の一つとして、貴族の間で親しまれていたんです。小野小町が詠んだ歌を一つ例に挙げてみましょう。

花の色は うつりにけりな いたづらに わが身 世にふる ながめせしまに

(長雨をぼんやり眺めていると花の色も(私の美しさも)すっかり色あせてしまった)

ここでは、最後の「ながめせしまに」が「眺め」と「長雨」のかけ言葉になっています。和歌だけではなく、織田信長も験を担ぐために使ったと伝えられています。桶狭間の戦いを前に、加藤という武士を呼び出して「加藤、今日の戦に勝とう」と言ったそうなんです。

桶狭間の戦いというと、今川義元は2万5000人といわれる大軍を率いていましたから、絶対に勝てないだろうと緊張していた織田軍の武士たちの士気を高めようとしたのかもしれません。

――あの織田信長も使っていたとは……それがいまでは「寒い」「ダサい」といったネガティブなイメージを持ちがちですが……。

だじゃれを言ってスベッた経験がある人は、ちょっとネガティブな感情を抱いてしまうのかもしれません。ただ以前、協会で600人にアンケートをとったところ、だじゃれが好きと答えた人は6割、好きじゃないと答えた人は4割という結果で、好きと答える人が意外に多かったんです。

実際、ワークショップにはだじゃれを使ってみたいという人が参加してくれますし、協会ではだじゃれを使う人を「だじゃらー」(※)と呼んでるんですけど、その中にはミュージカル女優のかとう唯さんをはじめ、気軽に使う女性も少なくないんですよ。

※日本だじゃれ活用協会では、だじゃれに対するスタンス、心構え、対応の仕方をチェックし、真の“だじゃらー”であるかを判定するテストをホームページで実施している。

https://www.dajare-zukai.jp/hantei/

――おやじギャグとは違うもの?

協会ではだじゃれとおやじギャグを明確に区別しています。その最大の違いは、TPOをわきまえているかどうかなんです。

TPOはすごく大事で、たとえば会議で膠着したときにだじゃれを使うと効果があるんですけど、逆に話がまとまったり、雰囲気がいいときに使ってしまうと、悪い意味で盛り上がってしまい、結局、何を話していたのかわからなくなってしまうことがあります。ちゃんと目的をおさえた上で、何のために使うかが大事なんです。

だじゃれに必要なのは「愛」と「勇気」と「遊び心」の3つです。愛は、相手のことを考えて言う。勇気は「言う気」で、言わないと相手に響かないからチャレンジする。最後の遊び心は、文字通り「遊び心」を持つ。いまは失敗が許されない時代なので、なかなか自由な発想がしづらくて、ありきたりなアイデアになってしまいがちですから。

だじゃれって新しいアイデアを発想する訓練にもなります。実は、だじゃれを考えることで脳が活性化することが実証されているんです。



実はスゴい! だじゃれという思考訓練がビジネスに役立つ!


――だじゃれで脳が活性化する?

はい。諏訪東京理科大学の篠原菊紀教授がだじゃれを使った実験を行ったところ、だじゃれを考えると言語的な活動に関係する左の前頭前野に高い活性が見られたんです。さらに、だじゃれを聞くだけでも効果があるんですよ。

だじゃれはかけ言葉だとお話ししましたが、2つの言葉をつなごうとすること(だじゃれを考える)、2つの言葉の結びつきを理解すること(だじゃれを聞く)で、脳活動が高まるんです。たとえば、「イスがいいっすね」と言われたとき、「あ、そういうことね」とだじゃれの意味を理解することで脳が活性化するわけです。

――新しいアイデアを発想する訓練になるというのは?

だじゃれは2つの言葉の共通点を探す作業です。それは物事を抽象化することと言い換えることができます。すき焼きと焼き肉の共通点は何?と聞かれれば、肉料理と言えますよね。これが抽象化です。抽象化というと曖昧という意味に思われがちですが、抽象化して事物の一般性をとらえ概念的に考えることができるようになると、思考の幅がグッと広がるんです。

たとえば、布団でだじゃれを考えてくださいと言われたら、たいてい「布団がふっとんだ」になります。でも、布団を寝るための道具と抽象度を上げて考えることができれば、「枕がなくてお先まっくら」「毛布をもう二つください」と、幅広く考えられるようになるわけです。

抽象化が苦手な人は言われたことをそのまま受け取ってしまうので、思考の幅が狭くなりがちです。「近くの自販機でコーヒーを買ってきて」と頼まれて自販機に買いに行ったけど、たまたま売り切れだった。そして「ありませんでした」と帰ってきてしまう。自販機をコーヒーを売っている場所と考えることができれば、スーパーやコンビニという選択肢が出てくるわけです。

ぼくの本業はビジネス用のパソコンを売ることなんですけど、いまはパソコンの性能をこまかく説明しても売れないんですね。そうではなくて、働き方改革という観点から、テレワークといった新しい働き方のスタイルを提案して売るんです。

家電も同じですよね。洗濯機や冷蔵庫は品質を上げるだけでは売れなくなってしまった。だから、各製品の性能を見て勝負するんじゃなくて、ネットワークを中心に考えてみる。スマホで使えるエアコン、照明、冷蔵庫とか、いままでつながることがなかったものがくっついてビジネスになっている。こうした組み合わせが新しいアイデアを発想するきっかけになります。


――中島さんの本業でも、だじゃれは役に立っているんですね。

ぼくはもともとグロービス経営大学院でクリティカルシンキング(論理的思考)を学んだんですね。論理的にタテ堀りして解を導き出すんですけど、その結果、結論から話せるようになり、正しいことをズバッと言えるようになりました。でも、話し方が評論家っぽいとか、上司から「お前の言っていることはもっともだけどムカつく」とか言われるようになって、周囲との関係が少し悪くなってしまったんです。

目の前の問題しか見ることができないと、正論をぶつけるだけしかできません。人は必ずしも理屈で判断するのではなく、感情で判断することだってあります。そんなとき、正論しか言えないと、ほかに考えようがなくなってしまう。

だじゃれによる抽象的な思考方法であれば、一歩離れて発想をヨコに広げることができます。だから、コミュニケーションの取り方や違う伝え方、解決方法にも考えをめぐらすことができます。そのことに気づいてからは、上司との関係も回復しましたね。

もちろん何でもかんでも抽象的に考えればいいわけではありませんが、抽象化の訓練ってしてこない人が多いんです。だじゃれは気軽にできるし、思考訓練にピッタリだと言えますね。


だじゃれはスキル! 誰でもできる5つのメソッド


――だじゃれは2つの言葉の共通点を探す作業とのことですが、具体的にどうすればいいんでしょうか。

日本だじゃれ活用協会では、だじゃれはセンスではなく、スキルだと考えており、だじゃれのつくり方をパターン化してお伝えしています。それが次の5つです。

1. 子音をズラす

「バナナ」→「ばかな」のように、あ行なら「か」や「さ」など、横にズラします。母音は変えず子音だけズラすのがポイントです。

(例)

あ→「あっとう」→圧倒

か→「かっとう」→葛藤

さ→「さっとう」→殺到

た→「たっとう」→??

な→「なっとう」→納豆

は→「はっとう」→八頭

2. 長い言葉を切る

「たいこ」→「たい」と「こ」のように、一つの言葉をそれぞれ意味のある言葉になるように切ってみます。短い単語のほうがつくりやすいです。

(例)

小学生→「ショウガ」+「クセイ」→小学生は生姜くせえ

白菜→「ハ」+「クサイ」→白菜食べたら、葉、臭い

3. 英語化する

「台所はどうやって片すの?」→「キチン(kitchen)と片しなさい」「石を落とすとストーン(stone)と音がする」のように、英単語とその日本語訳から考えます。微妙に音がズレても成り立ちます。

(例)

桃→「ピーチ」→桃がピチピチしている

みかん→「オレンジ」→オレンジが見っかんない

米→「ライス」→お米がないとつライッス

4. 音を使う(擬音、促音、濁音、半濁音)

「台の上にいるタイ」「パパ、ババ抜きしよう」のように、ある言葉に濁点をつけてみます。有名なだじゃれ「布団がふっとんだ」は促音の「っ」を足した例です。

(例)

濁音を半濁音に→パパとババ抜きする

擬音→象を見るとゾーッとする

促音→アサリの味はあっさり

5. 同音異義語

音が同じ言葉を探します。日本語には同じで読み方が漢字や意味の違う言葉がたくさんあるのが特徴で、たとえば、「こうしょう」という言葉には48種類もあります。

(例)

カエルが帰る

イクラはいくら?

1の子音をズラすはだじゃれをつくりやすい方法の一つなんですが、日本語は母音と子音の数が圧倒的に少ない言語だからです。海外にもだじゃれに似たものはあるんですけど、母音と子音の数が日本語は圧倒的に少ないんですよ。日本語の母音は5つですけど、英語だと20以上もあります。

また、日本語には音読みと訓読みがあって同音異義語をつくりやすい特徴があります。だからか、1200年以上にもわたって日本人に親しまれてきたんですね。

ちなみに、この中で一番スマートなだじゃれは英語化するパターンですね。「お、うまいな」と言われやすいです(笑)。



だじゃれは地方を救う!? 銚子電鉄「鯛パニック号」が大成功した理由


――日本だじゃれ活用協会は自ギャグ(自虐+ギャグ)戦略で有名な銚子電鉄とコラボしたイベントも実施されたんですね。

ぼくはだじゃれで地方活性化にも貢献していきたいと思っていて。銚子電鉄(千葉県銚子市)の「鯛パニック号」というイベントで、ぼくのほうから銚子電鉄にお声がけして、コラボさせてもらいました。

もともとイベント内容が「2019年4月14日、電車の中で鯛を食べる」と決まっていたんですけど、銚子電鉄はすでに「鯖威張る弁当」という駅弁がヒットしていたので、二番煎じにならないようなPR方法を考えなければなりませんでした。

そこで、まず4月14日がどんな日から調べてみたら、「タイタニックの日」と「SOSの日」だったんです。その意図は、「何かあったときに助けを求めるのははずかしいことじゃないよ」というものでした。それじゃあ、銚子電鉄も「鯛パニック号」として助けを求めて、観光客に来てもらおうと提案したんです。


鯛に扮する中島さん(上)と、鯛パニック号で食べる「花鯛御膳」(下)


ふつうに鯛のイベントを開いていたら、わざわざ銚子に来て鯛の料理を食べようとは思わなかったと思うんです。でも、4月14日にタイパニック号のイベントだと、もうこの日だけだから、行くしかないと思ってもらえる。結果的に、たくさんの観光客に来ていただいて、地元新聞の『日刊大衆日報』の一面で取り上げられるなどニュースにもなりました。

銚子電鉄のイベントが成功したのをきっかけに、そのあと銚子アグリツーリズム推進協議会から、「だじゃれランチをつくるから手伝ってほしい」という依頼が来たんです。ぼくはだじゃれは人を笑わすのではなくて、だじゃれを使って楽しむことが大事だと思っているので、「超C(銚子)級グルメ」と題して、みんなでCがつく銚子の食べ物を集めたんです。こちらも参加者には喜んでもらえたイベントになりました。


「超C(銚子)級グルメ」。アルファベットのCの形をした伊達巻や、生産日本一の春キャベツを使ったコールスロー(Coleslaw)、イワシ(祝C)のから揚げなど盛りだくさん


――銚子電鉄の自ギャグはだじゃれであって、決しておやじギャグではないですよね。

そうですね。銚子電鉄の自ギャグはだじゃれです。竹本社長に取材したいことがあるんですけど、社長は相手のことを考えて言うのがだじゃれだという本質をわかっていて、だからこそ自ギャグ戦略をとっていますよね。

だじゃれは使い方を間違えなければ非常に役に立ちます。銚子電鉄のイベントのように地方活性化に役立つこともあれば、大塚商会のCMのように、企業のイメージアップにもつなげることができます。こうしたメリットはすべて相手のことを考えているからこそです。

逆に、自分のことだけを考えてしまったら人を傷つけるおやじギャグになってしまう。以前、日本だじゃれ活用協会の対抗馬として、おやじギャグ協会を設立しようという話になりました。最初は盛り上がったんですけど、いざ活動をはじめようとなったらすぐダメだということがわかった。おやじギャグは自分のことしか考えていないから、相手を傷つけてきらわれてしまうんです。共感をまったく呼ばない。

今年、鯛パニック号の開催を見合わせたのは、もし強行していたら傷つく人がきっといるからです。結果的にすごいバッシングを受けてしまったかもしれません。同じだじゃれでも使うタイミングを間違えたら与える印象が大きく変わってしまうんです。

――日本だじゃれ活用協会として、だじゃれを気軽に言える世の中にしたい?

みんなが明るく笑顔でいられれば、だじゃれはいらないかなと思っていて。ぼく自身、場が盛り上がっているときはだじゃれを言わないし、それでいいと思うんです。逆に、不安や悩みがあったり、ネガティブな雰囲気のときはだじゃれでハッピーにしたい。新型コロナで大変ないまこそ、だじゃれの出番だと思います。

4月に緊急事態宣言が発令したときもすぐにオンラインで会議して、だじゃれのオンライン教室を無料で開いて。これからどうなるかわかりませんけど、協会が最低限、維持できるぐらいのお金を集めつつ、お金をかけられない学校や地方でイベントができればいいなと思っていますね。

一般社団法人日本だじゃれ活用協会

https://www.dajare-zukai.jp/

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