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【寺×スイーツ④(番外編)】大野神社「大野バウム」

■話し手:大野神社 大宮聰さん、大野cafeアプリ 田中由美さん

#神社 #スイーツ



寺院数日本一の滋賀県(人口10万人当たり/2018年文化庁宗教統計調査)でスイーツが人気の寺社仏閣を訪ねる短期連載。最終回は大野神社(栗東市)。これまでの3回とは違い、あるきっかけで大ブレイクを遂げ、年間で30万人参拝者を迎えるまでに至った神社だ。大野神社の代名詞でもある「大野バウム」を中心に、ブレイク後に大切な継続について、神職の大宮さん、大野cafeアプリの田中さんに話を聞いた。



歴史ある神社で買えるバウムクーヘン

「楼門」:国の重要文化財

882年以前には社があったと伝わる大野神社。本殿の正面に東向きに建つ楼門は、鎌倉時代初期の建築とみられ、楼門としては滋賀県内の遺構(昔の建築物の残存物)の中で最古であり、国の重要文化財に指定されている。


また、主祭神(さいじん)は、学問の神様として有名な菅原道真。897年当時、権大納言(ごんだいなごん)だった菅原道真が勅使として金勝寺(こんしょうじ)に参向した際、大野神社にも滞在したことが由来だとか。


ようするに、非常に由緒ある神社なのだ。そんな大野神社の境内にあるのが大野cafeアプリ。自社工房で焼き上げている「大野バウム」は、伝統製法である「無添加・直火焼き」にこだわって作られた一品。くちどけの良さを追求し、その日の気温、湿度などを考慮しながら、炎1本1本を調整。参拝のおみやげとしても好評だ。


この人気商品を開発したのは、琵琶湖ホテルのパティシエという経歴をもつ田中由美さん。大野バウム誕生の裏には、あの人気アイドルグループの存在があった。


「この神社は歴史があるとはいえ、それほど有名ではありませんでした。ところが、神社名から嵐の聖地として注目されるようになったんです。ネットで拡散されたこともあって、ファンの方がたくさん来てくれるようになりました」(大宮さん)


思いがけず盛り上がる大野神社。このチャンスを生かそうと、商工会や観光協会とともに観光名所にしようという話が持ち上がったのも自然な流れだろう。


「年間で30万人も訪れるようになったのですが、栗東市にはお金が落ちていませんでした。だから、もっと栗東市の活性化につなげたいという気持ちがあって。それなら、おみやげになるお菓子を作ってはどうかという話になったんです」(大宮さん)


そして、商工会を通じて手を上げたのが、田中さんだった。



栗東の銘菓「バウムクーヘン」が誕生

馬勝ったパフェ

「私は栗東芸術文化会館SAKIRA(さきら)でサロン・ド・カフェ アプリという喫茶店を経営しています。当時はお店がちょうど15周年を迎えるタイミングで、何か栗東の名物となるお菓子を作ろうと思っていたんです。そこで考えたのが、バウムクーヘンでした」(田中さん)


試行錯誤の結果、のちのバウムシリーズの原点となる「さきらバウム」(現在も販売中)が完成。そして2015年に大野神社と共同開発したのが「大野バウム」だ。多いときには1日で200箱も売れる大ヒット商品となった。


「最初の1年間は委託販売という形で、社務所で売っていたんですよ。でもすぐに完売することが続いて、それならお店を構えようという話になりました」(大宮さん)


お店ではバウムクーヘンだけではなく、おいしいコーヒーを飲んだりソフトクリームやパフェを食べることもできる。必然的に参拝者の滞在時間は伸び、いろいろな会話をすることも増えたとか。


「あるとき、『出張のときに栗東らしい手みやげがない』という話を聞いたんです。それがきっかけとなり、大野バウムの発売から1年後に『栗東 馬勝ったバウム』を作りました」(田中さん)



「栗東 馬勝ったバウム」はその名の通り、競馬をイメージしたバウムクーヘン。大野神社は全国的な知名度を得る前から、競馬業界では有名な場所だ。競走馬を調教している栗東トレーニングセンターの氏神として親しまれ、関係者が必勝祈願や家族のお祝い事に訪れているのだ。


「競馬関係者が出張で東京や北海道、九州など地方遠征に行くときはつねに買っていってくれますね」(大宮さん)


ユニークなのは商品名だけではない。「パドックのようなプレーン味」「芝のような抹茶味」「ダートのようなココア味」と、すべて競馬場をイメージしている。ちなみに、中央競馬会の了承は得ており、公認商品でもある。



神社もバウムクーヘンも「継続は力なり」

10年かけて、バリアフリー化にも成功

バウムクーヘンで見事に栗東市の知名度を上げることに成功した田中さん。もともと地域活性化に興味があったそうだ。


「新幹線の『南びわ湖駅』が栗東市に設置される話が進んでいたときは、景気が上向いていたんです。でも、結局凍結してしまった。それからはガクンと予算が減り、町が閉塞感に包まれてしまいました。これではおもしろくないなと思ったんです」(田中さん)


栗東市は県内の大津市や草津市に比べると、商売がむずかしい土地と言われている。それは神社も同様で、ただ「手を合わせる場所」では人は集まらない。ユニークなおみやげが必要だったのだ。


「田中さんが出店してくれたおかげで、神社の敷居が下がったんですよ。神社はお参りという目的がないと来てはいけない雰囲気でした。でも、お店があることで、たとえお参りしなくても、さんぽがてらお茶を飲みに来る雰囲気になった。神社って、昔はそういう場所だったと思うんです」(大宮さん)


順調に参拝者数を伸ばす一方で、便乗商法だとやゆされるなど、多数の挫折も経験。それでも、神社を盛り上げるために奮闘する。


「一度始めたことをやめたら終わりです。大野神社が注目されたのは奇跡です。だから、それをうまく活用して、ベースをつくって神社を盛り上げていこうと。今では田中さんをはじめ、多くの人が協力してくれるようになりました。栗東市の市長も喜んでくれて、一緒にPRを手伝ってくれましたしね。一生懸命やると、みんなが参加してくれるんです」(大宮さん)


「大宮さんは、参拝者と会話することをずっと続けているんです。神職さんといえば、ふつう神社の奥のほうにいて、めったにお会いできない方です。でも、大宮さんは率先して話します」(田中さん)


「アイスクリームでも食べながら、神社のことを説明しましょうか?と話しかけるんですよ。コロナ前は大型バスが来れば、みんなでマイクを持ってしゃべりました。ふつうなら『参拝はこちらです』と案内して終わりです。でも、そうすることで、次も来てみようかなと思っていただけます。参拝している間は極力事務をするのではなくて、参拝者との触れ合いを大事にしようと」(大宮さん)


今では福島から車のお清め払いに来る人もいるなど、全国から人が集まるようになった。


「予約を確認したら、大阪の福島区ではなくて、福島県だったんですよ。岐阜県から七五三のお参りにお越しいただいた方もいました。今のコンビニといったら言いすぎかもしれませんが、気軽に立ち寄れる場所、憩いの場所であり続ければ、神社はすたれないと思いますね」(大宮さん)

■話を聞いた人

大野神社 大宮聰さん(右)、大野cafeアプリ 田中由美さん(左)


■概要

大野cafeアプリ

住所:栗東市荒張896(大野神社内)

電話番号:077-532-4502

https://apry-ritto.net/

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