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執筆者の写真Byakuya Biz Books

〈試し読み〉仕事の取り扱い説明書――あなたのショートケーキにイチゴはのっていますか?

更新日:2021年8月20日



ショートケーキのイチゴは最初に食べる? それとも最後? 仕事においては最初に食べるべき。そんなメッセージを伝える新刊『仕事の取り扱い説明書――あなたのショートケーキにイチゴはのっていますか』。同書収録の「イチゴをめぐる物語」を公開。仕事でもっとも大切なイチゴって何? どうやって見つける?



イチゴをめぐる物語


ここにショートケーキが一つある。

このショートケーキにはおいしいイチゴがのっている。


あなたなら、どこから食べるだろうか。

ある人はショートケーキの角からパクッと食べたり、別の人はスポンジやクリームばかり食べたり。

食べ方は人それぞれだけど、ほとんどの人はイチゴを残してしまう。




でも、なかには「なんでイチゴを残すのだろう?」「もったいない」と不思議がる人もいる。

イチゴを残すのは、いつも同じ人だ。


このショートケーキはあなたがかかわる仕事だと思ってほしい。

そして、イチゴはその仕事において、もっとも大切なものだ。


たとえば、あなたのお客さまが本当に欲しいものだったり、社内コミュニケーションで一番に伝えることだったり……その仕事がもつ価値のこと。


イチゴを残すというのはつまり、その仕事に手がつけられていないのと同じだ。

当然、その価値をわかっている上司や先輩からはこんな言葉がこぼれる。

「なんで? もったいない!」

そんなグチは毎日、日本のどこかでささやかれている。


あなたはどうだろう?

そのように思ったことはないだろうか?

もし、グチッたことがないと言うなら、あなたがグチられている立場かもしれない。


イチゴのショートケーキに話を戻そう。

イチゴを残す人はおなかいっぱいで満足している。イチゴは食べてないが、スポンジやクリームをたくさん食べるからだ。

本人はおなかいっぱい。でも、イチゴが見える人は食べ残したイチゴを見て「なんで?」とため息をつく。


イチゴはどんな仕事にも存在する。

サラリーマンでも宮大工でも美容師でも看護師でも医者でも。


「仕事には必ずイチゴ(大切なもの)がある」


仕事でイチゴを残す人も、与えられた仕事をしっかりやっているつもりだ。100点満点ではないかもしれないけど、まさか自分の仕事の評価が20点だとは思っていない。でも現実は、スポンジやクリームをいくらお腹いっぱい食べてもそれぐらいの点数にしかならないのだ。


その人は、わざとイチゴを残しているのだろうか?

いや、そうじゃない。じつはイチゴが見えていないのだ。


最初からイチゴなんてないと思っているから、残してしまっていることに気づかない。

たしかに与えられた仕事や毎日の決まった仕事には、小さなイチゴしかのっていないかもしれない。

でも、小さくてもイチゴはのっているのだ。


「イチゴを残す人は、イチゴが見えていない」


「だったら、イチゴがあることを教えてあげて」と思うかもしれない。

でも、何度言っても、なぜかその人には伝わらない。

イチゴが見えていないから「イチゴ? 何を言っているんだ。これはただのケーキだよ」とさえ言われてしまう。

そう、毎日毎日、「イチゴが残っていますよ」と、言っているのにもかかわらず。


それは上司や先輩だって同じだ。

「毎日、同じことのくり返しだ」とイヤになり、指摘されないままになってしまうのが現実だ。

これが続くと、どんなことが起こるだろうか?


**********


おいしいイチゴなのに、その人に渡すといつも残されてしまう。

あなたがショートケーキを渡す立場なら、どうするだろう?

「この人のショートケーキにのせるイチゴは、もっと小さくしよう」

そう考えるはずだ。



現実も同じだ。

「こんなこともできないなら、もっと簡単なことをやってもらおう」となる。

つまり、渡される仕事の大きさは変わらないのに、その価値が小さくなると、作業量だけが増えてしまうことになる。


すると、その人はますますイチゴを見つけられなくなってしまう。

もちろんすべての仕事には価値がある。たとえ、それが簡単な仕事だとしても。

簡単な仕事のなかにだってイチゴを見つけることができる。


じゃあ、イチゴはどうすれば見つけることができるのだろうか?

「がんばっているのに! どうして認めてくれないの?」

そう思っている人は、イチゴを見つける入り口に立ったことになる。

「おなかいっぱいだから、それで満足だよ」と思う人は、いつまでたってもイチゴは見つからない。


世の中には、こんな人もいる。

イチゴを食べたという実感はないけど、一生懸命食べたことによって、結果的にイチゴも食べていた――という人だ。

これがイチゴを見つける最初のヒント。

目の前のショートケーキを一生懸命、食べてみよう

イチゴを残す人よりも仕事の価値は高くなる。


「目の前のショートケーキを一生懸命食べよう」


でも、いつも一生懸命ショートケーキを丸ごと食べていたら、すぐにおなかはいっぱいになってしまう。

だから、本当はイチゴだけ食べたほうがいい。


そのためには、ショートケーキには必ずイチゴがのっていると知ることだ。

どんな仕事にもイチゴはある。


イチゴを見つけるときに大事なことがもう一つ。

それは、否定せず、人の言うことをちゃんと聞くこと。

そういう態度でいれば、自分が見えなかったイチゴを指摘してもらえる。「イチゴなんてないよ」という人は、いつまでたっても指摘してもらえない。

ガンコな人には、イチゴは見えないままだ。


「否定しない」


人に言われたことを否定せず、全力で取り組むと、上司や先輩から会話というフィードバックがもらえるようになる。これが大事だ。

それを積み重ねていくと、しだいにイチゴがどんなものなのかつかめるようになる。

すると、ショートケーキにのったイチゴを見つけやすくなる。


**********


イチゴだけ食べている人は、効率がよく、仕事をテキパキとこなしているように見える

イチゴを意識して仕事に取り込む人はどんどん大きな仕事に携わり、世の中に価値を届けていく。出世も早い。


「なぜ、あの人はいっぱい考えられるの?」

「なぜ、ソツなくこなせるの? スゴイな」

「なぜ、あの人のまわりには人が集まるの?」


あなたの身近にこんな人はいないだろうか。そういう人たちは、イチゴだけを食べているのだ。

ショートケーキを全部食べてしまうと、1個や2個でおなかがいっぱいになってしまう。

一方、イチゴだけなら10個でも20個でも食べられる。



イチゴばかり食べると「スポンジやクリームがたくさん残るから、怒られない?」と疑問に思うかもしれないけど、じつは、たいていの仕事では、イチゴを食べるとスポンジもクリームもすべて消えてしまう

つまり、ショートケーキを全部食べたことになるのだ。


だから、イチゴだけを食べる人は、ストレスなくパクパク食べられる。

ショートケーキを全部食べようと思ったら、そのボリュームにストレスを感じることだってあるだろう。


また、イチゴが見えない人は、「それなら、最後に見つけるさ!」と考えるかもしれない。

おいしいものは最後に取っておくという考えだ。するとイチゴを先に食べる人との成長に圧倒的な差が生まれてしまう。

「パッ!」とスポンジやクリームが消えるのをくり返すことに比べて、すべて食べてしまうことは明らかに成長スピードが遅いのだ。


さらに、イチゴをたくさん食べると、新たな強みが開花し、自分自身がおどろくパフォーマンスを発揮することができる。


ウサギとカメの話はご存じだろう。

足の速いウサギと足の遅いカメが競争をした。ウサギは油断し、途中で昼寝をしてしまう。そのスキにカメがウサギを抜いて勝利する、というものだ。


この話はまやかしだ。


ウサギがイチゴばかり食べると、足の速さよりジャンプのパフォーマンスが向上する。

高く飛ぶことによりさらに早く、ワクワクしながら進めるようになるのだ。

楽しくなったウサギは休むことも忘れて、もっと早く進むだろう。カメに勝ち目はない。圧倒的に距離が広がり続けるのだ。


もし、イチゴを見つける能力をもつカメであれば、ウサギに対してカメの強みである泳ぎでの競争を提案するはずだ。


「イチゴだけ食べよう」


どんな仕事であれ、イチゴの存在を理解すれば、上司に認められ、もっといろいろな仕事に挑戦できる。さらに秘めた能力だって開花する。そうなれば無限の可能性を感じ、「サボる」どころか、イチゴ探しに夢中になるはずだ。

「ズルい」なんて考えは捨て、自分の強みをとがらせて、イチゴを食べつくそう。

きっと世界が変わる。


**********


イチゴをたくさん食べ続けていると、あるとき、いつもより大きなホールケーキが目の前に現れる。

おまけに、その大きなケーキにはいくら探してもイチゴがのっていない


そんなケーキを見つけると、ちょっと理不尽に思ってしまうかもしれない。

「いったいどうすればいいんだろう?」

どこから見てもイチゴが見当たらない。


でも、このホールケーキの名前はチャンスという

チャンスはいつも巡ってくるわけじゃない。イチゴを食べていると、ある日突然、目の前に現れるのだ。


「大きくてイチゴがのっていないホールケーキ(チャンス)が現れる」


チャンスという名前のケーキは、今までに見たことがない大きさだ。

もちろん、一人で食べようと思っても食べることができない。


じゃあ、どうすればいいだろう?

これまでの経験から、イチゴを食べることができれば、ケーキが消えることは知っている。

それならば、ホールケーキが消えるイチゴをのせればいいのだ。


ただし、これまで自分が食べてきたイチゴをそのままのせようと思ってもうまくいかない。

目の前のホールケーキをよく見れば、その理由はわかる。

これまでのショートケーキは、ホールケーキを切り分けたものだ。



ショートケーキはあなたがかかわる仕事のことで、イチゴはそのなかでもっとも大切なものだった。

ケーキ(仕事)が大きくなれば、イチゴ(価値)だって大きくなる。

だから、ホールケーキにピッタリのイチゴをのせるのだ。


すると、どんなイチゴがいいのか、ぼんやりと見えてくる。

大事なことは、ホールケーキを消せる大きなイチゴであること。ショートケーキにのっているイチゴをたくさんのせればいいわけじゃない。


「イチゴをつくろう」


そんな大きなイチゴは、ただの赤いイチゴではなく、青や黄も混ざったカラフルなイチゴだ。


もともと、切り分けられたショートケーキには、いろいろな色のイチゴがのっている。

イチゴを食べ続けていると、少しずつ自分が得意なイチゴの色がわかってくる。それが、いわゆる強みのことだ。どんな色のイチゴになるかは、それまで学び、経験してきたことによって変わる。


赤、青、黄、紫、白……どのタネが開花するかは案外わからないものだ。

でも、それがひとたび開花すれば、自分自身がおどろくほどワクワクし、夢中になれる。

仕事の世界がダイナミックに広がるのだ。さらに、弱みを助けてくれる仲間も集まりはじめる。


なぜなら、「やりたい」「できる」ことだけではカラフルなイチゴはつくれないからだ。

そのため、自分にはできないことができる他人の力が必要になる。それに気づいた瞬間、未知の潜在能力が開花するのだ。


そのカギは「働く人を大切にする」だ。その情熱をもってワクワク仕事をしているからこそ、人はそのポジティブなエネルギーに引き寄せられる。働く人を大切にするイチゴは何色だろう? それを探すのだ。


「自分が得意(強み)なイチゴは何色?」


ホールケーキのように仕事が大きくなったら、仲間やチームが必要になるということだ。一人でできることと、チームでできることでは、チームのほうがより大きなケーキに取りかかれる。


自分の得意な色がわかっていれば、その色に呼応して、いろいろな色のイチゴが自然に集まってくる。

「彼は青のイチゴが得意だな」「彼女は黄色だ」

そんなふうに、相手の強みも見つけてあげることができるからだ。それは、自分の得意な色がわかっていてはじめてできること。


決して、自分一人でカラフルなイチゴをつくったり、一つの色で大きなイチゴをつくろうと思ってはいけない。そんな目先のことを考えては失敗する。

働く人を大切にすることを宣言し、自分以外の色もしっかり認める。いろいろな色でイチゴをつくらないと、大きなケーキは消えないのだ。


「それぞれ得意な色が違う仲間を集めよう」


こうして完成したイチゴは、自分が得意な赤もあれば、仲間が得意な青や黄も混ざった、カラフルで大きなイチゴだ。

自分の得意な色がわかっていない人はとても多い。

そもそもイチゴすら見えていなかったのだから。


そんな人たちの得意な色を見つけて、仲間にすることができれば、みんなイチゴが見えるようになる。

すると、仲間やチームから感謝だってされるようになる。


「カラフルなイチゴがのったホールケーキが完成する」


**********


ショートケーキのイチゴを食べ続けたら、チャンスというホールケーキが現れた。そして、ホールケーキにピッタリのイチゴをつくり続けたら、いつか、ビッグチャンスというもっと大きなケーキが現れる。


チャンスという名のホールケーキは赤・青・黄のイチゴで消えたかもしれないけど、ケーキの大きさが2段や3段になるにつれて、もっと大きくてカラフルな色のイチゴが必要になる。

たくさんの仲間を集めて、虹色のイチゴをつくるのだ。


いきなりビッグチャンスが現れることはない。自分でねらっていくこともできない。

チャンスだと思ったら「自分がやります」と受け入れていく。するとある日、ビッグチャンスが現れるのだ。


「虹色のイチゴをつくろう」


ここまでいろいろな経験を積み重ねると、行動にも変化が表れる。

人には十人十色の強みがあり、無限の可能性を秘めている。自分が「やりたくない」「できない」ことだって、チームならできる。そして、それが評価されるから、興味をもてるようになるのだ。


チーム全員が情熱をもって、ワクワクしながら仕事をする。そうすれば、仲間やチームに、しっかりと感謝の気持ちを伝えることだってできる。

そんな職場は「ありがとう」であふれかえっている。ポジティブに働く人であふれかえっているのだ。


イチゴを見つけることができれば、最後は大きなホールケーキだって消すことができる。しっかりした仕事の取り扱い方を学べば、虹色のイチゴだって手にすることができるのだ。

ちょっとワクワクしないだろうか。


あなたは今、イチゴを見つけるスタート地点に立った。

これからより実践的なことをお伝えしていく前に、もう一度、まとめておこう。


1.仕事には必ずイチゴ(大切なもの)がある

2.イチゴを残す人は、イチゴが見えていない

3.目の前のショートケーキを一生懸命食べよう

4.否定しない

5.イチゴだけ食べよう

6.大きくてイチゴがのっていないホールケーキ(チャンス)が現れる

7.イチゴをつくろう

8. 自分が得意(強み)なイチゴは何色?

9.それぞれ得意な色が違う仲間を集めよう

10.カラフルなイチゴがのったホールケーキが完成する

11.虹色のイチゴをつくろう


本書の大事なテーマは仕事にはイチゴがあること。イチゴだけを食べること。そして、イチゴをつくってのせることだ。

しっかりと覚えておいてほしい。


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