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コロナのエコキュートが差別化に成功した「子育てママ」視点

■話し手:株式会社コロナ 諸橋徳子さん

#キッズデザイン #モノづくり


画像提供:株式会社コロナ


お湯をつくったり貯めたりする給湯器は、キッチンやお風呂など、家には欠かせない製品だ。ところが、パソコンやテレビといった家電と同様に、機能面の充実、低価格化などが進んだ結果、差別化がむずかしくなった製品でもある。そんな中、コロナのエコキュートは、数ある製品の中から、キッズデザイン賞「子どもたちを産み育てやすいデザイン部門」を受賞。市場でのプレゼンスを高めることに成功した。飽和したニーズの中で、エコキュートはどのようにして差別化に成功したのか。開発者である諸橋徳子さんに話を聞いた。



“省エネ”で注目されるエコキュート


――最初に、エコキュートがどんな製品か教えてください。


電気を使って深夜にお湯をお沸かし、タンクに貯めておくことができる給湯器です。お風呂のお湯、キッチンの水道でお湯を使いたいときにも使われていますね。エコキュートは大気の熱を使ってお湯を沸かすので使用する電力が少なく、電気代が安いという特徴があります。


――コロナといえば暖房器具というイメージがありました。


たしかに当社は暖房器具の会社というイメージが強いですね。でも実は、住宅設備機器が売上の4割近くを占めています。そしてエコキュートは、そのうちの半分ほどを占める主力商品なんです。ちなみに、2001年4月に世界で初めて自然冷媒CO2家庭用ヒートポンプ給湯器の販売を開始しました。


――給湯器は電気のほかにどんな種類があるんですか?


ガス、石油、電気の3つがあります。ガスは都市ガスの供給エリア、石油は都市ガスが通っていない地域で設置されていて、特にガスは依然として市場の主流です。そのため、イニシャルコストが安いのが特徴ですね。


一方、電気はどんな地域でも設置することができます。外にタンクを置き、そこにお湯を貯めるため、イニシャルコストはかかりますが、ランニングコストは3分の1~6分の1と安くなるんです。


――給湯器はガスが主流なんですね。


そうですね。現在、給湯器は年間で約450万台程度出荷されていて、全体では若干下がっているものの、いまだに圧倒的なシェアを誇っています。エコキュートは新築住宅に設置されることが多かったのですが、現在は新築の着工戸数が減少しており、リフォームや給湯器の交換(約10年)での設置のほうが多くなっていることも影響していますね。


ただ、その中でもエコキュートは右肩上がりで伸びているんです。当社のエコキュートも一時的に停滞した時期もありましたが、いまではしっかりと売り上げが上がっています。


――一時的に停滞したというのは?


2011年の東日本大震災のとき、電力の供給不安が起こったためです。それまではオール電化住宅、オール電化マンションなどが注目されて市場が成長していたのですが、それがストップしてしまった。電力の供給不安で、電力を使うのは悪だという雰囲気になってしまったんです。


――その状態から需要が復活したのはなぜですか?


政府はいま、家庭の省エネ化――ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの普及を後押ししています。これは、消費エネルギーよりも住宅でつくったエネルギーのほうが多い、または差がゼロになるようにしようというものです。


そして、家庭の中で最もエネルギー消費の多いものを省エネ化する。それが給湯器で、その次が冷暖房なんです。その結果、エコキュートは省エネの観点から環境配慮商品として注目され、需要が高まっているわけです。

画像提供:株式会社コロナ



他社と何が違うかよりも、お客様が本当に喜ぶことは何かに集中する


――2020年発売のエコキュートが、キッズデザイン賞「子どもたちを産み育てやすいデザイン部門」を受賞しました。どんなところが評価されたんですか?


子どもの入浴の安全に特化した機能と、子育て世代の意見を反映した点です。具体的には、「ふろ自動一時停止」機能、「音声モニター」機能、「入浴お知らせ」機能の3つです。「ふろ自動一時停止」機能は、子どもの入浴中に、浴槽循環口から急に熱いお湯が出てこないように一時的に停止することができます。


「音声モニター」機能は台所と浴室に設置してある2つのリモコンを使って入浴中の子どもの様子を音声で知ることができ、「入浴お知らせ」機能はリモコンランプで入浴の状況をチェックすることができます。


――子どもの安全に関する機能を付けた理由は?


エコキュートはいかに省エネ機能を高めるかという性能競争がし烈です。省エネを押すのであれば、少しでも他社の製品を上回っていないとアピールできません。でも、省エネという点ではどの製品も同じような水準になってきました。


それはつまり、お客様にとって省エネ――ランニングコストが安いことはすでに当たりまえの機能だということ。そこで差別化を目指すことは本当に正しいことなのか? それよりも、お客様が何を求めているのかにあらためて集中することにしたんです。というのも、当社の企業理念に「お客様に喜んでいただく商品づくりをする」ことがあるからです。


私がメインで手掛けたのは「ふろ自動一時停止」機能なのですが、これを思いついたとき、私は育児休暇中でした。お風呂に入っていたときにふと、「子どもにお湯が当たったらあぶないな」と思ったんです。それこそ子育て世代が求めている機能だと気付いて、それから具体的な機能を検討し、育児休暇明けに上司に相談しました。


その後、子ども向けの機能がお客様に本当に必要なのか、チーム内で精査しました。そして社内全体でアンケートを取ったり、市場調査を行ったりして、入浴に関する困りごとを抽出したんです。


――具体的にはどんな要望が?


大きく分けると、「子どもの安全」「時短」「操作が簡単であること」「入浴時に疲れを癒したい」の4つでした。「子どもの安全」に対するニーズがあることを確信したので、具体的に開発を進めるようになって。


ただ、子どもの安全はどこまでも理想を追いかけることができてしまうんです。たとえば、なぜいきなり熱いお湯が出てくるかというと、追いきするからです。それを防ぐためには、要はお湯を冷めさないようにずっと加温していればいい。そうすれば、熱いお湯が突発的に出てくることはありません。


ところが、現実的にはエコキュートではそんなことはできないし、何か機能を入れようとすると、どうしても限定的になってしまう。また、コストもかかります。


――理想と現実のギャップは埋めるのに苦労しますよね。


はい。そこで注目したのが、もともと入っていた高齢者向けの見守り機能でした。「入浴お知らせ」機能は、3年ほど前、高齢者の入浴事故が多いという背景から検討してきた機能だったんです。子どもも高齢者も目をかけてあげないといけないという考え方は一緒でしたから、うまく流用することができたわけです。


――機能を追加するとき、ほかに気をつけたことは?


スイッチ一つで操作できることですね。付加価値をあれもこれも足そうとすると、操作が複雑になってしまうことが少なくありません。子育て機能を使う人を考えれば、できるだけシンプルにする必要がありました。


私は家電量販店に行くことが好きなんですけど、給湯器に限らず、さまざまな家電を見るようにしています。特に、形を見ます。どんなボタンが入っているのか、並びはどうなっているかなど、ボタンを見るだけで現在の流行りを見て取ることができるんです。個人的には必要な機能が備わっていて、かつシンプルに操作できることが好みですね。


諸橋徳子さん/1988年生まれ。2011年、同社に入社。現在は技術本部 エコ商品開発グループに所属(画像提供:株式会社コロナ)



性別を問わず、結果を出すために必要なこと


――入社10年で自身の開発した機能でキッズデザイン賞を受賞。社内でも評判になったのでは?


社長賞をいただきました。女性で、かつこの年齢でということで、社内でも話題になりました。


――技術系の部署は女性が少ないイメージですが、やりにくさはありませんでしたか?


技術系だからか、よくも悪くも男女平等です。“女性だから”優遇されたり冷遇されたりはありません。強いて言えば、何でも結論から入るコミュニケーションには苦労したかもしれません(汗)。あまりダラダラしゃべるよりも、結論だけ言って終える。それが技術職特有なのかはわかりませんが……。


とはいえ、チームで製品を作る以上、コミュニケーション能力は欠かせません。もともと引っ込み思案な性格でしたが、徐々に意識が変わったと思います。いまはコロナ禍でむずかしいですけど、飲み会で上司としゃべったり、何か提案したいときは事前にコミュニケーションを取ったり。


――コミュニケーション能力以外で、成功するために必要なことはなんですか?


まずは社風というか、会社の方針と自分のやりたいことが一致していることが大事だと思います。私は事前に社風を調べて入社したので、入社後もそこにブレはありませんでした。働きやすい環境、自分が考えることが実現できる会社なのかなと思います。


――諸橋さんご自身もそうですが、育児休暇復帰率が100パーセントだったり、時短勤務制度も9パターンあるなど、女性が働く環境がかなり整備されていますね。


私はまだ入社して10年なので、昔のことまではわかりませんが、もともと製造業ということもあるせいか、「重い物を持つのは男、お茶を持つのは女」的な歴史もあったそうです。それでもこの10年は変化の過程にあると思います。


そしてもう一つ成功するために大事だと思うのは、何事も準備しておくことです。子育てをしながら仕事をしていると、イレギュラーなことがひんぱんに起こります。急に子どものお迎えに行かなければならないとか、子どもが熱を出したから休まないといけないとか。


そんなとき、事前に作業の準備をしておくことや、日数を確保しておくことが重要になります。昔は夏休みの宿題はギリギリやるタイプだったんですけど、子どもが生まれてからは劇的に変わりました(笑)。


――今後、自身のキャリアで成し遂げたいことは?


これからも商品開発にたずさわっていきたいです。当社のブランドスローガンが「つぎの快適をつくろう。」なので、エコキュートに限らず、家のどこにいても快適に過ごせる商品を開発していきたい。また、IoT(身のまわりの物がインターネットにつながる仕組み)の普及も進んでいますから、うまく活用したアイデアも形にしていきたいですね。

株式会社コロナ

https://www.corona.co.jp/

エコキュート https://www.corona.co.jp/eco/

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