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【寺×スイーツ①】比叡山延暦寺「梵字テラミス」

更新日:9月18日


比叡山 梵字テラミス

滋賀県には古くから多くの寺社仏閣が存在し、人口10万人当たりの寺院数は1位(2018年文化庁宗教統計調査)だ。その滋賀県で最近、和スイーツで人気を集めるお寺が増えているという。そこで、スイーツが話題の4カ所を訪ね、商品開発のきっかけなどを聞いた。寺社仏閣の持つ自然豊かな景観と、こだわりのあるスイーツ。その組み合わせの裏側には切実な思いがあった。



日本仏教の母山で楽しめる和スイーツ

干支によって変わる梵字


比叡山は、788年に天台宗の開祖である最澄が開いた天台宗の総本山。多くの名僧がここで修行して宗祖となったことから、「仏教の総合大学」「日本仏教の母山」とも呼ばれる。広大な比叡山は大きく三塔の地域(東塔、西塔、横川)に分けられ、これらを総称して比叡山延暦寺という。東塔地域の根本中堂(国宝・現在改修中)や西塔地域の釈迦堂(重要文化財)など、国宝、重要文化財を多く有している。


そんな比叡山で、4月より土・日・祝日限定で販売がスタートしたのが、お寺の厄除け開運スイーツ「梵字テラミス」(30食/日)。マスカルポーネチーズと生クリームのなめらかなくちどけが自慢で、中には白玉や生湯葉なども入っており、さまざまな触感も楽しめる。まさに、お寺ならではの一品だ。


この梵字テラミスは、2017年に提供が始まった「梵字ラテ」に続く梵字シリーズ第2弾。開発者は参拝部の今出川行戒さん。比叡山延暦寺に参拝部長、延暦寺会館館長として着任した2015年ごろから、今の展開を考え始めたという。


「延暦寺会館にはもともとカフェスペースがあり、コーヒーやお茶、ジュースなどを提供していました。ただ、せっかくお寺にあるカフェなので、お寺ならではの商品が欲しい。そう考えていたところ、当時ラテアートが流行っていたので、それならば、と梵字を使ったラテを考案しました」


ラテ用のマシンもカップもない状況から試行錯誤を続けて完成した梵字ラテ。発売と同時にメディアにも取り上げられ、多いときには注文カウンターに行列ができるほど。手ごたえを感じて開発した梵字テラミスも好評だとか。


「梵字テラミスは前日に作って冷やしているので、1日に提供できる数には限度があるんです。そのため、売り切れてしまうことも少なくないですね。今は新型コロナウイルスの影響で参拝者は減っていますが、いずれ提供数は増やしたいと思っています」



「比叡山に行ってみよう」というきっかけづくり

喫茶れいほうからは、琵琶湖を望める


インスタ映えする梵字ラテや梵字テラミス。実際、注文する人たちのほとんどが写真を撮っていくそうだ。比叡山延暦寺は県内で唯一の世界文化遺産。その格式高いイメージとインスタ映えするスイーツの販売にはいささかギャップを感じるが、商品開発の背景にあるのは、参拝者数の減少だ。特に若い世代を中心に、仏教は身近なものでなくなっているのだ。


「昭和から平成になって核家族化が進み、仏教を伝える形が散漫になってしまいました。昔は一緒に住んでいた祖父母の影響が大きかったですから。これは全国的な話ですね。そういう状況であれば、我々が積極的に発信していく必要があります。“歴史の教科書に出てくるお寺”だけでは、興味を持ってもらえません」


今出川さんが所属する参拝部は、参拝者の案内やおもてなしだけでなく、比叡山の魅力の発信やイベントの企画も担当している。過去には「ゲゲゲの鬼太郎と比叡山の七不思議展」といったユニークなイベントも開催。それらはすべて比叡山に来てもらうため。


「私は若い人に信仰心がないとか、仏教にまったく関心がないとは思っていません。ただ、比叡山はハードルが高いというイメージを持たれています。坐禅体験や写経体験も行っていますが、どうしていいかわからない人が多い。実際に比叡山に来ていただければ、『ここで坐禅ができるんだ』と初めてわかることだってあるはず。だからこそ、まずは『行ってみようかな』という一歩を踏み出すきっかけづくりをする。その一つが梵字なんです。必ずしも信仰から入らなくたっていいと思うのです」



1200年続く伝統を守るために必要なこと

梵字テラミスは抹茶味とココア味の2種類


梵字ラテも梵字テラミスも特徴的なのが梵字だ。梵字とは、仏様を表す文字のことで、さまざまな功徳を与え、災難から救ってくれると言われる。


「重要なのは、守り本尊の梵字を入れられることです。生まれ年ごとに守護尊とその仏様を表す梵字があり、受付で自分の梵字をオーダーするシステムになっています」


梵字はシールや洋服のデザインに取り入れられるなど、目にする機会が多い。それでも、梵字とはいったい何なのか。そもそも干支に守り本尊があることを知らない人も少なくないとか。


「梵字を飲んだり、食べたりすることで体に取り入れる。それだけでありがたい気分にもなりますが、自分の梵字があると知ると、『どんなご利益があるんだろう?』『仏様はどんな姿をしているんだろう?』と興味を持つ方が多いんです。そして、実際に検索してみる。そうした積み重ねが、お寺や仏様を身近にしていくんです」


梵字ラテや梵字テラミスの提供を始めてから、女性客が増えたという。一方的な発信ではなく、身近に感じてもらうためのきっかけづくり。「ただ流行りを取り入れただけでしょ?」と思われるかもしれないが、ここにも開祖である最澄の教えが根付いている。


「東塔の根本中堂には最澄の教えを象徴する“不滅の法灯”が1200年、絶えることなく燃え続けています。比叡山の伝統を今に伝える大切な灯火ですが、放っておくと消えてしまうのです。毎日新しい油をさし、新しい風を吹き込む。ただ胡座をかいているだけだと、いくら1200年続くお寺といっても見放されてしまいます。つねに新しい時代のニーズを吹き込んでいかないと、伝統や教えは守れないのです」


取材の最後、「大真面目に考えたんですよ。チャラく見えますけどね(笑)」と今出川さんは笑う。日本仏教界を牽引する比叡山延暦寺。1200年続く伝統を後世につなぐため、これからも新しいチャレンジを続けていく。


10年に渡って改修が行われている根本中堂の様子も見学できる

■話を聞いた人

比叡山延暦寺 今出川行戒さん


■概要

喫茶れいほう

住所:大津市坂本本町4220(延暦寺会館内)

電話番号:077-579-4180

http://syukubo.jp/

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