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「家族だから」と干渉してくる親がしんどい|カレー坊主のお悩み相談

  • 執筆者の写真: カレー坊主
    カレー坊主
  • 2 日前
  • 読了時間: 5分

【カレー坊主のお悩み相談 #06今回の相談は、「家族だから」という理由で干渉してくる親に疲弊し、これ以上嫌いにならないために家を出た、というお悩みです。身勝手な親に振り回される苦しさと、それでも家族を完全に切り離せない葛藤。カレー坊主さんが、自身の父親との実体験を交えながら、家族に対する「執着」の扱い方と、心の距離の置き方について答えます。



【相談】

家族と馬が合いません。趣味も価値観も合いません。私が本当に辛かったときは放置していたくせに、家族だから当然みたいな顔をして干渉してくるのが許せません。これ以上嫌いたくないから、一人暮らしのために家を出ました。年一回くらいは帰省しないとうるさいのでお盆に帰りますが、帰省のたびに嫌な思いをします。今年は家族旅行の行き先を勝手に決められ、行きたくもない国へ行くために、遠方に住んでいる私だけ前泊・後泊含め面倒な手間をかけさせられています。キャンセルしてくれと言っても親は「する」と言いながらしませんでした。どれだけ言いつくろっても、自分たちのやりたいことが一番な人たちです。もう家族と関わりたくありません。どうしたら良いでしょうか?20代、女性、事務職、はにわさん



【希望する回答の「辛さ」】

甘口



【カレー坊主さんの回答】

ある日、父が失踪しました。


いや「失踪」って書くとドラマチックですが、いつのまにか家にいない日が増えて、気づいたら本格的にいなくなっていた、という感じです。


実家は米屋でした。父はずっと、経営に苦しんでいました。本人は外ではそれを一切見せず、「人の笑顔のために働いているんだ」というのが口癖でした。子どもの頃の私は、それを素直にかっこいいと思っていました。ただ、人の笑顔のために走り回っているうちに、父自身はあんまり笑っていなかったし、家の中は、じわじわ困っていました。


そのうち、母から聞きました。父が自己破産するらしい、と。


こんなふうに書くと、険悪だったみたいですが、全然そんなことはなくて、社会人になってからも、二人でココイチによく行きました。父はいい歳をして、ライスを600グラム頼んでいました。600グラム。普通の大盛りの倍です。初めて見たとき、私はメニューを二度見しました。父は何食わぬ顔でそれを平らげ、福神漬けまできっちり食べきって、「ごちそうさま」と言って店を出ていきました。あの背中は、ちょっと、尊敬していました。


それから十年くらい経って、両親は正式に離婚しました。離婚協議の立ち会いで、父と十年ぶりに再会しました。父はほとんどしゃべりませんでした。私もしゃべりませんでした。書類にサインをして、頭を下げて、父は帰っていきました。


それ以来、会っていません。私の息子、つまり父にとっての孫の顔も、父は知りません。どこかで、元気でいてくれたら。いつかまた、二人でココイチに行けたらいいな、とは思うんですけどね。さすがにもう600グラムは無理でしょうけど。


ハナレグミの「家族の風景」という歌に、友達のようでいて他人のように遠い、愛しい距離がそこにはいつもあるよ、という一節があります。この一節、いいんですよね。家族って、近すぎても遠すぎてもうまくいかなくて、ちょうどいい距離が、家によって、全然違うんだと思います。


さて、はにわさん。


家を出たこと、年に一度は帰っていること。ちゃんと頑張っておられます。「これ以上嫌いたくないから家を出た」。許せないのに、完全には切らない。距離を取ることで、心の中の家族を守ろうとしている。ものすごくやさしい選択ですよ。


距離を取ることは、逃げではありません。愛し方の、ひとつの形です。友達よりも少し遠く、他人よりも少しだけ近い。そういう宙ぶらりんな場所に、家族を置いておいていいんです。


旅行の件は、腹が立っていいです。「する」と言って、しない、あれ、本当に疲れますよね。期待した自分がバカみたいに思えてくる。でも、全部を引き受けなくていいんです。前泊、後泊、移動の手配、行きたくもない国への往復。全部、はにわさんが払っているコストです。航空券代だけじゃなくて、心の手数料が、じわじわ取られている。「今年は行けません」と言っていいんです。親が不機嫌になっても、それは親の問題です。はにわさんが責任を持つのは、親の機嫌ではなく、自分自身の心です。


ちょっと仏教の話になるんですが、仏教では苦しみの原因を「執着」と説きます。


「家族はこうあるべき」

「親ならわかってくれるはず」

「いつか変わってくれるかも」


いつのまにか執着ひとつひとつが、知らないうちに心の重りになります。諦めるのとは違います。「そういう人たちだ」と、見るだけです。嫌いな気持ちは、嫌いなまま置いておいていい。


思えば、父の「人の笑顔のために」も、家の外ばかり向いていた口癖でした。はにわさんのご両親の「自分たちのやりたいことが一番」も、どこか似ているのかもしれません。そういう人は、変わりません。変わらない人を変えようとするのは、いちばん体力を使う執着です。その体力、自分のために使ってください。昼寝でも、推し活でも、平日の昼間にスタバで何もしないでもいい。とにかく、自分に使ってください。


正直に言うと、私もまだ、父のことを完全には消化できていません。「元気でいてほしい」と書きながら、本当にそう思っているのか、自分でもよくわからない日もあります。たぶん、はにわさんも、揺れていいんです。今日許せなくて、明日ちょっと懐かしくて、また明後日嫌いになる。


まあ、なんというか。

家族って、面倒ですよね。


でもね、面倒なままで、距離をとるのもいいと思います。

無理せずお過ごしくださいね。



【答えた人】

カレー坊主

浄土宗僧侶/一般社団法人仏教カレー協会 理事

1984年生まれ、長崎県大村市出身。一般家庭に生まれ育ち、大学を卒業後すぐに縁あって僧侶の道へ進み、2008年に浄土宗教師となる。現在、 浄土宗長安寺(長崎県大村市)に勤務。誰もが気軽に参加できる無料イベント「いきなりカレー」や、地域の子ども食堂の運営にも参加し、地域社会と仏教を結びつける活動に力を入れており、カレー好きな僧侶 「カレー坊主」として、SNSを通じて日々の活動や仏教をユーモアを交えながら発信している。好きな言葉は「とりあえず、やってみる」。著書に『カレー坊主が教えてくれた みんなの仏教入門』(白夜書房)がある。


X(Twitter):@curry_boz


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