top of page
検索
  • 執筆者の写真Byakuya Biz Books

民事再生から10年で売上10倍にまで復活! 業務用に特化したマッサージチェア「あんま王」が成功したワケ



業務用マッサージチェア「あんま王」は2012年に販売されると、累計販売台数は1万5000台、業務用としては国内トップシェアを誇る人気商品である。開発・販売を手がけるのは日本メディック。もともと他メーカーのマッサージチェアを設置・運営する事業から民事再生を経て、商品開発するメーカーとして再出発した、という経緯を持つ。「あんま王」が大きな成功を収めた裏には、“業務用に特化”したことにあるという。同社の会長・城田裕之さんと現社長・充晴さんをお迎えし、同社の歩みから現在に至るまでを聞いた。



民事再生に至るまで


――最初に、会長のキャリアから教えてください。入社されたのはいつごろでしょうか。


会長 日本メディックには前身の会社がありまして、メーカーから仕入れたマッサージチェアを販売していました。私は25歳でその会社に販売員として入社して、温泉や健康ランドといった温浴施設でお風呂上がりのお客様にマッサージチェアを体験・購入していただく、という仕事をしていました。その後は施設との交渉業務を担当するようになります。


――温浴施設でマッサージチェアを売っていたんですか?


会長 当時、マッサージチェアは家電量販店では販売されていませんでした。温浴施設での販売が主流だったんです。それから家電量販店が登場するようになって。大型店は売り場面積も広いので、それまでの街の電気屋さんと違って、マッサージ機を展示したり置いたりすることができるようになりました。またその頃は、テレビショッピングも登場します。


そうなると、営業マンがお客様に説明して1台ずつ売るという商売は時代に合わなくなってしまいました。売れなくなったため、全国に大勢いた業務委託の営業マンはどんどん減っていきました。ですから各施設に販売撤退の話を持ちかけたのですが、マッサージチェアがないと困ると。とはいえこちらもタダで置くわけにはいかないので、1回100円のコインタイマーという機械をつけたところ、販売よりも効率よく売り上げが上がることがわかったんです。そこで全国の施設のマッサージチェアにコインタイマーをどんどんつけて、無人化していきました。今から27〜28年前のことです。



――47歳で社長に就任されましたが、どういう経緯だったんですか?


会長 コインタイマーの事業が収益をあげ始めたとはいえ、まだ営業マンは残っていました。しかし、小さい規模で営業部隊を持っていても採算が取れないので、当時の(2代目の)社長がまだ展示販売を続けていたグループ会社に営業部隊を引き連れて移り、私が3代目として就任することになりました。私は施設の交渉を担当していましたから、コインビジネスでは施設との繋がりが大事だったんだと思います。2代目は営業のトップセールスでしたから。


――それ以降、コインビジネスで事業を継続されてきたんですね。


会長 コインビジネスに加えて、施設側へのレンタル事業にも乗り出しました。お客様へのサービスとして置きたいというニーズがあったからです。施設としては、マッサージチェアを1台買うとかなりの出費になります。たいてい1台というわけにはいかなくて、数台必要です。でも現場の店長さんが決裁できる金額にも限度がありますから、何百万円という買取ではなくて、月々いくらというスキームなら決裁できるわけです。


――レンタル事業はうまくいったんですか?


会長 はい。レンタル事業が軌道に乗ってきたので、特化させようとコインビジネスを売却しました。ところが、機械を買っていたメーカーからある通達があり、事態が変わってしまったのです。その通達とは、機械の一括購入です。当社は大手メーカーから機械を仕入れて、コインをつけて設置したり、施設にレンタルしていました。となると、何十万円する機械を5台、10台と買っても、月々の収入は5〜10万円です。つまり、一括で買うのは非常に厳しいんです。どんどん取引先も増えていましたから、メーカーにはずっと24回払いで仕入れをさせてもらっていました。


ところが「今後はすべて一括の支払いで」と通達があったわけです。そうなると、我々には資金力がないなかでやりくりしている状態だったものですから、もうこの事業は続けられないとレンタル事業も売却することになり、残った数人で民事再生をした、というわけです。


城田裕之さん(右)

1959年、三重県生まれ。1985年にトレヴィ(現・日本メディック)に入社。2006年に社長に就任。あんま王の企画・開発に携わる。2021年に会長に就任、同時にアイオイメディックホールディングス社長に就任。

城田充晴さん(左)

1987年、三重県生まれ。早稲田大学卒業後、みずほ情報総研(現・みずほリサーチ&テクノロジーズ)を経て、2017年に日本メディックに入社、マッサージ機器の営業、企画・開発などを担当



業務用に特化することで大復活を遂げる


――民事再生後、メーカーとして再出発したわけですよね。ノウハウはあったんですか?


会長 当時、相生電子という会社(現在は同社のグループ化)と取引していまして、医療器具の製造、販売業をしていたのですが事業が伸び悩んでいました。ですからこちらから話をもちかけて、一緒に中国まで行ってベースとなる機械を探し、日本でコインビジネスで使えるマッサージチェアにアレンジしてつくりました。


――コインビジネスに使える、つまり業務用のマッサージチェアを開発したのはなぜでしょうか。


会長 困っていたのは当社だけではなくて、実は同業他社さんも同じでした。ニッチな産業なので個人向けと比べると業務用は扱う台数が非常に少ない。メーカーに頼んでもなかなかいい返事はいただけないので、自分たちで作ってしまおうと。どういうマッサージチェアを置けばお金が入るか、逆にどんなところが不便なのかといったノウハウがありましたから。


もちろん家庭用としても使えますが、大手が参入しない業務用というニッチな分野であれば勝ち目があるのではないかと考えたんです。


――第1号機はいつ完成したんですか?


会長 2012年の3月に業務用マッサージチェア「あんま王」を発売しました。年間で7〜800台出荷しましたね。


――それは分割形式で販売されたんですか?


会長 分割形式も作りました。もしかしたら機能面よりも重要だったかもしれません。


――現在ではトップシェアを誇っているそうですね。


会長 そうですね。マッサージ機の寿命は3〜5年、使用頻度が少ないと7〜10年です。車と同じで、使うほど傷みます。そのため、使えば稼ぎ、稼げば機械を入れ替えてくれるので、切り替えがどんどん進んでいきます。今使えるものをわざわざ入れ替えてくれるところは少ないですけど、新しく入れ替えるならこっちだね、と選んでいただくことが多いです。


――あんま王はいわゆる高級機ですよね。もとからそういう設計だったんですか?


会長 ミドルサイズも併売していますが、基本的には高級機種に力を入れていますね。


――家庭用と業務用の最大の違いはなんでしょうか。


会長 どの施設でも使われているマッサージチェアは基本的に家庭用なんです。それに許可を取ってコインタイマーをつけて、業務用として使っています。では何が違うかというと、使用頻度なんですね。マッサージチェアは背中をもむ機械なので摩擦します。するとカバー類が非常に痛むんです。


ですから、もしカバーが縫い付けてあると、カバーを取り替えるときにものすごくお金がかかってしまう。ですから、ある程度交換しやすくしました。それだけでなく、故障対応も個人用に比べるとすぐに対応しないといけません。なぜなら、施設にとってお金を稼ぐ機械ですから。そのため、現場でメンテナンスがしやすい、短時間で修理できるような工夫をしたりしました。


――ということは、業務用ならではの機能はあまりない?


会長 個人用も業務用も、もみ心地といった機能面ではそこまで大差はないと思います。もちろん、当社ならではの機能も徐々に増やしています。


社長 業務用ならではの機能を拡充させることで、差別化を図っています。たとえば座ったときに音声が流れる機能って、家庭用でもあるんですね。ただ、家庭用の場合はユーザーにリラックスしてもらうための音楽だったり使用方法の説明だったりします。


私たちは同じ音声を流す機能でも「いらっしゃいませ。お金を入れてください」という音声を流します。これは施設の方からもよく言われるのですが、しっかりしたイスで気持ちのいい音楽が流れていては、マッサージしなくても満足できてしまう。ですから、ソファ代わりになってしまわないように、30秒に1回、「お金を入れてください」という音声が流れる機能を入れました。


――家庭用とはまったく異なる機能ですね。


社長 やはり座りたい人が座れないと、売り上げのロスになるんですね。ですから、使いたい人が使えるようにしています。



――今は温浴施設にかぎらず、ショッピングモールでもさまざまなマッサージチェアを見かけるようになりました。10年前はどうでしたか?


会長 2012年当時はおもにスーパー銭湯や健康ランドといった温浴施設で(7割以上)、2018年になると商業施設やコインランドリーといった待ち時間のある施設での導入が増え(約3割)、2021年はフィットネスクラブをはじめとしたスポーツ、娯楽施設が増えました(約3割)。


――コロナ禍の影響はありましたか?


会長 それまではスキマ時間の活用や、施設の付加価値アップといった目的で活用シーンを広げてきましたが、いずれも集客施設でしたから、導入先業種の多くが大きな打撃を受けましたね。


実際、緊急事態宣言のときに、ショッピングモールも温浴施設もすべて営業自粛で閉鎖されました。すると当然、機械の消耗が進まないので、買い替え需要も少し先延ばしになりました。営業を再開しても、台数を間引きしたいというお店の声もあったと聞いています。


――コロナ禍を経て、衛生意識が大きく変わったと思います。マッサージチェアは不特定多数の人が使うものですが、この点で苦労はありますか?


社長 当社も影響を受けましたが、ただ手をこまねいていたわけではなくて、緊急事態宣言が明けた2020年の6月からは、抗菌の溶剤をマッサージチェアに施工するサービスを始めました。「抗菌済み」というシールをマッサージチェアに貼って出荷するんです。今では8〜9割がこのオプションをつける人気サービスになっています。


――一貫して取引先を重視した取り組みですね。


社長 取引先の満足度を上げるためにも、消費者の声を重視しています。多くの人が利用してくれれば、仕入れ代金は他社とたいして変わらないのに2〜3倍の売り上げが上がるからです。その動機づけの一つが、他社と比較して豪華に見えることで、さらに「マッサージチェアを使うのははずかしい」という声を受けて、「あんま王4」からはフェイスカバーを追加しました。そうして稼げる力をさらに強化しています。


――業務用というと、整体やリラクゼーションのお店とは競合関係にあたるのでしょうか。


社長 私たちはなりえないと思っています。一見、お店の方からすれば、同じリラクゼーションというくくりで、近くには置きたくないと考えるかもしれません。実際は、当社の取引先では手もみのマッサージのお店を運営しているんですが、店舗の横に併設してくださっています。


もし競合になるのであれば、絶対に置かないと思うんですね。おそらく客層が違うことを体感されているからだと思います。温浴施設でも人の手によるマッサージのサービスはありますが、昔から並存してきました。



最後に事業承継についていくつか


――裕之さんは、2021年3月に社長を退いたそうですね。


会長 はい。ホールディングスを設立して、息子が100%の株を持っています。私が現在保有しているのは1株だけ、いわゆる黄金株(1株持っていれば、重要事項も否決できる特別な株のこと)で、もし私が仕事をできない状態になったりしたときは、自動的に会社が吸収します。つまり、否決権のある株を1株持っているだけで、資産や財産としての株は息子に移っています。


――この十数年の歩みを振り返ってみていかがですか。


会長 私はマッサージ機しか知らない人間ですが、自分が営業していた頃からの付き合いが今も続いています。現在も取引していただけるのは、やはりニーズに合った商品、ビジネスモデルを構築してきたからだと思います。もちろん、日々必死だったので、あとからそれに気がついたわけですが。


――事業継承をする際に気をつけたことはありますか?


会長 常々、「○歳ぐらいになったら譲る」と幹部や社員に言ってきました。株の分配をはじめ、苦労された先輩のことも見たり聞いたりしてきましたから。


――いつから準備されたんですか?


会長 息子が入社した5~6年前から進めてきました。


――現社長にはプレッシャーもあると思いますが、そのあたりはいかがでしょうか。


社長 会長がしっかり道を作ってくれましたから、もちろんプレッシャーはありますけど、次のことをしっかり見据えていこうと思っています。


――最後に会長として、これからどういう会社にしていってほしいですか?


会長 今後も業務用の市場で戦っていくには、ITにしっかり対応してほしいと思います。たとえば、マッサージ機に通信機能をつけて遠隔管理やメンテナンスができたり、データを取ったり。それとは別に、やはり1つの柱では何が起こるかわかりませんから、2つ3つと柱になる事業を作れる会社になってほしいですね。


 

日本メディック

Comentários


bottom of page