検索
  • Byakuya Biz Books

発売50周年を迎えた「ピップエレキバン」誕生と進化の歴史をたどってみた



1972年の誕生から50年を迎えた「ピップエレキバン」。肩こりをほぐすケアアイテムの代名詞的な存在である。そんな同社の看板商品について、「パッケージの数字って何?」という素朴な疑問から、パッケージで使ってはいけない言葉、歴史ある商品ならではの課題まで、さまざまな角度から掘り下げてみた。



まずは「ピップエレキバン」の素朴な疑問から


――「ピップエレキバン」はいくつか種類がありますけど、この数字は何を表しているんですか?


「ピップエレキバン」は現在、「80」「130」「MAX200」「for mama」の4 種類をラインナップしていまして、この数字は磁力の強さを表しています。正確にはミリテスラという単位なのですが、わかりやすく数字だけを残しています。


――「MAX200」のマックスは「すごい」的な意味ですか? 


日本のJIS規格で定められた家庭用磁気治療器の最大値を意味しています。200ミリテスラ以上の商品は法律で販売できないんです。


「ピップエレキバン80」「同 130」「同 MAX200」「for mama」


――「MAX200」を選んでおけば、最大の効果が得られるわけですね。


あまり磁気に慣れてない方や初めての方は「80」をオススメしています。というのも、体質によっては磁力の影響でちょっとクラクラしてしまったり、頭痛のような症状が出てしまったりする場合があるからです。


ですから、基本的にはご自身の症状に合わせて選んでいただくのがいいですね。当社が推奨する方法で使っていただければ、しっかり効果を実感していただくことができますよ。


――推奨する使い方とは?


コリのポイント(押してみて「少し痛い、気持ちいい」と感じる部分)とその周辺に貼ることと、コリの具合によって2~5日間を目安に使用することです。


当社の調査によると、使用方法によって満足度に差が出ることがわかったんです。たとえば、絆創膏と同じように貼って一晩、または1日で剥がしてしまう方は意外と多いのですが、その場合は満足度があまり高くない。一方で、当社が推奨する2~5日間貼る使い方をしている方は満足度が高かったんです。


――「ピップエレキバン」も絆創膏タイプだし、お風呂に入る前に剥がしてました。


絆創膏を何日も貼っていいという発想はなかなかないですよね。お風呂にそのまま入っても大丈夫とお伝えすると、驚かれることが多いですよ。


――よく見るとパッケージに書いてありますね……。


今年の1月にパッケージをリニューアルしたんです。もともと裏面には書いていたんですけど、こまかいところまでお読みにならない方もいらっしゃいますし、パッケージのわかりやすい表面に表記しました。


リニューアル前のパッケージと比べると、より正しい使い方にフォーカスされている


――「すぐ効く!」みたいな宣伝文句より、正しい使い方を入れることを重視したと。


そのほうが結果的に商品の良さが伝わると実感したからです。また、規制の厳しい業界なので、限定的な表現しか使えないことも影響しています。広告ではワンワードで耳に引っかかるような言葉を使いたい気持ちはあるのですが、誤認を招いたり、過大な表現になってしまったりするのは避けなければいけません。


――具体的にどんな言葉を使ってはいけないんですか?


「痛くなくなる」「痛みがとれる」「疲れが取れる」や、「貼ってすぐ効く」のような即効性もダメですね。パッケージに「装着部位のこり及び血行の改善」という言葉が書いてありますが、本当にこれしか認証はされてないんです。これ以上のこともこれ以下のことも言えなくて。 逆に言うと、効果が認められているからこそ、それ以外に言及することができないわけですね。


――これまで長い時間をかけて実証実験のようなこともされてきたわけですよね。その結果、実際に痛みや疲れが取れることがわかっていてもダメですか。


今の認証の範囲内では使えません。コリが改善した結果、痛くなくなると感じる人もいると思うんですけど、私たちとして言えるのはコリをほぐすという部分だけです。こうすればもっと伝わるのになあと思っても、その言葉が使えないことは多いですね。


伊賀遥香さん。ピップ株式会社 商品開発事業本部 ピップエレキバン担当。2012年入社。営業やマーケティングなど、幅広い部門での業務を経て、2021年より「ピップエレキバン」を担当。



米粒に着想を得た「ピップエレキバン」の開発


――「ピップエレキバン」は1972年に誕生して50年の歴史があります。どういう経緯で開発はスタートしたのでしょうか。


1968年に社内に開発センターという部署が立ち上げられたのが最初です。当社は藤本眞次商店という卸問屋で創業して以来、ずっと卸売業が経営の9割以上を占めています。そんな中であえて商品開発に進出したのは、当時、『流通革命―製品・経路および消費者』(林修司、中央公論社、1962年)という本が業界で話題になったことが影響しています。


これからの時代は問屋という業種は不要になっていくという「問屋無用論」が唱えられていて。当社の上層部もメーカーと小売店の間に入ってモノを流すという仕事だけでは価値を生み出しづらいと考えたんです。


ただ商品開発にあたっては、卸部門で扱う体温計や包帯、綿棒、血圧計といった医療衛生用品は避ける必要がありましたから、何かニッチで新しいものが求められていました。


――そして「ピップエレキバン」が誕生した?


最初に開発したのは「ピップエレキバン」ではないんです。生理用品やベビー用品などを作っていました。


実はシャンプーハットを開発したのはピップが最初。「フジちゃんシャンプーハット」と言って同社の現存する商品としては最も歴史がある。もともとは、子どもの顔に水がかからないようにするための商品だったが、最近では逆転の発想で、あえてシャンプーハットに穴をあけ、段階的に水に慣れさせる設計にリニューアルした


「ピップエレキバン」はそのあとですね。卸をしていると売れ筋の商品に関する情報が入ってくるんですけど、当時の開発担当者が注目したのは磁気ブレスレットでした。いわゆる健康アイテムとして流行っていたんです。そしてどういう形状にしようか考えたいたとき、ある社員が絆創膏に米粒を貼っていたのを見かけた。ただの民間療法だと思うんですけど、物理的な形もおもしろいし、磁石の部分も実現できるからということで、「ピップエレキバン」の原型になりました。

エレキバンは2年の開発期間を経て、絆創膏と丸い磁石の形状にたどりついた


――発売当初の反響はどうでしたか?


最初は売れなかったそうです。小売さんにあまり受け入れられなくて。また社内でも、本当に売れるのか疑う声もあったと聞いています。ただ、購入していただいたお客様にはすごく好評でした。直筆の手紙をいただいたり、菓子折りと一緒に手紙が届いたり。


――いつごろから売れ始めたんですか?


目に見えて売れ始めたのは1977年ぐらいですね。当社の会長を起用したテレビCMがきっかけです。広告費が限られていたので九州エリア限定で本数もそんなに多くなかったんですけど、会長がCMに出ているというインパクトが手伝って、じわじわと話題になりました。


会長は業界ではちょっと顔が知られていたので、会長に商品名を言ってもらうだけでもいいんじゃないかということでした。それが一般の方には新鮮味があったようです。


――過去の商品ラインナップを見ると、「DR」や「S」など、いろいろな種類を発売されていたんですね。


英語表記だとお客様に何を訴えているのか、どれが強いのか弱いのかもわからないという状況を生んでいました。ですからパッと見たときにまず数字で違いがわかるようにしました。


2013年に大きくリニューアルされ、数字表記に統一されていく


――これまでボツになってしまった商品はありますか?


ボツになったわけではないのですが、発売したものの短命になってしまった商品があります。「インナークリップ」という商品の前身に当たるもので、ブラジャーのヒモに磁石が入っている商品を発売したんです。


――ヒモだけ発売したんですか……?


ヒモを取り外せるタイプのブラジャーがあるので、それに付け替えていただくことで、肩甲骨の部分にちょうど当たるというアイデアだったんです。斬新で売れると思っていたんですけど、そもそも付け替えられるタイプのブラジャーを使っている方が、思ったより少なく……。


――その失敗(?)を生かして、現在の「インナークリップ」が誕生した、と。


そうですね。やはり自分のブラジャーに付けられないと意味がないので、ブラジャーのヒモに挟むという設計になっています。


苦い?経験を経て生まれた「ピップエレキバンインナークリップ」


――開発側と消費者のギャップって、発売してみないとわからないことがあるんですね。


そうですね。2020年に発売した「ピップエレキバン足裏バンド」という商品は、ヒールの高い靴やパンプスを履く女性に足の裏に張りやコリを感じる方が多いことに着目して開発しました。完全に女性向けという頭で作っていて、女性の足のサイズに合わせて、パッケージもピンクにして。ただ発売してみると、男性から「男性向けはないか?」というお問い合わせが多く寄せられました。そこで急遽、商品化を進めて、EC限定になりますが3月に発売しました。


女性向けに発売された「足裏バンド」(左)と急遽発売された男性向け(右)



「知ってる」から「買ってもらう」ために必要なこと


――「ピップエレキバン」の認知度は90パーセントを超えるそうですね。ライバル商品はありませんか?


「ピップエレキバン」は磁気治療器に分類されるのですが、市場規模はそれほど大きくなくてほぼ独占状態です。そのため、あえて言うなら外用消炎鎮痛剤、いわゆる湿布ですね。お客様が肩こりをケアしたいと考えたとき、湿布を選ばれる方が多いんです。そこで「ピップエレキバン」を選んでいただきたいなと考えています。


――なるほど、湿布ですか。


「ピップエレキバン」は「知っているけど使っていない」という方がけっこう多いんです。そこを突破したいと思っていて、一つカギになるのは、家族内口コミ――たとえばお母さんに勧められて使うようになったとか――です。購買の年齢層は40代以上が占めるボリュームが大きいので、若年層へのアプローチとして有効だと思っています。


そのほかにも、2001年、2019年には『ハローキティ』とコラボし、キャラクターをフックにして、まずは手に取っていただこうという意図がありましたし、最近では小容量のタイプも発売しています。通常品は12粒入りなんですが、6粒入りという少ない容量で、その代わりにお値段も抑えて。そうしたトライアルしやすい工夫は販促周りでよく行っていますね。


「ピップエレキバン」っぽくないイメージにあえて振ったCM。音楽とダンスのインパクトで、頭の中にできるだけ残し、いざコりに悩んだときにいかに早く候補に上がってくるか――そこの優先順位を上げていくのがねらいだとか


――よく民間療法的な、メーカー側の意図しない使い方ってありますよね。あれってどう思っているんですか?


SNSでエゴサーチしたり、Amazonのユーザーレビューも参考にしていまして、私たちも把握はしています。危険な使用方法でないかぎり、話題にしていただけるのはありがたいと思っています。SNS世代の方が「ピップエレキバン」について知るきっかけになりますし。ただ、メーカーとしては本来の使い方で効果を実感いただけるのが一番ありがたいですね。


――購入時の選択肢に上がったとき、「買う」ための最後のひと押しは何だと思いますか?


「ピップエレキバン」の強みはやはり信頼感だと思っています。磁気治療器として効果が保証されていますけど、その点があまり知られていないと感じることがあります。自社でも研究していますし、もっとオープンにしていくことで、安心材料として皆さんに知っていただきたい。変なものとか、奇抜なものという見られ方ではなくて、本当に信用して自分から使ってみたいと思ってもらえるようにしていきたいと思っていますね。

 

https://www.elekiban.com/50thanniversary/

 

あわせて読みたい

コクヨの「BIZRACK」から考える、テレワーク時代の商品開発