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  • 執筆者の写真Byakuya Biz Books

スマホでメガネを試着できる「Zoff Virtual Counter」が予想以上にスゴかったので開発者に話を聞いた

更新日:2022年5月1日



「お店で鏡を見ながらだとメガネを選びづらい、度なしのサンプルだと自分の姿が確認できない」「いろんな色や形のメガネを試してみたい」「店員さんに話しかけられるのがつらい……」。そんな方にオススメしたいのが、「Zoff Virtual Counter」だ。スマホで4つの簡単な質問に答えるだけで、AIがあなたにオススメのメガネを提案してくれるZoffの新サービスである(気に入ったらそのままオンラインで買うこともできる)。Zoffといえば、20年前に定額販売をひっさげて、メガネ業界を変えたメーカー。そんなZoffが仕掛ける新サービス「Zoff Virtual Counter」、試してみたらすごく楽しかった(メガネ歴10年以上)ので、開発者の太田満さんと広報の関舞奈さんに話を聞いてきた。



メガネは視力矯正器具からファッションアイテムへ


――いきなりですけど、Zoffのメガネって手ごろな価格ですよね。


 当社が創業した20年前は、メガネというと1本数万円といった高級品のイメージがあって、さらにフレームとレンズで値段が異なるので買う前に総額がわかりづらい商材でした。当社はそれに対してフレームとレンズのセットを定額かつ低価格(5000円、7000円、9000円/税別/当時の価格)で販売したんです。


――なぜそんなに安くできたんですか?


 メガネ業界で初めてSPA方式(企画から製造・小売までを一貫して行うこと)を取り入れたからですね。中間マージンを抑えて、自分たちで作って売っているんです。これはZoffの創業者がアパレル業界出身だったことが大きいかもしれません。SPA方式はもともとアパレル業界では一般的だったんです。


関舞奈さん/(株)インターメスティック マーケティング戦略本部 広報宣伝室所属。メガネ業界以外にも、小売業界のマーケティングや広報業務にこれまで携わる。商品だけでなく魅力的な社員を多くの方に知ってもらいたい、Zoffの新しいチャレンジや新商品を知ってもらいたいと広報として奔走中


――なるほど。定額かつ低価格だとメガネに対するハードルがグッと下がりますね。

20年前と比べて、メガネの受容に変化はありましたか?


 メガネは半医半商(はんいはんしょう/半分は医療器具、視力矯正器具として、もう半分は近年のように生活様式に合わせた商品でもあること)と呼ばれるのですが、まず視力矯正器具という面では生活必需品になります。もちろんその役割は今でも変わりませんが、近年ではさらに生活様式に合わせたメガネの需要も広がっています。価格が抑えられたことで、洋服のようにシーンに合わせて選ばれるようにもなったんです。


たとえば、リモートワークが当たり前になり、家にいる時間が増えました。すると、女性は化粧をしなくてもメガネをかければそれだけで映えることができるし、スマホやタブレットを見る時間が増えることで、視力が良い方でもブルーライトカットのメガネを購入されたり、これからやってくる花粉対策用のメガネを購入されたり。


こうした変化は出店場所の変化も大きいと思います。昔のメガネ屋さんは商店街に路面店としてあることが多かったと思いますが、Zoffはショッピングモールのファッションフロアに出店しているんです。

掛けるだけで旬顔になれる「Zoff CLASSIC」シリーズ。若い女性に人気の太めの黒縁フレーム(上/品番:ZA201012_14E1)と男女に人気のメタルフレーム(下/品番:ZO182021_49E1


――そう、メガネのお店って少し入りづらいイメージあります。


太田 私もその点は同じように感じていました。メガネ屋はメガネが壊れたとか、最近見づらいとか、必要にかられて行くところで、気軽に立ち寄るイメージはなかなかなかったですよね。


――今では価格面で多くの同業他社が定額かつ低価格で販売する形態の店舗を展開しています。なかなか競争が激しいのでは……?


 当社は価格だけで勝負しているわけではないんです。Zoffのブランド戦略として「Eye Performance」を掲げていて。メガネはマイナスをゼロにするという役割を担ってきましたが、そうした視力矯正器具としてだけではなくて、プラスにするような存在にしたい。ブルーライト対策や花粉対策もそうですし、釣り用のサングラスとか、ライフスタイルに合わせたメガネの開発にも近年力を入れているんです。

ゲーム用2WAYメガネ「Zoff GAME」(上/品番:ZN211Y01-72A1)はイエローライトをカットするレンズを搭載し、ブルーライトや紫外線の量を抑制。「Zoff PROTECT AIR VISOR ULTRA+」(下/品番:ZN221V02-14E1)はZoff史上最高の花粉カット率99%を実現


――Zoffは商品数が多くて、コラボ商品もありますよね。


 そうですね。幅広い世代に人気のディズニーやピーナッツとのコレクション、人気ゲームコンテンツとのコラボ、ファッションではアパレルブランドなど、いろいろコラボしていますね。Zoffでは毎月新商品を発売しているので、「今日お店に行ったら、何か新しいメガネがあるかな?」と思っていただきたいんです。


また、コラボ商品だけでなく、Zoffオリジナルの「Zoff SMART」では、スーパーエンジニアリング・プラスチックという高機能なプラスチック素材を使用していて、超軽量にも関わらず金属と同じくらい丈夫でしなやかなんです。このシリーズはリピーターも多く、累計で660万本も売れています(2021年8月末時点)。

人気No.1シリーズ「Zoff SMART」のボストンタイプのフレーム(品番:ZJ71017_B-1)


――お話を聞いているとすごく景気のよい業界という印象を受けますが、コロナの影響はいかがですか。


 ショッピングモールが休業したときなどはお店も一時休業していたので、売上は一時的に落ちましたが、全体で見ると横ばいと堅調でした。やはりメガネは生活必需品としての需要が大きく、営業再開直後にはメガネの修理や調整で困っているお客様に多くお越しいただきました。メインとなるリアル店舗での売上に加え、オンラインでの購入も増えてきた結果が売上に繋がっていると思います。


――リアル店舗のほうが売上は大きいんですね。


 そうですね。洋服などと比べると、実際に顔に合わせてメガネを試着してみたいと考える方が多い商材なのかなと思います。


――その点で、Zoff Virtual Counterはオンラインでの売上を伸ばす目的もあった?


 メガネはオンラインでまだまだ買いづらいものなので、もう少し気軽に試せる機会を作って、オンラインでも購入していただけるようにとは思っていますね。


太田 店舗を閉めざるをえなくて、お客様とのチャネルがECしかないという状況に一時期なった。その中で、やはり実物を選んでいただくのが一番いいと思いますが、商品を選んでいただく選択肢の一つ、ECを活用していただけるようにという意図で開発したところはあります。


「似合う」「楽しい」「新しい」が見つかるZoffショップ。メガネを気軽に楽しむために、ショップもカジュアルにご利用していただきたい。そのような想いから、明るく選びやすさを重視したお店には、毎月多数の最新フレームが並ぶ



一度試すとハマる! Zoff Virtual Counterの「スマホで試着」


――実際に試してみたらスマホで気軽に試着できるのが楽しくて、取材前も延々とやってしまいました(笑)。


 ありがとうございます(笑)。


太田 おかげさまでお客様からもすごくいい評価をいただいています。個人的な話ですが、私は遺伝で目がすごく悪いんですよ。だからお店の鏡でメガネを合わせようと思っても度が入ってないので、自分でかけた姿が見えないんです。メガネをはずしてもそれなりに見える方は問題ないと思いますが、私の場合は鏡の目の前までいかないと見えない。本サービスを使えば、実際にいろいろなメガネを試着した自分の姿を見ることができ、気軽に試着ができます。お客様から同じような感想もいただきますね。



――どのくらいの商品数からオススメしてくれるんですか?


太田 約900種類の中から最大18種類がオススメされます。Zoffは商品数が多く、選ぶのが大変という意見もあるので、お店に行く前にちょっと試しておくといった使い方もしていただいていますね。


――たった4つの質問に答えるだけという手軽さも最高なんですけど、ユーザーのニーズに合ったものを提案できるんですか?


太田 質問事項が多いと途中でイヤになってしまうので、質問数を抑えつつ、お客様に最適なメガネを提案できるように試行錯誤しました。


――「なりたいイメージは?」など、わりとフワッとした質問になっていますよね。


太田 そうですね。もしお客様から具体的に「赤が欲しい」と指定していただくと、ご紹介する商品はもちろん赤になりますよね。すると、提案できる幅が狭まってしまうんです。本当は自分の選択肢にはなかったけど、オススメされて試着してみたら気に入った、ということがあるかもしれない。


ですから、質問ではあえて具体的な色や形に落とし込んでいないんです。最終的にはお客様が気に入ったものを選んでいただきたいのですが、その過程でお客様に楽しんでいただけるといいなと思っていますね。

――それを可能にしたのがAIの機械学習ですね。具体的には何をしたんですか?


太田 まず社内スタッフへのアンケートを実施して、AIを作成するために17万枚の顔画像を集めました。そしてそれぞれ顔のイメージ(かわしい、かっこいい、やさしい、クールなど)をタグ付けし、各フレームにも同じようにイメージのタグ付けを行いました。最後に顔のイメージ情報とフレームのイメージ情報をAIに学習させて、お客様に似合うメガネを提案できるようにしたという流れです。


太田満さん/(株)インターメスティック Zoff Eye Performance Studio所属。Zoff Virtual Counterをはじめ、主にAIを活用したサービスを、IOTを活用したデータ分析をもとにした開発環境を整備している。40年以上のメガネユーザー。オオタさんが子どもの頃は、お店から配られるお誕生日クーポンで年に一度、メガネを買い替えていたそう


――最も苦労された点は?


太田 ゴールが見えなかったことですね。私はソフトウェア開発の経験は長いのですが、企業の基幹システムを作る場合でも、ゴールは見えているんです。「○○なものが欲しい」という要望に対して仕様を作り、間違いがなければ設計・開発・テストをする。つまり、今どの工程にいるかがだいたいわかった上で作れるんです。


ところが、Zoff Virtual Counterはほかにはないサービスを作るプロジェクトだったので、何がゴールなのかが見えない。そのため、アジャイル開発(計画→設計→実装→テストなどの工程を小さいサイクルでくり返しながら開発すること)で進めることにしました。ただ社内では初めての試みだったので、うまく進んでいるのか、ゴールに近づいているのかが見えにくく、進捗を説明するのも大変でしたね。


社内で初めてのアジャイル開発は苦労する点が多かったのですが、社内のEC開発部門ユーザーに意見をもらったり、Zoff Virtual Counterの企画から関わっていただいた株式会社 テー・オー・ダブリュー様には仕様や工程の変更でご支援いただいて助かりました。


――ということは、最初の想定とは違う部分も少なくない?


太田 AIがお客様に似合う商品をオススメする「Zoff Match」という機能は搭載するつもりでした。ただ、すべて順調に進んだわけではなくて、お客様に最適なメガネをオススメするために、社内で議論を重ねて質問の表示方法や質問画面を作りなおしたりしましたね。


――ちなみに、新商品も試せるんですか?


太田 もちろんです。新商品が発表されるタイミングで店頭に並ぶ前にもう試着できるようになっています。商品の追加はずっと続いていきますし、機能もニーズに合わせて変えていく必要がありますね。サービスとしての完成形はないと思っているので、我々はつねに変化に対応した開発を続けていきます。


Zoff Virtual Counterでは品番を指定して試着することもできる。リアル店舗と変わらない試着体験をアシストするのがPD値(瞳孔間距離)を入力できること。この数値を入れることで、より正確な試着ができる


――先ほど、ユーザーからのフィードバックも良好との話でしたが、オンラインショップでの売上も上がりましたか?


太田 そうですね。ECで購入していただいたデータも実際に取れています。それだけでなく、Zoff Virtual Counterを見て、店舗で購入していただいた方に関してはわからない部分はあるので、その分も含めると効果はかなりあると思います。


――Zoffは全国で約280店も展開していて、オンラインで購入を促すことでリアル店舗と食い合ってしまうのではと勝手に心配になりますが……。


太田 よくECとリアルが食い合うという話が語られますが、当社ではその心配はしていません。メガネは買って終わりではなく、ネジがゆるんでしまったとか、鼻のパッドがゆがんでしまったとか、メンテナンスが発生するんですね。


ECで購入はできますがメンテナンスはできませんから、リアル店舗にお越しいただけます。ECはリアル店舗への接点をつくる役割もあるわけです。逆に、リアル店舗で購入して、もう一本欲しくなったお客様がいたとき、店舗で測定した情報をもとにオンラインでメガネを作ることもできます。ある意味、補完し合っている関係と言えます。


 先ほど太田が話したように、「似合う・似合わない」という点では新しい出合いの機会を作ることがAIではできます。一方で、お店に目的を持ってお越しになるお客様は、何かしらお困りのことがあって、スタッフに相談もしたいというケースも少なくないんです。そのため、スタッフはていねいにヒアリングして、お客様の要望に合わせた商品を提案します。たとえば手元用だったらどれがいいか、外で使うなら何がいいか、または初めてメガネをかける方は何にすればいいか――こうしたこまかい要望に合わせた提案はスタッフならではのサービスですね。


――なるほど。接客でもAIと人間で得意なことが違うわけですね。AIの活用は今後も進めていく予定ですか?


 実は、お客様のニーズに合わせた、新しい商品を近日中にリリースする予定なんですよ。


――え!? くわしく聞きたい……。


というわけで、Zoffが仕掛ける新たなサービスが気になるので、後日あらためて話を聞くことに。次はどんな一手なのか? 近日中に続報をお届けする。

 

Zoff Virtual Counter

アクセスはスマホから

※推奨環境:iOS11以降のiPhone、AndroidOS最新バージョン 標準ブラウザ ※標準ブラウザ(スマートフォン等に初期搭載されているブラウザ)以外では、正常に動作しない場合があります。 ※上記OS及びブラウザを利用した場合であっても端末によっては、一部動作に制約がある場合や、正しく表示しない可能性があります。

 

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