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HISだから実現できた、世界初「ロボットが働くホテル」誕生のヒミツ

■話し手:HIS 遠藤正巳さん

#東京都 #ホテル #旅行


現在、訪日外国人客の増加も手伝って、国内ではホテルの建設があちらこちらで進んでいる。実際、「宿泊旅行統計調査(観光庁)」によると、2018年度ののべ宿泊者数は5億3800万人で前年比+5.6パーセント。調査開始以来の最高値だった。そんなホテル業界の活況のなかでも、とくに客室稼働率を高水準でキープする「変なホテル」。はたしてその好調の理由は「ロボットが目立った」だけなのか? 前編となる「変なホテル 博多福岡」では、おもに現場にスポットを当てたが、今回は「変なホテル」が誕生した理由とともに、運営側の戦略をHISホテルホールディングス株式会社の遠藤正巳さんに聞いた。



コストダウンという発想だけでは、ロボットは生まれない


観光をとりまく状況は、当ホテルにとってもプラスに働いています。「変なホテルは」は国内で14軒のホテルを展開していますが、とくに東京の客室稼働率は常時80パーセント、ピーク時は95パーセント以上を維持しています。


好調の理由の一つは、マーケット全体が好調であることと、当ホテルのウリである「ロボットによるサービスの提供」だと感じています。フロントの自動化のため、恐竜型をはじめとしたロボットを導入しました。


「変なホテル ハウステンボス」が世界初のロボットが働いたホテルとして、2016年にギネス世界記録(R)に認定されたこともあり、認知度はかなり上がってきたという実感があります。実際、「ロボットホテル」とインターネットで検索するとほぼ上位に表示されます。


ギネス世界記録(R)認定された「変なホテル ハウステンボス」。


フロントの自動化という意味では、他社でも自動精算機が導入されていますが、その背景にあるのは、「生産性の向上」です。業界の常識としては、とにかく生産性が重視されます。今、ホテルは建設ラッシュですが、いくらホテルを建てたいと思っても、ネックになるのが働き手の不足なんです。


コンビニも従業員の多くが外国人という状態ですが、ホテルも同じ状況です。ホテルで働くスタッフ、外部委託による清掃会社のスタッフなど、開業のペースの速さについてこれず、なかなか集まりにくいんです。自動化を進めないかぎり、働き手は必要です。


しかし、生産性の向上は、あくまでも提供側の事情です。生産性の向上というと、コスト削減、業務の効率化という部分だけがクローズアップされがちですが、当ホテルではお客さまを最優先に考え、機能性も重視しています。


当社は営利企業ですから、利益の追求は欠かせません。それでも、お客さまを最優先に考えること。お客さまが快適に過ごせる機能的なホテルをつくること。ここは決してブレない部分です。


たとえば、客室のベッドはフランスベッドと共同開発したもので、朝、ラクに起きられると評判です。衣服リフレッシュ機であるLGスタイラーは、出張の方の口コミ評価が非常に高い設備です。


そうした設備面に加えて、各地のホテルデザインは地域に寄り添うことを意識しており、すべてのホテルでデザインが異なります。


「変なホテル 舞浜 東京ベイ」はエンターテインメント性を重視しています。1階にはフロントだけでなく、魚のロボットや床や窓拭きをする清掃ロボットがいますし、全室にコミュニケーションロボット「タピア」が設置されていて、室内の家電(テレビ/エアコン/室内照明)のリモートコントロールを会話で行うことができます。


そのほか、お天気情報やニュース、誕生日占い、じゃんけんで遊ぶ機能を備えており、英語・韓国語・中国語(簡体字・繁体字)の多言語を搭載しています。客室にコンシェルジュがいる。そんな今までにはない新しい宿泊体験が可能です。


「変なホテル 舞浜 東京ベイ」では魚ロボットもお出迎え


コスト面だけを考えるのであれば、自社の系列ホテルのフロントや客室はすべて同じつくり、アメニティーも統一したほうが合理的でしょう。でも、今まで泊まったホテルをどれくらい覚えているでしょうか。ロビーや客室はどうだったか? 


たとえリゾートホテルでも、なかなか覚えていないはずです。ホテルの減価償却は約30年ですし、そこまでコストに差が出るわけではありません。それよりも、印象に残るホテルとして、お客さまの思い出と、リピートしていただくことのほうが重要であると考えます。



コスト改革と顧客満足度を同時に満たしたロボットホテルが誕生したきっかけ


「変なホテル」1号棟は2015年7月、ハウステンボスにオープンしました。開業したきっかけは、2010年4月に澤田(澤田秀雄/エイチ・アイ・エス取締役会長)がハウステンボス(長崎県佐世保市)の社長に就任したことです。


当時、ハウステンボスが運営するホテルが園内外に3つありましたが、澤田がホテルの運営について、いくつか問題点に気づきました。そして、その解決策として誕生したのが、変なホテルというわけです。


ホテル運営における最も大きな課題は人件費です。通常のホテルだと、フロントにスタッフを置いて運用する場合、アルバイトも含めて15~20人くらい必要になります。そうしないと、24時間365日というシフトは回せないからです。


でも、フロントを自動化すれば、24時間フロントに人が立つ必要はありません。お客さまが不便を感じない工夫をしたうえで、半分以下の7~8名でホテルを運営することができれば、この業界におけるゲームチェンジャーとしてのポジションを獲得できるのではないか、という試みで始まりました。


人件費というのは、“人が何かをする”サービスと言い換えることができます。たとえば、お客さまの荷物を預かることもその一つです。普通はフロントで荷物を預かって、網をかけておくか、事務所に置いておくかでしょう。


お客さまの荷物を自動で預かれるシステムがあれば、人手はいらなくなります。でも、コインロッカーをつくってしまってはつまらない。


ハウステンボスではアーム型のロボットが荷物を格納する様子を見られるようになっていますし、スペース的に難しい都内のホテルではバゲッジボートをつくりました。そのおかげで、スタッフがご案内することもなくなり、お客さまも楽しんでいただけるようになりました。


コインロッカーだと場所をとり、お客さまからお金もとるが、バゲッジポートは無料。さらにセキュリティーも安心


ホテルにロボットを導入するという案を出したのは澤田です。1号棟のロボットはアンドロイド型(人型ロボット)と恐竜型でした。それが、今では恐竜型を中心に展開しています。ノウハウを蓄積するにつれて、恐竜型のほうが人を集めることがわかったんです。


アンドロイド型は写真で見たり、遠くからパッと見ると、人間のスタッフに見えてしまう。でも、恐竜型だと誰でもすぐにロボットだとわかっていただける上に、楽しさを提供できます。


「東京 浅草田原町」。世界初となる、光のホログラムでチェックインできる


東京に関しては、ビジネスマンが多く宿泊いただくホテルでは恐竜ではなくてアンドロイド型を置いていますが 、やはり恐竜型のほうが、非日常という違和感があっておもしろいんですよ。チェックインするとき、お客さまにワクワクしていただく、楽しんでいただくことを最優先にすることは非常に大きいことだと思っています。



ファースト企業ではないからこそ、できること


HISグループにおけるホテル事業のほとんどは、HISホテルホールディングス株式会社が事業展開しており、2016年に設立した会社です。


これまでにもホテル事業の経験はありますが、改めてホテル事業をHISグループの事業の柱として注力するために立ち上げた会社と言えます。そんな私たちがなぜ、「変なホテル」の拡大を図れているかというと、旅行会社出身だからと言えます。


私を含めて、9割のスタッフは旅行会社出身で、ホテル会社の出身は1割もいません。「ホテルの建て方、運営について正直、何もわからない」ところから始まっています。それはつまり、ホテルに対する固定概念がないということです。


「ホテルはこういうもの」という考え方がないからこそ、ロボットが働くホテルが生まれたんです。業界の常識にとらわれていたら、コストダウンのために恐竜型をフロントに置くという発想は生まれないと思います。


HISホテルホールディングス株式会社 遠藤正巳さん。HIS東北・新潟事業部、HIS関東国内事業部などの部署を経て、現在のホテル事業に参加


HISは旅行業界のベンチャーとして、格安航空券のパイオニアとして、オーストラリアでのホテル事業、また1996年には航空会社・スカイマークエアラインズの設立(現在は売却)など、新たなチャレンジを繰り返してきました。


業界の状況はたしかにインバウンド需要などもあって好調です。だからといって現状維持のままでは、前年の数字を超えることはありません。前年の数字を超えようと思ったら、社員一人ひとりが何か新しいことにチャレンジし続けないと達成できないんです。


新しいことにチャレンジする背景には、先ほどお話ししたお客様を最優先に考えること、そして、グループ全体でシナジーを生むという考えもあります。たとえば、格安航空券の販売は、航空会社で売れない海外行きの席を安く、一般のお客さまに団体のチケットとして販売するという事業です。


そのため、ロサンゼルスに3~5万円で行くことが可能でした。それまでは30~40万円していましたから。ただ昔は航空券だけを買って旅行することに対して不安を感じる人が少なくありませんでした。そこで、海外パッケージツアーを取り扱うようになったんです。


海外パッケージツアーというのは、わかりやすく言うと、自社でチャーター便を飛ばすということです。日本人の旅行者が増えると、飛行機の席はなくなっていきます。自社でチャーター便を飛ばすことができたら、その席をまるまる使えることになります。


つまり、お客さまにサービスを提供できるということです。「お盆だから混んでいて旅行に行けない」というお客さまに、「HISなら席がありますよ」とご提案できる。さらに、今はホテルも提供できます。


ホテル事業は、今ではグループの一つの柱に成長しています。2023年までに変なホテルも含めて、ホテルを100棟つくる予定です。グループ全体でシナジーを生めるよう、これからもチャレンジしていくつもりです。

変なホテル

https://www.hennnahotel.com/

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