• アサヒロジスティクス

3つのキーワードでわかる、食品物流の現在地

更新日:2021年12月1日



関東を中心に食品に特化した物流サービスを展開するアサヒロジスティクス。1400台のトラックを所有し、2300人のドライバーと3000人の作業スタッフで毎日500万人の食を支えている。物流といえば、私たちの大切な食生活を支える社会インフラとして注目を浴びるようになったものの、いまだにその内側は見えづらい。そこで、アサヒロジスティクスから朝日奈緒美さん、阿部龍太郎さん、塚本圭介さんの3名にご協力いただき、物流の今とこれからについて聞いてみた。



①「物流」は川上・川中・川下の3つに分けられる

(解説:阿部龍太郎さん)

 物流という言葉を聞いてどんな仕事を思い浮かべるでしょうか。読んで字のごとく「物を運ぶ流れ」のことを言うのですが、宅配便や郵便のように直接消費者に届ける仕事も、我々のように倉庫から小売店に商品を運ぶ仕事も、物流の一部です。


 物流は大きく川上、川中、川下の3つの領域に分けて考えると理解しやすいかと思います。川上はメーカー物流と言って、メーカーが工場で作った商品を各種物流センターに届けることです。次に川中はメーカーからセンターに預かった商品を仕分けして店舗に届けること、現在の当社が得意な領域はここです。そして川下は宅配便や郵便のような、一般ユーザーにお届けすること。


 川中にもさまざまな物流業者がいますが、当社はレストランや居酒屋といった外食チェーン、スーパー、コンビニに、おもに常温帯や冷蔵帯(チルド)、冷凍帯(フローズン)の3温度帯の商品(※)をお届けしています。


※3温度帯……厳密な温度管理が求められる食品を中心に、常温(ドライ)、冷蔵(チルド)、冷凍(フローズン)という3つに分けて管理される


 30~40年前は各メーカーが直接、お店に商品を届けることがほとんどでした。今に比べると1店舗あたりのトラックでの納品回数は非常に多く、1日に多いところだと30~40台ものトラックを店舗で荷受けしていたのです。それから物流センターが間に入るようになり、さまざまなメーカーの商品を一括して届けることができるようになり、店舗への納品車両の数が圧倒的に減りました。


 たとえばコンビニでは現在、それぞれの温度帯で1日1~2便、合計5台ぐらい。スーパーも温度帯別に集約しているので、当社でいうと平均して、常温帯で1日2台、冷蔵帯で1日2~3台納品します。そのほか、当社以外が担当するパンやお米が1日に2便、冷凍食品が1日1便、紙製品は週に3回ほど納品しています。


 では、具体的に当社の業務を例に流れを説明してみましょう。当社の倉庫にはさまざまなメーカーの商品が置かれています(在庫管理はたいていメーカーや問屋が行います)。そこにスーパーやレストランからの発注データをもとに、庫内専門のスタッフが納品先別に仕分けを行います。そして、ドライバーが仕分け済みの商品を積み、配送先で下ろす。契約内容によりますが、スーパーも外食チェーンも営業中はトラックから下ろしてそのまま引き渡しが多いのですが、夜間配送の場合は店舗に人がいないので、指定の場所に置くことまでします。

 1台のトラックにはどれぐらいの荷物が入っているかというと、2000~3000キロほど。業態によって変わりますが、スーパーだと1つの店舗に運ぶ量が多いので、一度店舗に届けてセンターに戻り、また届けて……を2~3回行います。同じ店舗の場合もあれば、そのつど違う店舗に行くこともありますね。これが外食チェーンになると、1店舗あたりの納品量がスーパーに比べて少ないので、一度に15~20軒分の荷物を積んで、ルート配送(順番に回って納品する)します。


 各店舗によって届ける時間帯が決まっていて、遅れることはほぼありません。ただ例外があって、それは台風や大雪です。たとえば2014年、関東地方が大雪に二度見舞われたことがあります。その二度目の大雪の前日に発注量が非常に増えました。1日で運べる量は限りがありますから、そのときは遅れが発生してしまいました。

阿部龍太郎さん。アサヒロジスティクス営業企画グループと情報システムグループを兼任。管理会計や予算管理等の数値管理、契約書管理をはじめ、情報システム領域としては社内の情報インフラの構築や、システム関連の企画部門を担当



②「自社オペレーション」で顧客のニーズに対応

(解説:朝日奈緒美さん)

 当社の社名でもある「ロジスティクス」。これはものの生産から消費者に届くまでの一連の流れを指す言葉です。当社はその中で実際にモノを運ぶ『物流』がメインの業務であり、メーカーと小売店や飲食店をつなぐ役割を担っています。


 前項で阿部が説明しましたが、当社の依頼主は小売店や飲食店も多数あります。契約形態はさまざまですが、大手の飲食チェーン様とも多くお取引させていただいています。多くの店舗を展開するチェーンは、保管・配送のノウハウがあるところに依頼するケースが一般的です。当社が直接依頼されることもありますが、ベンダー(問屋)を通して依頼されるケースも多いです。ベンダー(問屋)がチェーンと物の売り買いを行う過程(商流)で、商流と物流を一括で受注し、そのうちの物流部分を我々に再委託されるケースがこれにあたります。


 当社は専属の営業を設けていません。ありがたいことに既存のお客様からお声がけをいただいたり、「食品ならアサヒロジスティクスがあるよ」と当社をご紹介いただけることが多いのです。お声がけいただける理由を考えると、やはり当社の強みである自社オペレーションなのかなと思います。


 ドライバーはもちろんのこと、庫内作業も基本的には自社の従業員が行っているのです。自社の社員として人材教育を行っているので、ただモノを仕分けして運ぶというより、『物流』というサービスを提供しているという感じでしょうか。


 当社はトラックを1400台所有していますが、配送の仕事の多くを協力会社に振り分けている物流事業者も少なくありません。特に売り上げ規模の大きい会社はそういった割合も大きくなりがちです。逆に一概に物流業者といっても、車両を1台も持たない、つまり別の会社からトラックを引っ張ってくる手配業のような方法もあるのです。


 自社オペレーションの最大のメリットは品質と、お客様に合わせたこまかいサービスを提供できること。人口減少が進む中、外食チェーンやスーパーも人不足なのです。すると、今まで店舗側で行っていた業務を、我々のような会社が提供する。お店側のオペレーションを簡素化するサービスですね。


 たとえば、外食店舗の夜間配送もその一つです(昼間の渋滞を回避できるという当社側のメリットも大きいのですが)。店舗から事前にカギをお預かりしているので、スタッフのいない時間帯にお店に行き、冷蔵庫に商品を格納することができます。こういうこまかいサービスは外注が多いとなかなかうまくいきません。連絡事項は間に会社やヒトが入るほど、連携がむずかしくなるからです。

 当社の自社オペレーションを支えているのが「人財力」です。「ヒト」がいなければ当社の自社オペレーションは成り立ちません。当社では、「人は財産である」という考えのもと、人材=人財と表現し、入社した社員をしっかりと社内で育成する仕組みがあります。


 職種にかかわらず、入社した社員全員に受講してもらう「アサナビ」では、創業の想いや会社の歴史などについて学習し、全員が同じ想いを持って働いていただくことを心掛けています。ドライバーについては原則正社員(使用期間・嘱託などを除く)とし、専用の研修施設を設け、未経験者でも安心して配送に出ていただける環境を整えています。


 管理監督職については、企業内大学であるアサヒ人財大学(通称ALU)を開校し、各レベルに合わせた全4コースの階層別教育で、継続的な学習の機会を設けています。また、充実の福利厚生制度で社員のみならずご家族の皆さんにも満足していただくことで、高品質なサービスを安定して提供できる環境につなげることを大切に考えています。


 ちなみに2021年10月1日から「輸出入に関わる通関手続き業務」を開始しました。これまで当社は川中の事業を中心としていたところを、川上の事業から一括して受託するという新しい取り組みです。具体的には輸出入貨物の入出庫・保管・荷捌き・流通加工・物流(国内配送)を一括して取り扱うのです。物流のニーズは高まる一方ですから、我々もお客様へのサービスの幅を広げていこうというわけですね。

朝日奈緒美さん。アサヒロジスティクス営業企画グループ所属。Webやリリース等を通じての情報発信や取材対応、オリジナルキャラクターを活かした企画立案等、社内外からの当社のファンづくりのための取り組みを行う



③「物流の2024年問題」は若手と女性の採用で解決

(解説:塚本圭介さん)

 日本の物流における最大の課題は労働力不足です。中でも、2024年4月1日から運送業界の残業時間は年間960時間が上限になります。ドライバーの労働時間に制限がかかるので、ドライバーの確保や従業員の働き方を改善していくことが求められます。


 そもそも、若手と女性の採用が進まなかった理由はいくつかあります。その一つが、平成19年に運転免許の制度が変わったことです。どこの運送会社でも主力は3~4トントラックで、免許の制度が変わる前は、普通免許で乗ることができました。


 ところが、平成19年以降は小さい車両(車両総重量5トン未満)しか乗ることができなくなってしまったのです。もしトラックに乗りたかったら、普通免許を取り、さらにもう一度教習所に行かなければなりません。以前は免許を取った人に職業として選んでいただいましたが、今はあえて免許を取得して選ぶ職業になりました。


 もう一つは、物流業界のイメージです。デスクワークと違って体を使い、外に出て大きなトラックに乗る。拘束時間が長い。重たい荷物を扱うのできつい。深夜業務や倉庫の中が暗い……実際にセンターを見学していただくとそのイメージは変わるようなのですが、まだまだ物流業界へのイメージは良いとは言えません。


 物流業界を選んでもらうには、こうした課題を解決しなければなりません。そのため当社では、さまざまな取り組みを行っています(前項も参照)。一つがドライバー専用の研修センターです。未経験の方は、本当にトラックの運転ができるか不安に思っています。その点、当社の研修センターでは、座学やトラックを使った実技研修でしっかりと基礎を学ぶことができるので安心です。実際、研修センターの存在で当社に入ったという人も少なくありません。

 物流業界のイメージ改善に関しては、宅配便や郵便と異なり、消費者に直接届けているものではないので、なかなか仕事のイメージがつきにくいことも影響しているはずです。そこで、倉庫の中を案内したり、積極的に情報を発信したりして、物流の仕事を理解してもらうことも必要でしょう。


 また、物流業界はいまだに男性の仕事というイメージが強いのですが、2019年には女性専用の車両の導入やユニフォームの改善など、プロジェクトとして全体的に取り組んでいます。そうした影響もあり、女性の比率は2.7%前後だった2017年ごろに比べて、現在は6パーセントを超えました。2021年9月末で136名の女性ドライバーが在籍しています。ドライバー全体の総人数も増えていますが、なかでも女性の比率が増えているわけです。採用率が上がることで、現場の考えも変わりました。それまでは女性が働いているのはめずらしいという拠点でも、女性が増えることで違和感がなくなってきたわけです。

 さらに、労働時間の改善や年間休日の増加など、働き方の改善も進めています。当社には昨年ドライバーだけで500人が入社しました。採用人数が多いのは業務が拡大している理由もありますが、諸事情で退職される方も少なくないのです。あくまでも体感ですが、物流業界は出入りが激しい。だから定着率も上げていかなければなりません。


 ただ、業界全体のイメージの改善は進んでいます。鉄道や電気、ガス、水道と同様に、物流も大切な社会インフラだという認識が広まってきたのです。昔は「食べ物はなくては困るけど、あって当然」という意識がふつうでした。ところが、災害や新型コロナウイルスによる影響もあって、物が売っていることは決して当たり前のことではない、物流は必要だと多くの方に気づいていただけた。そういう意味で、物流のイメージはただきつい、汚いから、なくてはならないものに変わりつつあると思います。

塚本圭介さん。アサヒロジスティクス採用育成グループ所属。新卒・中途社員の採用活動やサービスドライバー・管理監督職を対象とした人材育成のための社内研修の企画・運営を担当

アサヒロジスティクス株式会社

https://www.asahilogistics.co.jp/

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