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  • 相田真理

かけ出しライターの私が、ベストセラー作家に疑問をいろいろぶつけてみた。【その②】どうやったら伝わる?

更新日:2021年8月20日



情報の発信を誰でも気軽にできる現代で、「わかりやすく、正確な文章」はあらゆる場面で必要とされる気がする。そもそも「わかりやすい文章」に基本ってあるのかな? あれば、ぜひ知りたい! 11万部のベストセラーとなった、株式会社文道の藤吉豊さん、小川真理子さんの共著『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』(日経 BP)をもとに、今回も質問をぶつけてみた!

「シンプルに書く」が一番大事


『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』では、文章術の名著100冊より共通のノウハウを抽出して、ランキング化されているので、とてもわかりやすく、読みやすい。その中で、第1位となったのが「シンプルに書く」。2人にとっての第1位は何だろう?


「僕にとっての1位は、2つあります。書くテクニックとしての1位は、本書の1位と同じで、『シンプルに書く』。書き手の心構えとしての1位は、28位の『日頃から内面を豊かに耕す』です。


『シンプルに書く』とは、『なくても意味が通じる言葉を削って、1文を短くする』ことです。文字数が多くなるほど、文体の乱れが起きたり、文章の流れが悪くなったりします。ですが、『1文を短くする』という意識を持って書くと、『誰が、何をしたのか』、主語と述語の関係がはっきりするので、内容が伝わりやすくなります。


心構えでは、『日頃から内面を豊かに耕す』を大切にしています。文章は内面のアウトプットです。『文は人なり』という言葉もあるように、 文章はその人の思考や思想、性格といった人間性を自然と反映します。


僕たちが読んだ100冊の中には、文章がうまくなるには、6割の『人生観』と、4割の『情報』 と『テクニック』が必要であると説く本もありました。文章の良しあしを決めるのは、テクニックや情報以上に、書き手の『人生観』です。人生観がしっかりしていないと、読み手に感動を与えられません。いい文章を書くには、テクニックだけでなく、自分の人格や内面を磨くことも大切です』(藤吉さん)



複雑で読みにくい文
新型コロナウイルスというものは、人に感染する7番目のコロナウイルスです。世界中のいたるところすべてで、とても大きな被害が発生する状況が続いているのです。
 
シンプルで読みやすい文
新型コロナウイルスは、人に感染する7番目のコロナウイルスです。世界中で大きな被害が出ています。
 

「『文章術のベストセラー100冊』のポイントを1冊にまとめてみた。」(日経BP)より


「私は15位の『とにかく書く、たくさん書く』が1位です。私自身、たくさん書くことで、文章力のベースができました。20位の『名文を書き写す』も文章力を高めたい人におすすめです。自分の目的にあったお手本を選ぶのが、文章上達の近道です。


テクニック面では藤吉と同じで、『シンプルに書く』ことが大切だと思います。本書のレビューでも、『即効性があった』『文章を短くすることでわかりやすくなった』という感想を多くいただいています」(小川さん)


ついつい長くなりがちな文章が、シンプルに書くことを意識すると、さっぱりとした、わかりやすい文章に変身する。このテクニックは、誰でもすぐ実践できるので、オススメしたい。第15位の「とにかく書く、たくさん書く」も納得。「質より量」じゃないけど、今の私はとにかく書いて、経験値を上げていかなければ!



中学生までに習った言葉を使う


文章は、誰かに伝えることがあって書くことが多い。たとえば多くの人に向けて情報を発信するとき、どんなことに気をつけるといいんだろう?


「不特定多数に読んでもらいたい場合は、難しい言葉は使わないほうがよいと思います。情報を発信するときは、『専門用語を使わないようにする』『専門用語を使うときは、用語の説明をする』と、誰が読んでもわかりやすくなります。専門用語や難解な用語は、日常的な言葉に置き換えることが大切です。


中学生までに習った言葉を使い、中学校までに習った知識があることを基準に、文章を書くと、より多くの人に伝えることができます。文章のプロの多くが、『中学生』を目安にしている理由は、『中学校までは義務教育で、誰もが一定水準の教育を受けている』からです」(藤吉さん)


なるほど。自分ではよく知っている言葉でも、読む人によってははじめて聞く言葉だったり、耳なじみのない言葉だったりするかも。「中学生」までに習ったことを基準に、多くの人に読んでもらえる文章を書いていこう。



「推敲(すいこう)」をする


推敲(すいこう)をご存じだろうか? 推敲とは、よりよい文章になるように、練り直すこと。これはライター業において、必須項目だと言いたい! 何度も読み返すことで、初歩的な誤字、脱字を防ぐことができるし、文章全体のまとまりを確認できる。2人はどんなふうに推敲しているんだろう?


「僕は、本書でも紹介している『プリントアウトして読み直す』こと、『時間を置いて読み直す』という2つの方法を実践しています。書いてすぐに推敲するのではなく、最低一晩は置いて、読み直しをしています。1つの文章を仕上げるまでに、最低3回は読み直すことを心がけています」(藤吉さん)


「私もプリントアウトして読み直しています。また声に出して、耳でも確認しながら、推敲しています。読みながら、全体の構成や、読みやすい内容になっているかを確認しています。時間を置くのも、音読するのも、客観的に文章を読むためです。第三者に読んでもらうことも、効果的な方法です」(小川さん)


何気なく書いたメールやSNSでの発信も、「推敲」が役に立つ。特に感情的になっているときは、送信する前に読み直したり時間を置くといいよ、と小川さんは教えてくれた。きつい言い方になっていないか、わかりやすい文章になっているか、確認できることはたくさんある。伝わる文章を書くためには、普段からしっかり見直すことが大切だよね!



比喩の表現をつかってみる


本書の第6位では、比喩やたとえ話を積極的に使うことで、『物事を分かりやすくしたり、イメージしやすくなる』とのこと。比喩は中学校で習ったような……。とりあえず何かにたとえればいいってこと?


「一般的で使いやすい比喩は『直喩(ちょくゆ)』『隠喩(いんゆ)』、『擬人法』の3つです。『直喩』は『まるで〇〇のような』と説明付きでたとえる方法です。『隠喩』は『~のような』『~みたいな』を使わずにたとえます。隠喩は『A はBである』と断定する表現なので、読み手に強い印象を与えます。『擬人法』は生物やものなど、人間ではないものにたとえます。



直喩(ちょくゆ)
・彼は怒っている。 
→彼は鬼のように怖い顔で怒っている。

隠喩(いんゆ)
・あの人は繊細だ。
→あの人はガラスの心を持っている。 

擬人法
・とても強い風が吹いている。
→唸るような強い風が吹いている。

「『文章術のベストセラー100冊』のポイントを1冊にまとめてみた。」(日経BP)より


「僕の場合は、この3つを使いこなすというより、知らないことを知っていることにたとえる方法をよく使います。2つの異なるものに、類似性や関連性を見つけて、それを結び付けて表現すると伝わりやすくなります」(藤吉さん)



比喩なし 
いろいろな個性を持つ人たちが力を合わせるからこそ、強いチームが完成します。 

比喩あり
お城の石垣には、さまざまな形の石が使われています。形が違う石を組み合わせることで、頑丈な石垣ができ上がります。 組織も同じです。 いろいろな個性を持つ人たちが力を合わせるからこそ、強いチームが完成します。

「『文章術のベストセラー100冊』のポイントを1冊にまとめてみた。」(日経BP)より


「子供は宝」は隠喩、「花びらが舞いおどる」は擬人法だな! ちょっと、作家になった気分!? 比喩を使うと表現の幅が広がるので、取り入れていきたい!



文章は「見た目」も大事


しっかり伝わる文章を書くためには、やっぱり基本が大事なんだなぁ。そういえば、普段よく目にするネット記事でも、読みやすい文章と読みにくい文章ってあるけど、そういうことだったのかな。


「文章を読みやすくするには、『どう見せるか』という文章の『見た目』を整えることも重要です。見た目とは、紙面、誌面、画面の字面(じずら)のことです。文章のプロの多くが『内容はもちろん、見せ方が重要である』と指摘しています。紙面、誌面、画面いっぱいに文字が詰まっていると、読む気が失せてしまうからです。


見た目を整える一つの方法が、『ひらがなと漢字の使い分け』です。漢字とひらがなを使い分けると、見た目の印象を変えることができます。漢字が多いと硬い印象になり、内容が頭に入りにくくなります。漢字はひらがなよりも画数が多いため、多用すると文字の詰まりが目立ったり、堅苦しい印象を与えたりします。


一方で、漢字が少なくひらがなが多いと、見た目がやわらかい印象になり、内容が頭に入りやすくなります。ひらがなと漢字の割合は、ひらがな8割、漢字2割が一つの目安です。漢字とひらがなのバランスを意識して『見た目』にも気を配ると、より読みやすい文章になります」(藤吉さん)



今回で学んだこと(まとめ)


書き方の具体的なテクニックは、すぐに実践できそうなものばかり。「わかりやすく伝える」ことを念頭に考えたらいいんだ、とあらためて思えた。プロが書く文章の裏側には、教えてもらったような、たくさんのテクニックが散りばめられている。「どんな内容が書いてあるか」と同時に、「どう書いているか」という目線で文章を見るのも、おもしろいかも! 次回は「どうやって文章をまとめるか」を聞いてみよう。


【ここをチェック】

・文章の基本は「シンプルに書く」

・中学生までに習った言葉を使う

・推敲(すいこう)をする

・比喩の表現をつかってみる

・読みやすい文章は「見た目」も大事

 

■教えてくれた人

藤吉豊(ふじよし・ゆたか)

株式会社文道、代表取締役

男性情報誌、自動車専門誌、2誌の編集長を歴任。2001年からフリーランスとなり、雑誌、PR誌の制作や、ビジネス書籍の企画・執筆・編集に携わる。インタビュー実績は2000人以上。2006年以降は、ビジネス書籍の編集協力に注力し、200冊以上の書籍のライティングに関わる。大学生や社会人に対して、執筆指導なども行なっている。

小川真理子(おがわ・まりこ)

株式会社文道、取締役

編集プロダクションにて、雑誌や企業PR誌、書籍の編集・ライティングに従事。今までのインタビューの実績は数知れず。得意なジャンルは「生活」全般、自己啓発など。自ら企画編集執筆した本に『親が倒れたときに読む本』(エイ出版)がある。近年は、ライティング講座にも力を注ぐ。


※文道では、2021年10月より女性向けライター養成講座を開催予定。お問い合わせは、info@y-academy.co.jpまで。


■参考資料

『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』(日経BP)

『文章力が、最強の武器である。』(SBクリエイティブ)

 

■取材・執筆

相田真理(あいた・まり)

女性向けのコミュニティ「富女子会」の運営に携わる。「お金」にまつわるテーマをもとに、イベントや講座の企画、開催に従事。主催した「ライティング講座」で藤吉氏、小川氏よりライティングを学ぶ。のちに「富女子会ライター部」を設立し、17名のメンバーと共に活動中。

 

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