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  • 執筆者の写真Byakuya Biz Books

一度は使ったことがあるかも!? 身近なITサービスを影で支える開発会社の仕事



ソフトウェアの受託開発屋と聞いて、どんな仕事をしている会社か想像できるだろうか。ハードウェアを作るメーカーと比べると、あまり表には出てこないのでなじみがないかもしれないが、普段我々がスマホやタブレット端末でよく使うアプリケーションはこうした開発会社なくして存在しえないものである。日進月歩のIT業界でどのような領域の仕事を任されているのか? KDDIテクノロジーの代表取締役社長、大井龍太郎さんをお迎えし、裏方の仕事に迫る。



ソフトウェア開発という仕事


――まずKDDIテクノロジーについて教えてください。アプリ開発、画像認識AI、自然言語AI、スマートドローン、5G、Webシステムなどさまざまな技術に取り組む、と事業内容にあります。とにかく領域が広いですが、具体的に何をしている会社なんですか?


ひと言で説明するとソフトウェア開発、もっと言うとアプリケーションの開発ですね。スマホのアプリや、最近はクラウド上でのアプリを開発しています。特に当社の場合、親会社のKDDIから依頼を受ける開発が多く、KDDIが提供しているコンシューマ向けのサービス――たとえばスマートフォンで支払いが行える決済サービス「au PAY」アプリの開発をしています。


――親会社のKDDIからの発注が多いんですね。発注からリリースまではどのくらいの期間がかかるんでしょうか。


規模にもよりますが半年~1年ぐらいですね。


――依頼は「こんなの作ってね」とざっくりしたものですか? それともこまかい仕様書が送られてくるんですか?


「こんなの作ってね」に近いですね。そのため、大枠のコンセプトはわかっても、それをどう落とし込めばいいのか、どうデザインすればいいのかがわからないところからスタートする場合も少なくありません。


――必ず仕様書があるわけではないんですね。


最近は仕様書を書くことは少なくなってきています。もちろん設計していく上で必要な情報はありますが、日々のやり取りの中で確認していくやり方に変わってきていますね。


というのも、以前の開発現場ではウォーターフォール型開発(滝のように上流から下流へ、決められた工程どおりに開発が進められていくこと)が多かったのですが、最近はアジャイル型開発(工程をこまかく区切ることで、開発中の仕様変更に柔軟に対応すること。すばやいリリースが可能になる)が主流になっているんです。実際、プロトタイプで確認してもらったり、早く実装して確認してもらったりすることが増えています。


――そうした変化の中で、受注側の開発会社に求められることはなんでしょうか。


どんな要望にも応えられる技術力だけでなく、発注側の上流にも入り込むこと――「こうしたら解決できますよ」というところに踏み込んでいくことが求められています。そのためには、ユーザーストーリーを理解しておくことが大切ですね。私たちは発注主を見て仕事をするわけですが、だからといって指示通りに開発すればいいわけではありません。商品づくりにおいて、ユーザーが何を求めているのか、受注側も理解しながら開発を進めていくことが必要なんです。


これは業界全体で言えることだと思います。コーディングするスキルだけでなく、ソリューションを生み出していくことができる人材が多くないとシステム開発の仕事は増えません。同業の方と話すとき、そういう人材不足の話題になることもありますね。


大井龍太郎さんKDDIテクノロジー代表取締役社長

福岡県出身。1970年生まれ。KDDI株式会社にてモバイルアプリ開発に注力し、Androidスマホの立ち上げや機種変更時のデータ移行アプリなど多くの開発に携わる。2020年、KDDIテクノロジー代表取締役社長に抜擢され、就任。小学校の頃に触っていたコンピューターはシャープの「MZ-80」(1978年発売)。『マイコンBASICマガジン』(電波新聞社)や『I/O』(日本マイクロコンピュータ連盟)などでプログラミングを学んだそう。



5Gの本領発揮はまだまだ先!?


――最近はどんな領域での依頼が多いですか?


基本的にはKDDI本体が掲げる戦略や注力領域の開発が増えますね。昨年は5Gです。5Gは2020年にスタートしたのですが、新型コロナウイルスの影響で当初はあまりプロモーションできませんでした。それが2021年から少しずつ力を入れるようになり、5Gを生かすサービスを作りたいという話が増えました。メタバースが注目されたときは「AR」のアプリを作ってほしいという話などもあります。


――KDDIだから、やはり5Gなんですね。


通信事業者ですからね。KDDIがグループの戦略として、5G通信を軸とした「サテライトグロース戦略」を掲げています。これは5Gを核として、金融やエネルギーなど事業の拡大を目指していくもので、今後はこうした分野の仕事も増えていくと予想しています。


――グループ会社とはいえ、そうしたすべての話を一手に引き受けているわけではないんですよね。


そうですね。技術によってはすでに先行している、得意分野を持つ企業さんもありますからすべてではありません。ただイチからサービスを作る場合は声がかかることが多いですね。当社に話が来る場合でも、自社でできるケースもあれば、アウトソースを使うこともあります。


――5Gが中心にあるのは、通信業界ならではでしょうか。


5G通信を生かしたいので、5Gを中心としたサービスを考えていく戦略になっています。ところが、どのケースも必ず5Gでなければならない、ということはないと思います。仮にAIで何かを実現したいという企業さんがいたとして、4Gでもできるならそちらを選ぶ場合もあるでしょう。


――基本的な質問なんですが、5Gって何がすごいんですか?


帯域が広いことや遅延が少ないなどです。


――帯域……? 遅延……?


簡単に言うと、帯域が広いと一度に送信できる情報量が多くなります。つまり短い時間でデータ通信ができるので、遅延も少なくなるわけです。インターネットの通信サービスは必ずしも遅延がないことを保証するものではなくて、ベストエフォートサービス(最善のサービスを提供する努力をするというもの)です。インターネットはどうしても遅延する可能性を排除できませんが、5Gでは無線上の遅延はほぼなくすことができます。


以前、5Gのすごいところとして「映画のダウンロードが一瞬です」みたいな宣伝がされましたが、それよりも広帯域で通信したいといった状況で真価を発揮します。たとえば、映像を見ながら遠隔で車を運転するときに、遅延があったらダメですよね。目の前に人がいるとわかってからブレーキをかけても手遅れになってしまう。ここを解決できれば、遠くにある路線バスを遠隔操作で運転することができるかもしれません。そういうところに5Gのよさが出るんです。


――そういう未来はもう少し先になりそうですか。


少し先になりそうですけど、一方で自動運転の技術も発達してきています。そうした技術の組み合わせで、早い実現も期待できますね。もちろん、AIもまだビジネスに使える技術領域としてはまだ限定されていて、解決しなければいけないことはたくさんあります。ただ、徐々に進化してきているので、常に追従することでブレイクスルーが起きたときに、いち早く対応できると思いますね。


――ちなみに、AIの進化では今年になってGhatGPTが登場し、一般ユーザーの間でも盛り上がっています。これは技術者の皆さんにとってはどういう評価なんでしょうか。


すごい進化だと思います。一段階上がったという感覚はありますね。それでもビジネスに使えるかというと、まだ課題をたくさんつぶしていくことが必要です。たとえばChatGPTがしゃべったことが本当に信頼できるのか、それを誰が証明するのか。そういう課題がまだまだあると思います。


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ソフトウェア開発のこれから


――ソフトウェア開発では、必要なら発注元と一緒に作っていくことが重要というお話でしたが、今後はどうなっていくと見ていますか?


最近は事業会社が自分たちでエンジニアを抱えてソフトを開発するというスタイルが出てきています。すべてを開発会社に発注するのではなく、エンジニアを抱えて自分たちで開発するわけです。


それは言い換えれば、エンジニアを資産として見なしていると捉えることもできます。これまではコストと捉えていたんですよね。つまり、できるだけ安いところに任せるとか。そうではなくて、技術者を抱えてソフトウェアを開発していくことが事業においても重要になってきたのだと思います。


我々はKDDIという事業会社の下で開発している以上、KDDIの事業を大きくするためのエンジニアをある意味育てて資産にしているようなものなんです。だからこそ中に入り込んでKDDIのサービスを良くしていくことにもっと関与していかなきゃいけないと思っています。受託というただ言われたものだけを作ればよいという考え方からは変わってきています。


――その考えに至った理由はなんでしょうか。


やはり受託開発だけだときつくなるのではないかと思うようになってきたからです。昔はオフショア開発といって、コストを重視して国内より海外の安い企業に開発を委託していました。日本人向けにソフトウェアを作るので、要求仕様は日本で書いていかに海外のエンジニアにそれを伝えるかが課題だったのです。


ところが今は、日本をターゲットにして日本語ができる、日本のことをよくわかっている外国人が開発するオフショアベンダも現れています。そうするとオフショアベンダが競合になり、コスト競争で負けてしまうことも起こりえます。


その結果、ソフトウェアの業界も海外のコスト競争力のあるベンダが力をつけてグローバル化が進むんじゃないかという危機感があります。


――その危機感というのは、どんな業界でも通じるものがあると思います。個人としての心がまえというか、できることはなんでしょうか。


いろいろなことに興味を持ったり、知っておくことだと思います。ソリューションを生み出すことが必要とお話ししてきましたが、課題を解決するとき、解決策というのはいきなりまったく新しい方法が生まれてくるのではなく、既存の何かと何かの組み合わせでできているものです。


課題に対して何と何を組み合わせれば解決できるのか。そこに思い至ることができるかは、知識の幅広さが必要です。知識がなければ「この技術を使えばできるよね」ということを思いつくことができません。そうやって課題を解決する力、ひいては価値を生み出す力を身に着けていくことが大切だと思います。


今や世の中の動きは早く、グローバル規模で変化しています。その変化は身近でも起きていて、その予兆や微細な変化もよく見ておけば気づくことができると思います。つねにアンテナを張って、変化を捉えて未来を予測して少しずつでも行動を変えていくといった変化に順応することが肝要です。大きく変化をするのは大変ですが、少しずつ変えるということであればやりやすいのではないでしょうか。そしてそれを継続することがとても重要です。


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