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「4年落ちの高級車で節税」は本当か。SNS節税術の落とし穴

  • 執筆者の写真: 編集部
    編集部
  • 4月5日
  • 読了時間: 6分

更新日:4月19日


SNSには、魅力的な節税情報があふれていますが、その手の情報ほど大切な条件が省かれていることが少なくありません。節税は「いくら減るか」で考えると失敗します。必要なのは、「税務調査で説明できるか」という視点です。この記事では、『税務調査に負けない 最強の資産防衛』の著者・池田篤司先生に「鵜呑みにすると危ない節税情報の見分け方」を聞きます。



なぜSNSの節税情報は危ないのか


「高級車は4年落ちの中古車を買え」「旅費規程を作って出張手当を活用しろ」。こうした“定番の節税ネタ”を、一度は見聞きしたことがある人も多いはずです。


ところが、SNSで広まる節税情報は、短い言葉で伝わりやすい反面、前提条件や例外が省かれやすい傾向があります。不特定多数に向けて発信するとき、大切なのは拡散しやすいわかりやすさです。個別のケースをていねいに検討したり、細部までカバーしたりすることは優先されません。


しかし、情報が少なくなればなるほど、判断を間違える可能性は高まります。その結果、前提条件を十分に確認しないまま実行し、税務調査で否認されるケースもあります。


「税務調査とは、納税者の申告内容が適切かどうかを税務署が確認する手続きです。会社や税理士が正しいと考えて申告していても、税務署が別の見方をすることはあります。だから節税は、“いくら減るか”だけで判断してはいけません。大事なのは、その支出や処理を税務調査で説明できるかーー税務調査は節税の“答え合わせ”なんです」(池田さん)



「4年落ちの高級車を買え」は、なぜ広まるのか


この節税策の根拠は減価償却にある、と池田さんは言います。


「事業で使う車は、購入時に全額を一度に経費にするのではなく、一定の年数に分けて費用化します。ところが、4年落ち以上の中古車は、新車より短い年数で処理しやすくなります。条件がそろえば、短期間で大きく費用計上できるため、利益が出た年の節税策として注目されやすいんです」


ただし、ここで見落とされやすいのが「スポーツカーかどうか」。4年落ちの仕組みは「減価償却」の話ですが、節税として認められるかどうかの本質的な論点は別にあります。それは、その車が事業に必要なものだと説明できるかどうかです。


「高級車を購入するのは、そもそも事業用(社用車)という前提があります。合理的な理由付けとしては、通勤目的で使用する、経営が好調であることを対外的にアピールするなどが考えられます。ベンツやBMWならまだしも、ランボルギーニ、フェラーリ、ポルシェとなると、その説明に無理が生じます。仕事用・私用の線引きが難しく、税務調査で認められない可能性が高くなるわけです」


重要なのは「高いからダメ」という話ではなく、用途の説明が弱いと危ないということです。金額だけなら、ベンツも同様に高額ですが、事業用車としての説明は通りやすい。一方、フェラーリは金額以上に「なぜその車が仕事に必要なのか」の説明がそもそも難しい、というわけです。


では、スポーツカーは一切経費に計上できないのか。池田さんはそれを否定しつつ、例外には、それ相応の根拠が必要と付け加えます。


「一つはラッピングです。社名や広告商品名をスポーツカーに施して宣伝カーにすれば、仕事用であることが明確になります。実際にランボルギーニにラッピングをして宣伝カーに使っていた経営者もいます。もう一つは、事業上の人脈形成という説明です。たとえば、富裕層の経営者が集まるコミュニティに参加し、そこから商談や紹介につながるのであれば、事業との関係を説明できる余地はあります」


ただし、池田さんは「こうした理屈は誰にでも使えるものではなく、自社の事業内容と結びついているかが問われる」と話します。問題は、高級車のような目立つ支出に限りません。もっと身近で、多くの会社が取り入れやすい旅費規程でも、同じ誤解が起きています。



旅費規程も「作れば得」ではない


出張には電車、タクシー、宿泊、食事など、さまざまな出費がかかります。旅費規程を設けて出張手当を支給すると、会社は出張手当を全額経費にでき、受け取る従業員は常識の範囲内の金額であれば非課税所得として扱えます。従業員は所得税の対象にならず、会社側は経費計上できる。この節税効果があるため、経営者に人気があります。


「ただ、『旅費規程を作って、とにかく使え』というアドバイスを鵜呑みにするのは危険です。特に多い誤解が、『日当を多めに設定して、かつ、出張にかかった経費もすべて会社の経費に入れてしまう』というものです。日当をお小遣いだと考えてしまうことが原因ですが、日当は自由に使えるお金ではなく、あくまでも出張にまつわる身の回り品や食事代などを補助するためのものです。常識の範囲内で設定することが必要ですね」(池田さん)


日当の水準を考える際には、公的機関の旅費規程なども参考になります。もっとも、税務上は一律の金額で決まるというより、「通常必要と認められる範囲かどうか」で見られます。


さらに、旅費規程を社長や役員だけに適用する形は避けるべきです。全社員を対象にした規程でなければ、私的な利益供与と見られるおそれがあります。



結局、節税で見るべきは「金額」ではなく「説明可能性」


節税策を検討するとき、池田さんは検討するべき3点を挙げます。


①それは事業に本当に必要か

購入目的・使用目的が事業と直結しているかどうかを確認します。「節税になるから買う」という動機だけでは、税務署への説明が苦しくなります。


②第三者に説明できるか

税務調査官に口頭で聞かれたとき、事業上の必要性を論理的に説明できるかどうかが問われます。説明に詰まるようなら、リスクがあると考えてください。


③記録を残せるか

使用日時・目的・相手先など、事業用途の証拠となる記録を継続して残せるかどうかも重要です。


税務調査=答え合わせという視点に立つと、無理な経費計上より、説明できる支出の積み上げのほうがはるかに強いことがわかります。SNSで拡散しやすい節税テクニックは、目を引くものほど「使いやすい」とは限りません。むしろ条件が多く、説明のハードルが高い。それを一部だけ切り取って実行すると、税務調査で否認されるリスクを抱えることになります。


新しい節税策を見つけたときは、「いくら減るか」ではなく、「事業との関係を説明できるか」「証拠を残せるか」を先に確認する。池田さんの話を聞くと、それが遠回りに見えて、実は最も安全な順序だとわかります。



まとめ


SNSの節税術は、一部は本当のことを言っています。4年落ちの高級車も、旅費規程も、条件がそろえば有効な節税策になります。


ただし、条件を省いてしまうと話が変わります。高級車は「事業との関係を説明できるか」が問われ、旅費規程は「日当の性質を正しく理解しているか」「全社員に適用しているか」が問われます。


節税を考えるとき、「いくら税金が減るか」より先に「税務調査で説明できるか」を考える。この順序を守るだけで、余計なリスクはかなり防げるはずです。



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【話を聞いた人】

池田篤司(いけだ・あつし)さん

税理士法人池田会計事務所 代表

1981年生まれ、奈良県出身。税理士兼現代アートコレクター。芦屋大学を卒業後、父親の税理士事務所へ入所。芦屋大学初の税理士となる。国税局、税務署に29年間務めた父親の後を継いでからは、相続・事業承継、税務・会計業務から海外進出の支援、公益法人部署の立ち上げなど事務所の拡大に尽力し、業務や業種問わず幅広い顧客の経営課題に取り組んでいる。また、確かな実績が重要となる税務調査の立ち会い件数は1000件を超え、昭和、平成、令和の税務調査を知る税理士として、700社を超えるクライアントをサポートしている。


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