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家族同席の会食は経費になるのか。税務署と揉めやすい支出の共通点

  • 執筆者の写真: 編集部
    編集部
  • 4月5日
  • 読了時間: 9分

更新日:4月19日

「取引先との会食だから大丈夫」「仕事で使うスーツだから問題ない」。そう考えて経費計上している支出ほど、税務調査では揉めやすいことがあります。家族同席の会食や高額な贈答品が問題になるのは、ぜいたくだからではありません。私用と事業用の境界があいまいに見えやすいからです。今回も『税務調査に負けない 最強の資産防衛』の著者・池田篤司先生に、税務署に疑われやすい支出の共通点と説明の土台になる記録の残し方を教えていただきます。



交際費が揉めやすいのは、ルールがないからではない


経費で一番揉めやすいのは、売上ではありません。社長まわりの支出です。会食、贈答品、スーツ、ゴルフ道具。経営者にとっては仕事の一部でも、税務署には私的な支出に見えることがあります。問題は、税務署が見ている線引きと、経営者の感覚が一致しないことです。

 

こうした支出の中でも、特に論点になりやすいのが交際費です。会食や贈答品はもちろん、相手先との関係や目的があいまいだと、税務調査で私用ではないかと疑われやすくなります。では、どこで線引きが分かれるのでしょうか。

 

「交際費には、意外に思われるかもしれませんが、明確なルールがあります。資本金1億円以下の法人であれば、年間800万円まで、または接待飲食費の50%まで損金算入できます。つまり、ほとんどの中小企業では実質的に年間800万円という上限が目安になります。このルールが広く知られているせいか、『800万円を超えなければ大丈夫』という理解が広まりがちです。しかし実際には、上限の範囲内であっても、仕事用と私用の線引きがあいまいなら問題になります」(池田さん)

 

池田さんによると、税務調査で実際に問題になりやすいのは金額よりも中身です。仕事用と私用の線引きがあいまいなまま計上していると、指摘を受けやすくなるといいます。

 

たとえば、同じ飲食店に毎週行っていれば、税務署は何人で行っているのかを店側に確認することがあります。「○○旅館 20万円」という領収書があれば、税理士も事前に経緯を確認するでしょう。また、商品券を会社の経費で計上している場合は、税務調査で相手先と目的を必ず確認されます。相手先があいまいでは説明できません。

 

家族だけで食事をした場合は、事業に該当しないので除外すべきです。ただ池田さんは、取引先と家族を交えた交流が仕事上の関係づくりの一部になるケースもあると言います。その場合は、記録を残しておけば交際費として説明できる余地があります。

 


税務署と経営者の感覚がズレる理由


交際費は、得意先や取引先、その他事業に関係のある者等に対する接待や贈り物をしたときの費用を指します。適用される範囲は広く、飲食や贈答だけでなく、紹介料なども含まれることがあり、取り扱いが簡単ではありません。

 

「経営者の皆さんは、人間関係づくりや紹介の場も仕事だと考えます。土曜日の会食も、休日のゴルフも、取引先との家族ぐるみの付き合いも、『これがあるから仕事が成り立つ』と感じています。一方で税務署は、私的流用の可能性から見にきます。土曜・日曜に仕事はしないという印象を持っていることもあり、そこで感覚のズレが生まれるんです」(池田さん)

 

実際にある個人クリニックでは、交際費の30%を否認されそうになったケースがあったとか。

 

「年間売上3億円、利益1億4000〜5000万円という堅実な経営で、交際費が年間1500万円を超えていたことに税務署が疑いを持ったんです。『医者がなんで交際費を使うんですか? 必要ないですよね?』と決めつけられたのですが、実態は社交性のあるドクターが同業者や地元の経営者と積極的に交流していたもので、土曜・日曜の会食であれ、クリニック運営に関わる関係者とのものであれば、経費として計上できるはずのものでした」

 

感覚論では税務署と交渉できません。ズレを埋めるのは記録です。何のための会食か。誰と会ったか。その後の取引や商談につながったか。これが残っていれば、事業目的を後から説明できます。逆に、いくら本当の仕事上の会食であっても、記録がなければ証明のしようがありません。支出の事実よりも、説明できる記録があるかどうかが、税務調査での勝負を分けます。

 


家族同席の会食は、なぜ危ないのか


飲食に家族(子どもを含む)が同席していると、税務署から私的流用を疑われやすくなります。「家族も同席しているので、仕事用の食事ではないですよね?」と言われるのです。

 

家族だけで食事をしたなら、事業に該当しないので除外すべきです。この点は明確です。ただし、家族が同席していれば即アウトと決めつけるのは、現代のビジネス事情に対応できていない見方でもあります。

 

「今の時代、取引先と家族を交えて交流することはめずらしくありません。これから初めて取引する業者、奥様からのご縁、子どもの学校関係で仕事の繋がりが始まったなどのケースもあります。毎月、家族交流をしているのであれば論外ですが、事業上の関係がある相手先と家族ぐるみで交流する場合は、記録と説明があれば交際費として認められる余地はあります」(池田さん)

 

重要なのは感情論ではなく、「誰と、何の目的で、どういう関係のある相手と食事をしたか」という事実関係です。本当に事業のための食事代であれば、支払頻度や金額にもよりますが、記録を残しておけば経費に計上できます。

 


20万円の毛皮のコートが問題になった事例


あるIT関連の会社に税務調査が入ったケースでは、交際費の中に「取引先の社長の奥様に、20万円の毛皮のコートをプレゼントした」という贈答品が計上されていました。

 

調査員が百貨店に確認すると、外商の担当者から「社長本人と奥様が来店され、コートは配送せずにそのまま持ち帰られました」という回答が返ってきました。これで調査員の疑いは確信に変わります。「奥さんと一緒に来て、購入したものを家に持って帰ったなら、それは奥さんの買い物でしょう」というわけです。

 

社長の説明は「自分では女性の趣味がわからないから妻に来てもらい、選んでもらった。家に持って帰ったのは、食事を約束したのでそのときに渡すため」というものでした。調査員はそれでも納得せず、「いつ、どこで、何人で食事をしたか」を確認し、最終的に取引先の社長に直接電話で確認を取りました。その結果、取引先の社長の回答によって事実だったことが確認でき、ようやく認めてもらえました。

 

「このケースが示しているのは、『20万円という金額だから問題になった』ということではありません。購入の経緯、持ち帰り方、贈った相手との関係。これら事実関係の説明ができるかどうかが問われたのです」(池田さん)

 

高額でも、事業目的と事実関係を立証できれば争う余地はあります。逆に、安くても記録がなければ危ない。税務調査では、金額の大小そのものより、説明できるかどうかが問われるのです。なお、高額な贈答は、受け取る側にも税務上の論点が生じる場合があります。この点は個別事情で扱いが変わるため、実際に行う前に専門家へ確認したほうが安全です。

 


スーツやゴルフ道具の経費計上を税理士が止める理由


スーツ、靴、メガネ、ゴルフ道具やウェア。これらは経営者が「仕事で使うから」と経費計上したくなる支出の代表格です。しかし、多くの税理士がこうした相談に慎重なのは、税務調査で問題になったとき、交渉の余地がほとんどないからです。

 

共通しているのは「社長だけ」「役員だけ」になりやすいという点です。「スーツだからダメ」「靴だからダメ」ということではありません。社長個人の私物と見られやすく、事業との関連を説明しにくいものが多いのです。

 

ゴルフ代は取引先と行けば交際費になります。しかしゴルフ道具やゴルフウェアは別問題です。プライベートでもゴルフをする経営者であれば、仕事用か私用かの区別を証明することは非常に難しくなります。「スーツの内ポケットに会社のロゴを入れれば大丈夫」というような理屈を作ろうとする発想は、得策ではありません。

 

「交渉の余地がほとんどない支出に時間と労力を使うより、説明できる支出をしっかり積み上げるほうが、結果として会社の資産を守ることにつながります」(池田さん)

 


社長の経費で会社を守るために必要なこと


会食、贈答、出張。どんな支出でも、税務調査で確認されるのは基本的に同じ3点です。

 

相手先……誰に対しての支出か。氏名・会社名・役職があれば十分です。

目的……何のための支出か。「○○社との商談の前後」「新規取引先への挨拶」「紹介者へのお礼」など、一言で説明できる内容を残しておきます。

事業との関係……その後の取引や契約につながったかどうかまで記録できれば理想ですが、少なくとも「どういう関係の相手か」がわかる情報があれば、後から説明できます。

 

税務署が「これはダメ」と言っても、それがつねに正しいとはかぎりません。ただし、感覚論だけでは争えません。「自分は仕事で使っている」という主観は、税務調査の場では証拠にならないからです。

 

交渉の土台になるのは、相手先、目的、事業との関係、そして時系列の記録です。税務調査はケンカではなく、事実関係を確認しながら着地点を探す実務だと考えるべきです。

 


まとめ


社長の支出が税務調査で問題になるのは、ぜいたくだからではありません。私用と事業用の境界があいまいになりやすいからです。

 

家族同席の会食も、高額な贈答品も、「だから即アウト」ということはありません。大事なのは、相手先・目的・事業との関係を記録として残しておくことです。それがあれば、金額が多少高くても、事業目的を説明できます。

 

支出の種類より、事業目的と記録。この視点を持つだけで、税務調査への備えは大きく変わります。



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【話を聞いた人】

池田篤司(いけだ・あつし)さん

税理士法人池田会計事務所 代表

1981年生まれ、奈良県出身。税理士兼現代アートコレクター。芦屋大学を卒業後、父親の税理士事務所へ入所。芦屋大学初の税理士となる。国税局、税務署に29年間務めた父親の後を継いでからは、相続・事業承継、税務・会計業務から海外進出の支援、公益法人部署の立ち上げなど事務所の拡大に尽力し、業務や業種問わず幅広い顧客の経営課題に取り組んでいる。また、確かな実績が重要となる税務調査の立ち会い件数は1000件を超え、昭和、平成、令和の税務調査を知る税理士として、700社を超えるクライアントをサポートしている。

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