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東京で働く必要はない!? テレワークが可能にする新しい働き方

更新日:8月20日



e-Janネットワークス株式会社の代表取締役である坂本史郎さんは、これからの働き方に対する最適解として、オフィス勤務とテレワークの中間にあると指摘した(前回の記事参照)。テレワークをはじめ、さまざまな環境整備を進める同社は、働き方に関する取り組みが評価され、「働きがいのある会社」ランキングで2年連続ベストカンパニーを受賞(Great Place To Work(R) Institute Japan発表)。これからの働き方はどう変化していくのか。この記事では一つの選択肢を提示してみたい。



経営層が欲しい人材×社員が働きたい会社


――コミュニケーションという観点からオフィス勤務の重要性も指摘されていましたが、やはり雑談は大事ですよね。テレワークだと気軽な雑談がどうしても生まれなくて……。


坂本 オンラインだと、雑談は自然には生まれないですね。私は雑談が大事だと思っていて、現在のようになかなか出社できない状況で、あえて雑談に焦点を当てた施策があるんです。それが「グループTMC」です。


――TMC?


坂本 「Ten Minutes Conversation」の頭文字をとったもので、もともと2006年から1対1で10~30分間、勤務時間中に話をすることを推進していたんです。その中で、グループで雑談したいというニーズがあるのに気づいたので、グループTMCを始めました。会社の抽せんシステムで社員をランダムに選んで、対談グループを作るんです。私や役員も含めていて、いろいろな部署の人間が雑談できるようになっています。


ほかにも、当社には「CrossCom」という日報システムがあるんですが、それもコミュニケーションを活性化させようと思って始めたものです。日報そのものは2004年から始めていて、社員にメールで日報を送ってもらい、私がコメントを書いて朝の9時までに返信していました。


ただ、会社の規模が20人ぐらいのときはそれでもよかったのですが、50~60人に増えてきた段階で5時間くらいかかるようになってしまったので、システム化したんです。それが、「CrossCom」です。メールの代わりにWEBで書きましょう、と。社員全員がアクセスできて、誰でもコメントしたり、スタンプを押したりできます。


――どういう意図で始めたんですか?


坂本 自分の考えが社員に理解されていない、自分の思ったように動いてくれないと、ずっと思っていたんです。一方、社員は何をしていいのかがわからない。だから、自分の考えを毎日発信することで、その課題を解決しようと思ったわけです。


2004年に始めたんですけど、これに合わない人は結局辞めていき、価値観を共有できる人だけが残りました。その結果、2006年には黒字化することもできました。経営層と社員が同じ方向を見ることは非常に大事でしたね。


――トップダウンで会社の方針に従わせることと、社員一人ひとりに柔軟に働いてもらうことでは、どちらが経営に合っていると思いますか?


坂本 朝令暮改(朝に出した命令を夕方にはもうあらためること)をよしとするところもあれば、一度決めたことは変えないというやり方もあります。私は社内で広くブレストして、いい意見であれば検証して進めることが多いですね。


当社では「あれこれ考えずに、言うことを聞きたい」という社員は少ないんです。能動的で、伸び伸びと自分の意見を言うような人を評価します。実際、一人ひとりが独立心を持っている社員が多くて、農家、ブロガー、Youtuberなど、副業を持っている人もいます。


――逆に、社員が求める理想の会社像はどんなものだと思いますか?


坂本 快適なテレワーク環境をサポートしたり、時短勤務やフレックス制度といった従業員のワークライフバランスを向上させることも大事です。そして、それだけでなく、社員が仲間意識を持てるかどうかも大事だと思っています。


仲間に認めてもらうことが自分のモチベーションになると思っていて、経営層はそういう環境を整えなければなりません。「CrossCom」はまさにそのためのツールですね。在宅勤務が増える中、オンラインでどうやってコミュニケーションを活性化させるのか。経営層はいま一度、真剣に取り組むべきだと思います。



ここからは、e-Janネットワークス・高知テク二カルセンターで働く李さんと、神林さんにお話を聞く。本業のかたわら副業もする2人は、どんな働き方をしているのか? 働きがいのある会社とは? 



社員の副業は大学教師に農家!?


――最初にe-Janネットワークスに入社したきっかけを教えてください。


 ぼくは高知大で教鞭をとりながら研究をしていたんですけど、2年前、上司からe-Janネットワークスを紹介されたんです。ちょうど高知にオフィスを開くときです。民間企業に興味があったから、まずはアルバイトとして入社して。今ではそちらが本業になって、大学の業務が副業になりました。


――民間企業に興味を持ったのは?


 新しいものをどんどん取り入れて、自分たちで形にしていくのが研究職に通じると思ったんです。テレワークのプラットフォームを作っていることや、高知ではめずらしいフレックス制度をはじめ、都市部では当たり前の社内制度も魅力的でしたね。実際、15時に上がって、大学で授業をすることもできますから。


神林 私はもともと新潟の生まれで、東京で20年以上、IT企業に勤めていました。5年前に高知に移住して、専業農家をやっていたんです。ところが、農業を5年やってみて、この先どうするのかを考えたんです。


農業はやはり経営耕地面積に売り上げが比例するので、どんどん大きくしていくべきか検討して、それとは別の働き方を模索しようと。ただ農家を辞める選択肢はなくて、副業ができる会社を探していました。


李 東奎さん。高知テク二カルセンター勤務。自社製品の検証業務を担当。副業では大学で教鞭をとっている


――実際に働いてみて、どうですか。


神林 私の場合、副業は基本的には土・日にやっています。ただ、テレワークのときは通勤時間がないので朝少し作業したり、注文が入った場合は夜に出荷作業をしたり、柔軟に働くことができていますね。


また、地方の会社は首都圏の支店というか、本社とは同列ではないという関係性が多いですよね。でも、当社は東京や大阪と変わらないところもいいですね。それはどこにいても同じ仕事ができる環境のおかげだと思います。


――それは坂本さんが力を入れている、コミュニケーションを円滑にするための環境のことですか?


そうですね。やはりコミュニケーションが難なく取れる環境は大事ですよね。e-Janネットワークスは20年かけて、「CrossCom」のような仕組みを取り入れながら環境整備を進めてきました。だからこそ、どこにいても仕事ができると思うんです


 「CrossCom」はSNSのようなコミュニケーションツールにもなっていて、ちょっとしたやりとりから新しいアイデアが生まれることもありますね。コミュニケーションがはかどるから、モチベーションの維持にもつながるし。


――ふだん、どのくらいの頻度でオンライン経由のやりとりを?


 ぼくはつねにアクティブです。iPadでFacetimeをつなぎっぱなしにして、「○○さん」と呼び掛けたりしますよ。口に出してコミュニケーションをとらないと、モワッとしたものが形になりにくいんですよ。昼食を食べるときさえもそうで、「今日の李’sキッチン」と言って、料理をしながら話したり。


神林 今日のお昼に生中継していたね(笑)。私もつねにつないでいますね。パソコンの前にいることが多いので、いつでもチャットで連絡が取りあえるようになっています。


――ストレスにはならないんですか?


 まったくならないです。家にいても環境音として取り入れることで、オフィスにいる感覚を模倣しているんです。


神林 潤さん。高知テク二カルセンター勤務。昨年にサービススタートした「NinjaConnect Telework(ニンジャコネクト テレワーク)」(中小企業向けのブラウザで使えるリモートデスクトップサービス)の販売サポートを担当。副業では農家として生姜・トマト・かぼちゃ・人参を作っている



もう東京にこだわる必要はない


――働く場所として、東京や大阪にこだわる必要はないですか?


神林 東京で働いていたとき、毎朝、満員電車に揺られて通勤していたんですね。それには戻りたくないなと思いますね。そういう意味ではテレワークはいいと思うし、地方都市で働くことは選択肢の一つになると思います。どういう環境で働くかという視点を重視すれば、もう東京にこだわる必要はないですよね。


もちろん、東京は東京でいいところがあって、いろいろな偶然の出会いから新しいものが生まれやすい。一方で地方ならではのよさもあるから、もっとフラットに見ればいいのかなと思います。


 コミュニケーションベースなら、もうどこにいても一緒なのかなという気はしていて。今日は出社するのか、それとも自宅で作業するのか。それを選びながら働けるのがスタンダードになると思います。


ワーケーション拠点を視察中の坂本さん


――どこでも働ける環境だからできる、または成し遂げたいことを教えてください。


神林 「NinjaConnect Telework」の拡販をがんばりつつ、新規事業を新たに作り出したいですね。次の新しい柱になりうる事業を育ててみたい。


 ぼくはワーケーションを実施してみたいですね。1カ月ぐらい。テレワークとは別のメリットやデメリットが洗い出せるんじゃないかと思うし。


――ワーケーションの環境もあるんですか?


 社長がワーケーションに積極的で、本社がある都内のオフィスを縮小しつつ、地方にワーケーション拠点を作ろうとしているんですよ。


――坂本さんは働く環境にかなり意識が高いんですね。


 社長は海外で働いてきた影響もあって、欧米で一般的な働き方を日本でも取り入れたいと考えているんです。リフレッシュしながら働けることはもちろん、ずっと同じ場所で、同じメンバーで仕事するのではなくて、さまざまな場所に身を置くことで新しいインスピレーションが得られる、と。


先ほど神林が指摘した、セレンディピティー(偶然の出会い、予想外のものを発見すること)ですね。日常生活のいろいろなところから影響を受けることができて、活躍する場所もたくさんある。それが健康的な働き方だとぼくも思いますね。

https://www.ninjaconnect.com/

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