今や情報発信のツールとして欠かせないものになったプレスリリース。数多配信されるリリースを読むだけでなく、発信する側として書いたことがある人も少なくないはずだ。そんなとき、「どうやって書いたらいいんだ……?」と困った経験はないだろうか。せっかくなら多くの人に読まれるプレスリリースを書きたい。でもどうすれば……? それなら専門家に聞いてみよう、というわけで、利用企業社数が7万社を超える国内シェアNO.1の配信サイト「PR TIMES」の吉田優さん、今井友理恵さんに協力を依頼。プレスリリースの現状から過去に話題になったリリース、そして注目されるプレスリリースの書き方を添削形式で教えていただいた。
プレスリリースって何?
――プレスリリースとニュースリリースって何が違うんですか?
吉田 ほぼ同義です。元は報道発表資料のことで、メディアに向けて発表し、報道してもらうことを従来の目的としています。ニュースリリースは報道機関を意味する「プレス」がなくニュースという単語を含んでいるため、プレスリリースよりも相手を限定せずに発信するという印象を持つ人が多いかもしれません。
――プレスリリースは報道機関向けという意味合いが強いんですね。
吉田 ベースはそうでした。ただ、今はプレスリリースの目的も多様化していて、メディア(プレス)の記事や番組の情報源として活用してもらうのに加えて、生活者にも直接見てもらえる機会が拡大していて、情報を広めるための手段という認識も広がっています。
――プレスリリース周辺の言葉、たとえばPR、プロモーション、広報、広告などの違いもけっこうあやふやで……
今井 PRはプロモーション(Promotion)の頭文字と勘違いされることもあるのですが、プロモーションは販売促進、PRはPublic Relationsのことを言います。つまり、その会社のステークホルダーと良好な関係を築くことを意味しているんです。それは取引先や消費者、株主だけでなく、私たちが関わる人たち――従業員、従業員の家族、周辺地域の人たちなどさまざまに広げることができます。
――広報は「広く報じる」、つまり一方的に情報を発信することですか?
今井 一方的に情報を発信するのではなく、広報もPRの一部、その担い手のようなイメージです。私はまさにPR TIMESの広報としてメディアの記者さんとやりとりすることが多いのですが、自社発表の情報を取り上げてくださいという一方的なお願いではなく、記者さん、さらにはその媒体の読者さんのことを考えながら情報をお出ししています。
――なるほど。PRが大きな概念で、広報が内包されているようなイメージ。
今井 そうですね。
吉田 そして、プレスリリースや広告はPRを実現するための手段だと考えています。情報を発表することと枠を買って掲出することの違いはあれど、自社が関わる大切な存在との良好な関係をつくるという目的は共通するはず、と思っています。
吉田優さん/株式会社PR TIMESカスタマーリレーションズ本部 アクティブサポート担当マネージャー。2020年4月新卒で入社。営業本部を経験後、2021年5月より現職。カスタマーサクセスの立ち上げを担当し、プレスリリースを中心としたPRに関する勉強会の企画・実行や、配信前プレスリリースのアドバイスなどをメインで担当。
今井友理恵さん/株式会社PR TIMES経営管理本部PR・IRチーム。自社広報としてプレスリリース執筆・校正や記者発表会の運営のほか、取材対応やメディアとの情報交換などメディアリレーションズを主に担当。
1カ月で3万件以上の配信数! プレスリリースの今
――PR TIMESではどのくらいのリリースが配信されているんですか?
今井 利用企業社数は7万2851社(2022年8月末時点)、プレスリリース数は3万1165件/月(2022年3月末時点)、配信メディアリストは1万1807媒体、メディアユーザー数は2万4208名、サイト閲覧数は6212万PV/月(2022年8月末時点)となっています。
――ひと月で3万件以上も配信されているんですか……! これだけPV数も多ければ、自社サイトよりもPR TIMESで配信したほうが注目される確率は上がりますね。
吉田 自社のサイトはもともと興味のある方や自社を知っている方が中心に訪れると思いますが、PR TIMESはプレスリリースのプラットフォームとして、今まで繋がりのなかったメディアや生活者にも情報が届けられるのは一つのメリットですね。
PR TIMESでは、1配信3万円の従量課金プランか、月8万円で30件まで配信できる定額プランを選べる。半年や年間の長期契約でさらに割引になる。
――プレスリリースの目的が多様化しているというお話でしたが、これまでのようなメディア関係者だけが読むものではなくなっているということでしょうか。
吉田 読まれ方の幅は広がっていると思います。PR TIMESは、6~7割がオーガニック(自然検索。検索結果からのトラフィック)の流入です。つまり検索エンジンで検索してたどり着いた情報が、PR TIMESから出ているプレスリリースだったということもあります。
――プレスリリースが記事化しつつある?
今井 そうですね。PR TIMESは2007年からサービスがスタートしましたが、当初は「○○を発売します」のようなシンプルなリリースを配信し、メディアから問い合わせが入ったら記者さんに詳細を話す、というやり取りが多かったように思います。
ところが最近では、プレスリリース自体がリッチコンテンツ化しています。膨大なリリースが毎日、発信される中で、メディアに取り上げられないとせっかく情報発信したのにまったく知られずに埋もれてしまうということになります。
ですから、一般の方の目にも入るものとして、自分たちがプレスリリースにすべてを書く。そんな発表担当者の気概を感じることが多くなりました。たとえば飲料のプレスリリースなら「こういうシーンで飲んでほしい」のような、記者さんがそのまま引用したくなるようなものが増えていると思います。
プレスリリースの画像や動画素材もともに点数が年々増えており、プレスリリース1件あたりに添付されている画像枚数は平均5.2枚(2022年8月末時点)、また画像を5枚以上添付しているプレスリリースは2021年には約3.5倍(2017年比)となっていて、これもリッチコンテンツ化が進んでいる証拠だと思いますね。
――企業発信の記事というとnoteも同じような使われ方をしている印象です。そうした手段の境目があいまいになっているということですか?
吉田 noteを上手に活用してオウンドコンテンツを掲載する例も目にしますね。プレスリリースは、「公式発表」としてメディアへ新情報を届けるとともに、生活者からのアクセスもあり、企業が発信する一次情報として扱われています。
――たしかに、メディアとしては一次情報の信頼性は大事ですもんね。
吉田 情報の信頼性はとても大切だと思っています。そして、プレスリリースが果たせる役割と可能性はまだまだ広がっていくと思っています。
今井 プレスリリースは報道機関向けの公式発表資料だというベースがあるので、PR TIMESで掲載した画像素材などに関して、メディアユーザーはダウンロードし、自由に使っていただいていいことになっています。そのため、プレスリリースとして配信した文章はそのまま報じていただいて構いませんという、公式発表としての覚悟はあると思います。
――最近ではどんなプレスリリースが多いですか?
吉田 最近に限ったことではないのですが、いわゆる新商品の発売などをイメージされることが多い中で、たとえばスタートアップ企業からだと資金調達のリリースを配信することなどは多いですね。
スタートアップチャレンジという、設立2年以内の企業は月1回、計10回まで無料で使えるプログラムを用意していることも影響しているとか。
――今や情報発信は当たり前で、その一つの手段としてプレスリリースを使わない手はないという感じでしょうか。
吉田 そうですね。ぜひ使っていただきたいと思いつつ、プレスリリースにはプレスリリースの良さがあるし、SNSにはSNSの良さがあるので、意識的に使い分けたほうがいいと思います。
――一次情報としての説得力を持つ、公式発表として出すものについては、プレスリリースが選択肢としてはいいということですよね。スタッフの日常をプレスリリースで配信しても意味がないですし。
吉田 私たちがプレスリリース基準として設けていることは、「企業が主体の新たな行動もしくは成果であること」です。ニュースの新規性も大事なので、直近1カ月以内の、企業としての新たな行動を配信する。そのため、広告との違いで、同じ内容で再告知することができません。メディアの方が報じたくなるような、新しいニュースを届けることが前提にあるからです。
――反響なかったからもう一回、はなし?
吉田 お控えいただいています。やはりニュースという言葉の通り、新たな情報を受け取る方への心象があまりよくないものになってしまいます。かえってメディアや生活者との関係性を毀損してしまう可能性があるので、基準を設けています。
――パブリックリレーションズ的によくないぞと。
吉田 その通りです。
――ではプレスリリースに向いているかどうかを判断するためのコツはありますか?
吉田 私たちがよくお伝えするのは4象限で考えることです。①事業内容、②組織、③新しく行うこと、④その成果。この4つの軸で考えると、事業×行動なのか、組織×成果なのかで分けることができます。新商品の発売であれば事業×新しい行動になり、アワードの受賞であれば、事業×結果、または組織×結果になります。出したい情報がどこに当てはまるのか、または当てはまらないのか、を考える際に参考になるかと思います。
大反響! 各メディアで取り上げられた「空っぽの缶」のプレスリリース
――PR TIMESで配信したプレスリリースで、反響がすごかったものを教えてください。
今井 側島製罐(そばじませいかん)株式会社の「【老舗缶屋の挑戦】「いつか一緒におしゃべりしようね」親子の絆を深める缶”Sotto”新発売!」です。昨年からPR TIMESが始めた「プレスリリースアワード」で受賞したリリースなのですが、簡単に紹介すると、中身の入っていない「缶だけ」を発売するというものです。ウェブからテレビまでいろいろなメディアで取り上げられました。
――ただの「缶」が話題に……?
今井 そうなんです。『日経クロストレンド』では「100年企業のヒット商品開発術 空っぽの「缶」が2970円で売れる」という見出しで掲載されました(2022年10月6日)。そのほかこれまでにテレビ6件、新聞20件を含む70件の取材があったと聞いています。売り上げも発売当初から3日間で100万円以上、完売で2カ月待ちなど、反響はすごかったみたいですね。
取材が殺到した最大の理由は、背景のストーリーがしっかり盛り込まれていることでした。創業110年以上の老舗下請け缶メーカーが、親子で思い出を入れられる缶を作ったという話なんですが、その物語が興味をそそられる内容になっているんです。
プレスリリースの最初の小見出しが「20年で年商が1/3に減少し、苦境に立たされる老舗缶屋」。ふつうの新商品のプレスリリースなら、「こんなかわいい缶を発売します」「こんなシーンで使ってほしい」という内容が最初に来てもいいはずなのに、自分たちの苦しみをウソ偽りなく赤裸々に語るんです。逆境からスタートし、後継ぎが戻ってきて新しいビジョンを掲げて経営の再スタートを切った。
商品開発の裏側に、どんな状況で、どんな思いで作ったのかがしっかり込められています。最初にこうしたストーリーが入っていると、目に留まりやすくなるんですね。また、6代目の後継ぎが熱い文章を寄せてくださっています。本人が語っているので、メディアの人も「この人に取材できるんだな」と想像できますよね。
――なるほど。もっと話を聞いてみたいと思わせる内容だったと。
吉田 そうですね。プレスリリースでは情報を隠しすぎてはいけないことも大事だと思います。「この人に取材すればもっと深く話が聞けそうだ」という要素がプレスリリースからまったく見えないと、取材するハードルが高くなってしまいます。だから「取材を待つからリリースには載せないでおこう」というのはもったいないですよね。
2021年から始まったプレスリリースアワード。PR TIMESのプレスリリースだけではなく、世の中に発信されたすべてのプレスリリースを対象としている。世界で初めてプレスリリースが発信された日を記念して制定された、10月28日「プレスリリースの日」に行われた。
プロが添削! 注目されるプレスリリースの書き方
――ここからは、注目されるプレスリリースの書き方ということで、実際に添削していただきながらポイントの解説をお願いします。事前にサンプルとして架空のプレスリリースを作成しました。
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吉田 プレスリリースは①タイトル+サブタイトル、②リード文、③画像、④本文、⑤連絡先が基本的な構成です。前提として、プレスリリースを読んでもらうには2つの大きな壁があります。一つが「①タイトル」。そしてもう一つが「②リード文、③画像まで含めたファーストビューの情報量」です。この2つがしっかりしているとくわしく読んでみようと思っていただきやすくなります。では一つずつ見ていきましょう。
――お願いします!
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①タイトル+サブタイトル
・タイトルは50文字程度で結論とメディアフック(大事なキーワード)を伝える。そして大事なキーワードはなるべく前方へ。
・サブタイトルはタイトルの補完という位置づけ。タイトルに含められなかった内容を盛り込む。
吉田 これは新刊告知のリリースで、タイトルには書籍名だけが書かれていますね。もちろん商品名は通常入れる要素ですが、ニュースバリュー(※)はそれほど高くありません。ですから、「鬼退治から学ぶビジネス成功の秘訣とは?」のように、この本がどういう本で、何が学べるのかといったイメージがわく言葉を入れたほうがいいと思います。
また、大事なキーワードを前に置く理由は、メールの受信トレイなどを見ていただくとわかりますが、表示できる文字数に限りがあるためです。
サブタイトルは、タイトルの補完なので必ずないといけないわけではありませんが、新刊の発売に合わせてツイッターキャンペーンを実施するとのことなので、そのことを入れてもいいと思います。あくまでもタイトルは新刊の内容だけに絞り、サブタイトルでキャンペーンも補足するといいと思います。
※PR TIMESでは「5W2H×メディアフック・6つの感情=ニュースバリュー」と定義。季節性、トレンドに沿った商品にもかかわらず、これらがプレスリリースの中で表現されていないと、メディア関係者の目に留まる可能性が低くなってしまう。くわしくは「PR TIMES MAGAZINE」でも解説している。https://prtimes.jp/magazine/media-hook/
②リード文
・5W2H(※)を入れて、1~3文(250~300文字)で本文の内容を簡潔にまとめる。
・リード文だけでプレスリリース全体の内容が理解できるように。
・特にタイトルに入れづらいWhyやHowを明確に。
吉田 続いてリード文ですが、このままだと少しさびしいので、5W2Hに沿ってもう少し概要を入れたいですね。また、商品紹介ページのURLがあれば、リード文の最後に入れることをおすすめしています。というのも、このリード文の下に③画像を入れるのですが、画像周辺は比較的クリック率が高いからです。
※情報整理で抑えるポイントが、5W2Hを過不足なく記載すること。その中で、企業ならではのことや、担当者にしかわからないことはWhyにつまっていることが多く、第三者は知りえない部分こそ取材したいと思ってもらえる部分になる。記事にするときに必要な内容として、いつ(When)どこで発売されるのか?(Where)も忘れずに。5W2Hは、Who(誰が)、What(何を)、Where(どこで)、When(いつ)、Why(どうして)、How(どのように)、How much(どのくらい)。
③画像
・利用シーンを想起させる画像を1枚載せる。
・メディアが使いやすい画像を複数枚入れる。
吉田 プレスリリースの画像は、メディアの方から画像がないと記事にできないというお声をいただくほど重要な要素です。ウェブメディアに顕著ですが、記事に画像を必ず1点入れるといった決まり事がある場合も多い。今日中に複数の記事を上げなきゃいけないというとき、「商品も内容もいいんだけど、画像を取り寄せる時間がないから優先度を下げよう」と判断されてしまう可能性があるんです。ですから、画像は必ず入れるようにしたいですね。
また、画像を入れることで、商品やサービスの魅力が伝わりやすくなり、大量のプレスリリースから情報を探しているメディア関係者に端的に情報を伝えることができるというメリットもあります。
画像の注意点を一つ挙げると、画像に説明の文章をたくさん入れないことです。媒体のトーン&マナーと合わないとか、広告色が強くなってしまうといった理由で使われなくなってしまいます。ウェブメディアでは本文をコピペして記事にすることも少なくないので、テキストで残っていないと手間がかかるという声もありますね。
④本文
・要点→内容の説明→補足という逆三角形を意識する。
・知識ゼロの人でも理解できる情報をまとめる。
・数字やグラフ、データなどの根拠を明確にする。
・担当者のコメントを入れる。
吉田 リッチコンテンツ化しているという状況をふまえると、画像を入れれば印象は変わるかもしれませんが、もう少し情報を足したいですね。逆三角形の構成を意識して、メディアがニュースにするときに必要な情報を最初に入れます。
たとえば実際にこの本を読んでどんな教養が得られるのかといった具体例を入れたり、新刊のリリースでは実際の見開きページの画像を入れることもよくあります。実際のページを見ると、おもしろそうだから読んでみたいなという気持ちを引き出すことにもつながりますね。
また、著者や担当者のコメントを盛り込むのはぜひオススメしたいです。この本で言えば、なぜ『ももたろう』を題材にした本を作ろうと思ったのか? 著者のコメントを入れたり、編集者目線のコメントを入れてもいいと思います。「教養に対する需要が増えていて、出版社としてもこのあたりの売上が伸びている」といったリアルな数字を交えながら紹介できればより説得力も増します。
そのほか、きび団子のレシピを掲載するなら、料理写真や監修者の料理家の方の紹介なども入れてもいいですね。掘り下げたいポイントをたくさん用意しておくことで、掲載確率を上げていくことができますから。
⑤連絡先
・企業概要(会社名、住所、代表者名、設立日、事業内容)を入れる。
・問い合わせ先(会社名、担当者名、部署、電話番号、Eメールアドレス)を入れる。
吉田 広報担当の役割は窓口、メディアと実際にリレーションをつくることなので、連絡が取れる広報担当の個人名まであったほうがいいですね。そして電話番号とEメールアドレスを両方入れる。リリースを出した日は、いつ連絡が来てもいいように備えておくことも大事です。せっかく問い合わせたのに電話もつながらない、メールの返信もないでは記事化のチャンスを逃してしまいます。
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――大変参考になりました。いただいたご指摘をもとに、こんなふうに変えてみましたがいかがでしょうか。
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吉田 タイトル・リード文・画像の3つでこの書籍の特徴が伝わりやすくなったと思います。実際にプレスリリースや記事を読んで書籍を買いたいと思った方が書店で探しやすいという点でも、画像があった方が良いことがイメージできるかと思います。また、編集者の方のコメントがあることで、出版社からのプレスリリースである意義がより出てきますよね。
一つお伝えするとすれば、リード文の「2023年にこそ」がややふわっとした印象です。昨今の時代背景を踏まえた上での「2023年にこそ」であれば、その内容を加えられるとよりWhyの部分が明確になるかと思います。
※冒頭でも説明したとおり、これは架空のプレスリリースです。実際にこの書籍が発売されることはありません。著者名やYouTubeチャンネルも存在しませんので、ご注意を!
最後に補足情報をいくつか
――リリースの配信に適したタイミングはありますか?
吉田 リリースの配信タイミングは自由に選べますが、オススメしているのは平日の火~木曜、午前中~14時ぐらいです。メディアの皆さんが比較的情報収集に当てやすい時間帯とお聞きしています。即時性を大事にするウェブメディアの場合なら、午前中に情報を集めてすぐに記事を書く、というスケジュールを組むことが多いので、午前中に出すようにしたり。
――先ほどのリリースは4月に発売するという仮定で作成したのですが、今(取材時点、11月末)配信するのは早すぎますか?
吉田 載りたいメディアによります。雑誌なら1~2カ月前倒しで動くと思いますから早めに出す必要がありますし、ウェブメディアの場合であれば、今回のリリースのように4月1日発売なら、前の週にリリースを配信しても翌週に記事になる可能性があります。
対メディアで補足すると、PR TIMESは一般公開が前提です。そのため、広報担当であれば、メディアと個別に関係を構築する努力は引き続き重要です。たとえば掲載してほしい雑誌があるなら、前もってお知らせしておくといったように、先行でご案内するメディアと一般公開を分けるというのは一つの手だと思います。
――プレスリリースを1回だけ配信してやめてしまうケースはありますか? 期待した反応がないなどの理由で。
吉田 そういうケースもあります。プレスリリースを発信する目的が多様になってきているので、その効果に対する反応も本当にさまざまです。実際、マーケティングやブランディング、リクルーティングなど、いろいろな領域で効果を生み出す可能性があります。ただ前提として、プレスリリースは発表内容、その元となる行動や成果が、発信効果を決定づける最大の要素と言えます。
――なかなか反応が得られないときはどう改善していけばいいでしょうか。
吉田 私たちがオススメするのは、実際に載りたいメディアを見にいくことです。同業他社はどんな切り口で掲載されているのか、メディアの傾向を調べるんです。可能であれば、プレスリリースと実際の記事を見比べてみる。すると、タイトルのつけ方や、リリースのどこに価値があると判断したのか、といったことがわかるようになります。
そのほか、PR TIMESでは平日に勉強会も開催しています。「どういう内容でプレスリリースを配信できるのか」や「実際に作成するときのポイント」「効果測定はどうすればいいか」など、曜日ごとにテーマを設けています。水曜日は、配信したリリースに対して担当講師が直接フィードバックする内容になっているので、ぜひご相談いただければと思います。
――業界をけん引するPR TIMESがこれからどんなことを仕掛けていくのか、最後に少しお聞かせください。
吉田 最近、地方からの発信に力を入れています。情報の中心はまだまだ大都市圏で、PR TIMESに登録していただいている企業も首都圏が中心なんですね。
今井 東京が6割以上を占めているんです。
地域の新聞社や金融機関との提携が進む。取引先なら6カ月で3回無料などのプランを用意。
吉田 そんな状況で、各地域の企業もそれぞれ取り組みをしていて、そこから配信されるニュースが増えてほしいと思っています。私たちは「PRの民主化をしていこう」と考えていまして、プレスリリースで何かを発信するという文化がまだ根付いていないところをエンパワーメントしたい。
今井 私たちはニュースの主役を変えたいと思っているんです。スキャンダルや悲しいニュースが世の中にはびこっている中で、行動を起こした結晶として、自分たちの言葉で発信している情報――ポジティブなニュースを世の中に広めたい。そういう人たちがニュースの主役になれる世の中をつくっていきたいと思っています。
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