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  • 執筆者の写真Byakuya Biz Books

ガソリンスタンドなのに「ガソリンに頼らない」で年間1億円を稼ぐ理由

更新日:2023年4月12日


仲町台SS


ガソリンスタンドといえば、ガソリンを入れる場所――それが一般的な感覚のはずだ。ところが、“ガソリンに頼らない”ことで好調な営業利益をたたき出すのが株式会社MICの運営するSS(サービスステーション)である。一般的なSSの年間営業利益は1000万円前後あれば優秀と言われる中、直営店の仲町台SSは年間(2020年7月~2021年6月)の営業利益が1億円を突破。なぜMICはガソリン以外に注力するのか? 日本で唯一のガソリンスタンドビジネスモデルの中身を探ってみよう。



ガソリンスタンド業界の今


――ガソリンスタンドは徐々に減っているそうですね。


そうですね。全国で3万カ所を割り込んでいて、一番多かったときでその倍近くありましたから半減したことになります。原因として考えられるのは車離れもありますが、後継者不足が大きいです。地方のガソリンスタンドは高齢のオーナーが多くて、継いでくれる人がいないという話はよく聞きますね。


――MAなどはありますか?


MAは多いですね。ガソリンスタンドは結局、油という危険物を貯めてためておくための施設ということもあり、厳しい基準をクリアした構造になっています。そのため、更地にして転売するにも多額の費用がかかる。だから、そのまま買い取ってほしいという要望はあります。当社もそういう話をよくいただきますし、実際、新しくオープンした小田原店と新百合ヶ丘店はそのパターンですね。


西條洋平さん/株式会社MIC 開発第2チーム所属。直営SSのサポート、WEBサイトの管理・更新、車販売のサポートを行う


――ガソリンスタンドの減少はガソリンが売れなくなったことが原因でしょうか。


ガソリンの販売量は年々減少しており、2004年度のピーク時で6147万6000キロリットルでしたが、2019年度には4910万7000キロリットルと、約2割減となっています。一般家庭における世帯あたりのガソリン支出額は2008年には8万円までありましたが、2020年は4.2万円程度まで下がっているんです。


そんな状況に加えて、商圏の競合、原油の価格、人件費など、ガソリンスタンド経営が苦しい理由はいろいろと挙げることができます。中でもむずかしいのは集客ですね。ガソリンスタンドはどこにでもありますから、「なぜそこに行くのか」に付加価値をつけないと負けてしまいます。


ただ、価格で付加価値は出しづらいんです。ガソリンの値段は市場に左右される(仕入れ値が日々変動する)ので、自社の努力は限界があります。だからといって、PB商品を開発して特徴を出せるわけでもなく、アレンジしにくい商品と言えます。


それでも、「○○円引き」といったギリギリの割引をすることで、ガソリンスタンドに来ていただく。極端に言えば、ガソリンは集客するためのもので、そこから油外商品を販売して、利益を出していくんです。油外商品というのは車検や洗車、タイヤ交換、バッテリー交換など、ガソリン以外の商品を指すのですが、今のガソリンスタンド業界では油外商品を取り入れていかないと、売り上げは厳しいですね。



ガソリンスタンドがガソリン以外で稼ぐ理由


――1店舗あたり年間でいくらの利益があるのでしょうか。


当社では1店舗あたりの営業利益は平均2100万円で、来店客数は年間12万台ぐらいです。


――ガソリンスタンドの主軸はガソリンの販売だと思うのですが、油外商品は売上を補填する役割ですか?


当社SSではガソリンよりも油外商品が売上の柱となっています。年間の粗利益でお伝えすると、ガソリン・燃料の粗利益が3000万円、油外商品が2億2200万円なので、ガソリン・燃料の割合は低いですね。


――意外ですね……。


ガソリンは本当にガソリンスタンドにお越しいただくためのものですね。


――油外商品を取り扱うことになったきっかけは?


1996年に石油製品の輸入自由化にともなってガソリンの価格が低下して、利益が少なくなることが予想されていました。ガソリンスタンドの新規参入も増え、ガソリン販売だけでは生き残ることができないと判断し、当社代表の増田が油外商品で利益を出す方法を考えたのが事業立ち上げの経緯です。


――現在、力を入れている油外商品はなんでしょうか。


車検、レンタカー、車販売です。先ほどの1店舗あたりの年間平均粗利益で言えば、油外商品2億2200万円のうち、車検7320万円、レンタカー6000万円、車販売6600万円となっています。


――最初に取り組んだのは何ですか?


車検です。車検は一般的にはディーラーさんや車検専門店でお願いする方が多いと思いますが、当社では1995年、「ガソリンに頼らないガソリンスタンド」をコンセプトに仲町台SSをオープンしました。この店舗で「車検」がSSでも売れるビジネスモデルを証明するために車検の販売を始めたんです。


ニコニコ車検


――ガソリンスタンドは給油目的で行くところというイメージですが、そうしたお客さんに油外商品を売るのはむずかしそうです。


車検の場合、昔から販促としてワイパリングが行われていました。いわゆるポスティングのようなもので、車のワイパーに車検のチラシをはさむ方法です。ただ、「車に傷がつく」といったクレームがあったんですね。


そこで、当社ではミラーリングという方法を採ることにしました。お客様に迷惑がかからず、かつ目立つ場所として運転席側のミラーにはさむんです。私たちの直営のガソリンスタンドが関東で8店ありまして、店舗から近いエリアをミラーリングのエリアとして定めて実施しています。


アプローチ方法だけでなく、車検の価格は相場より低めに設定し、さらにガソリンの割引サービス、アフターサービスなど、「車検に気づいてもらう+お得なサービス」で差別化しています。


ワイパリング



レンタカー、車販売でガソリンスタンドに勝ち目はあるのか?


――ガソリンスタンドで車を借りられるというサービスは初めて聞きました。専門の業者もある中で、どう戦っていこうと考えたのでしょうか。


実はSSでのレンタカーサービスは当社が最初に始めた事業ではなく、他社の取り組みを参考にして行った事業です。レンタカー事業に参入したのは2008年、SSで持てあましていた車を活用する方法としてニコニコレンタカーを始めました。通常、レンタカーは旅行などのレジャーで利用していただくのがメインでしたが、当社は低価格&買い物などの生活利用を切り口にし、それがうまくヒットしました。現在、ニコニコレンタカーは全国1500店を超える格安レンタカーとして、多くのお客様にご利用いただくまでに成長しています。


粗利に関して、当社のSS店ではひと月平均500万円の粗利益を得ています。一部の加盟店様ではひと月1000万円の粗利益 を上げる店舗もあります。


――ニコニコレンタカーは分社化されているんですか?


そうです。分社化した理由はFC本部としての機能に特化し、ニコニコレンタカーの専門業務を行う必要があると判断したためです。


ニコニコレンタカー


――車の販売についてはどういう位置づけなのでしょうか。ガソリンスタンドと完全に別物なんでしょうか。


ガソリンスタンドとひもづいています。ガソリンスタンドで販売、買取もしています。ガソリンスタンドは敷地面積が限られているので、車を並べられるところは並べていますし、納車もできます。


――車販売に参入したきっかけを教えてください。


油外商品の拡大を狙い、SSで車両販売・買取をはじめたのがきっかけです。しかし、SSでの車両販売は難しく、油外商品として伸び悩んでいました。特に、店頭での商談時間の長さや車両の仕入れ、SSでの車販売の認知の低さなど、課題が多くありました。そんな中、車販売が油外商品の柱となった一番大きなきっかけがコロナ禍ですね。 コロナ禍の影響で、海外からの観光客が減りました 。空港に隣接しているレンタカーの店舗がいくつかあるんですけど、利用客がほぼゼロになってしまったんです。


その結果、スタッフの手が余り、車も稼働しない状況が続くことになり、コストだけが積み重なっていました。それなら稼働しないレンタカーを売ってしまおうと考えたわけです。手探りで中古車販売情報をWebにアップしたら、結構売れた。これは収益を確保できるということで、本格的に専門のチームを作って事業化しました。


――車販売は順調ですか?


車販売は順調に販売台数を伸ばしています。数字を挙げると、2013年220台、2014年277台、2015年481台、2016年729台、2017年845台、2018年920台、2019年896台、2020年1424台、2021年2521台となっています。


――好調な状況であえて課題を挙げるとするとなんでしょうか。


車両の仕入れですね。仕入れは車のオートオークションを利用します。毎日何百、何千と出品されるので、そこから走行距離や年式、車両の状態、車種、売れるラインナップを分析して、めぼしいものをチェックして仕入れています。最近は中古車のオークション相場が高騰しているため 、仕入れに苦戦しているのが現状です。そこで、オークションだけでなく個人のお客様などからの仕入れを強化し、仕入れのチャンネルを増やし課題に対応しています。

一部SSでは店頭でも購入できる


――これまでのガソリン・軽油販売と油外商品ではノウハウが異なると思います。成功するために必要なことはなんでしょうか。


スタッフの育成とオペレーションの標準化ですね。ガソリンスタンドで独自の接客やトークをなくして、みんなで統一して使える方法を作成して、研修やロープレで学んで実践しています。


――属人性の強い方法だと効率が悪いわけですね。


車検に関してお客様にどのようにアプローチしてどういったことを伝えるのか自分なりの方法を考えて実施するスタッフもいました。ところが、この方法だと身につくまで時間がかかってしまうことと、他人に伝えることの難しさが出てきます。


私も車検の予約を取る研修を行いましたが、自分なりの方法で取り組んだ際にはほとんどお客様から車検予約を取ることができませんでした。逆に誰にでも統一して使える車検獲得の方法を学び実施した結果、すぐに車検予約を獲得できるようになりましたね。


――今後、力を入れる、または伸ばしていこうと思うのは?


車検と車の販売ですね。まだまだ高いポジションを狙えると思っています。車検に関してはWEBやミラーリングでの集客、店頭での車検対象車へのピンポイントな声掛け、当社の強みである事前点検を行います。お客様のお車をしっかり点検し交換やメンテナンスが必要なパーツを提示します。そこでお客様に安心・安全をしっかり伝えることでまだまだ車検を伸ばすことができるはずです。


車の販売に関しては車仕入れの専門部署を立ち上げたので、質の良い車を大量に仕入れること、車のアピール方法、リースを交えた販売方法を駆使して伸ばすことができると考えています。


――従来のガソリンスタンドからはずいぶん幅広いビジネスモデルですね。


たしかになかなかないスタイルですね。なので、当社としては、そのノウハウを他社のガソリンスタンドに提供するコンサルティング事業も手掛けています。今のままだと先行きが不安だと思いますから、油外商品に参入する方法を広めているところです。


――独自のビジネスモデルを広めてしまって大丈夫なんですか?


ガソリンスタンドの店舗数は全盛期に比べ半数以下まで低下しています。当社が作り上げた油外商品のビジネスモデルを広めることで、当社だけでなく、ガソリンスタンド業界全体を盛り上げていきたいと考えています。その中で当社のニコニコレンタカー、ニコニコ車検、ニコノリをより多くの方々に利用していただき、車に関わるお手伝いができればと思いますね。

 

株式会社MIC

https://www.mic-info.co.jp/

ニコニコレンタカー

https://www.2525r.com/

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