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6坪・月商600万円。「コンセプト9割」のワインバーに学ぶ繁盛店のつくり方

  • 執筆者の写真: 編集部
    編集部
  • 1 日前
  • 読了時間: 9分

大阪・天満に、6坪のワインバーがあります。席数は28席。ソムリエはいません。内装はスケルトン物件にビニールシートを張っただけ。ビールもハイボールも置いていません。それでも、このお店の月商は平均600万円を超え、坪あたりの売上は100万円に達します。お店の名前はluvwine(ラブワイン)。ワインだけを扱う小さなワインバーです。なぜ、小さな店がこれほど大きな数字を出せるのか。その答えは、立地でも運でも、店主の個人的なカリスマ性でもありません。それは、「コンセプト」でした。この記事では、オーナーである東口浩二さんの著書『1坪で月100万円稼ぐ 繁盛店の作り方』をもとに、繁盛店のつくり方を解説します。



繁盛店の秘密はコンセプトが9割


繁盛店をつくる上で欠かせない問いが2つあります。

 

・選ばれ続ける理由は何か?

・利益を生む仕組み化ができているか?

 

東口さんが経営するluvwineは、この2つを徹底して追求することで、6坪という極小スペースで驚異的な収益性を実現しています。では、東口さんは具体的に何をしているのか? そのカギとなるのが、コンセプトです。

 

①選ばれ続ける理由は何か?→コンセプトを作る

②利益を生む仕組み化ができているか?→コンセプトに沿った利益構造を設計する

 

「繁盛店をつくるのに、センスや才能はそれほど重要ではありません。コンセプトと、それを利益に変える仕組みさえあれば、小さな店でも信じられない数字が出せるんです」(東口さん)

 

順を追って解説します。

 


①選ばれ続ける理由は何か?――コンセプトを作る


コンセプトとは、「なぜ、ほかでもなく、あなたの店でなければならないのか」への答えです。雰囲気や世界観のようなあいまいなものではなく、「誰に・何を・なぜその形で届けるか」を明確にしたものです。

 

luvwineには、2つのコンセプトがあります。本来、コンセプトは1つに絞るほうがシンプルで伝わりやすいのですが、この店は「商品の価値」と「体験の設計」という2つの軸を明確に持つことで、独自のポジションを確立しています。

 

コンセプト1つ目 「お気軽高級ワイン」

これは商品の価値を表すコンセプトです。ボトル1本が1万円クラスの高級ワインを、グラス1杯700〜1800円で提供する。「高級」なのに「お気軽」という、一見すると矛盾するような組み合わせがこの店の核心です。

 

高価格帯のワインを「手の届く贅沢」として提供することで、ワインに興味はあるけれど敷居の高さや価格に躊躇している層を引きつけます。

 

コンセプト2つ目 「日本一敷居の低いワインバー」

これは体験・空間を表すコンセプトです。ワインバーといえば、薄暗い照明、洗練された内装、知識豊富なソムリエーーそうしたイメージが「怖い」「くわしくないと、はずかしい」という心理的な壁をつくっています。

 

luvwineはその壁を徹底的に取り除くことを目指しています。ビニールシートの屋台のような空間で、ソムリエも不在。「ワイン嫌いでも歓迎」という姿勢が、これまでワインバーに足を踏み入れたことのない客層を呼び込みます。


luvwine天満店
luvwine天満店

「この2つのコンセプトが組み合わさることで、luvwineの最大の集客装置が生まれます。屋台のような気軽な店構え(入りやすさ)なのに、出てくるのは1万円クラスの高級ワイン(驚き)というギャップなんです」(東口さん)

 

このギャップは、一度体験した客を強烈なファンにし、口コミを生みます。「あの店、すごいよ」と人に話したくなる体験。それが「選ばれ続ける理由」の正体です。

 


コンセプトから逆算して「やらないこと」を決める


コンセプトが決まると、次に決まるのは「やること」ではなく「やらないこと」です。luvwineの経営判断を、2つのコンセプトから逆算してみましょう。

 

すでに紹介したとおり、luvwineがビールを置かないのは、「お気軽高級ワイン」というコンセプトを守るためです。簡単に言えば、ワインを飲まないお客様も来店するようになり、気づけば「普通の居酒屋」になってしまいます。「ビールも置いてほしい」という要望に応えることは、一見親切に見えて、コンセプトを壊す行為なのです。

 

そして、ソムリエを置かないのは、「日本一敷居の低いワインバー」というコンセプトを守るためです。専門家がいると、お客様は知識の差を意識してしまいます。ソムリエを置かないことで、敷居を下げながら同時に人件費も抑制できます。一石二鳥の判断に見えますが、その根拠はあくまでコンセプトにあります。



内装にお金をかけないのも同じです。「敷居の低い屋台」というイメージを守るために、豪華な内装は不要どころか有害です。お金をかけないのはコスト削減のためではなく、コンセプトを体現するための意思決定です。メニューを週替わり7種類に絞るのは、ワイン専業ゆえのオペレーション単純化と、「今週は何があるか」という来店動機の創出を両立させるためです。

 

このように、コンセプトが明確であれば、日々の経営判断に迷いが生まれません。「これはコンセプトに合うか?」という問いひとつで、判断できるからです。



②利益を生む仕組み化ができているか?——コンセプトに沿った利益構造を設計する


コンセプトが決まったら、次はそれを「利益を生む仕組み」に落とし込むことが必要です。luvwineのビジネスモデルは、シンプルな掛け算で成り立っています。天満店をもとに考えてみます。

 

月商=客数×客単価×稼働日数

2024年10月の月商は約634万円、最高月商は742万円です。6坪でこの数字を出せるのは、「高回転」「高密度」「ロス極小」「コスト抑制」の4つが組み合わさっているからです。

 

高回転=滞在1時間で2回転以上

28席に1日平均62人が来店するということは、1日あたり約2.2回転。平均滞在時間は1時間です。「サクッと飲んで帰る」スタイルを、空間の設計(あえて長居しにくいイスや配置)と提供スピードによって自然に促しています。ワインをゆっくり楽しむバーではなく、「ちょっといい時間を1時間だけ」という体験を売っているのです。

 

高密度=6坪に28席

坪あたり約4.6席という配置は、一般的なワインバーと比べてきわめて高密度です。家賃は1階路面店ですが、坪数が小さいため絶対額を抑えられます。少ない固定費のなかで高い売上密度を生み出せるのは、「小さい箱」にこだわったコンセプトあってのことです。

 

ロス極小=90mL・8杯取りの定量提供

ワインの提供量は1杯90mLと決まっており、計量器で厳密に管理します。ボトル1本から8杯取る計算で、原価率を狂わせない仕組みです。さらに、週替わりメニューの売れ残りは返品可能な契約を仕入れ先と交渉し、複数店舗間のローテーションでロスを削減しています。「高級ワインを適正価格で出す」というコンセプトは、このロス管理なしには成立しません。

 

コスト抑制=ソムリエなし・内装なし

すでに説明したとおり、ソムリエを置かないことで人件費を抑え、内装にお金をかけないことで初期投資を抑えています。この2つはコンセプトの実現と同時に、利益構造の強化にも直結しています。コンセプトとコスト設計が完全に一致しているのが、このモデルの強さです。

 


失敗はすべて「コンセプトのブレ」だった


luvwineの成功は順風満帆ではありませんでした。東口さんは複数の失敗を経験しています。そしてその失敗を一つひとつ振り返ると、すべてに共通する原因が見えてくると言います。それがコンセプトからのブレです。

 

「梅田に出した16坪の店舗は広すぎました。空間が広くなると気軽さが失われ、お客様の心理的なハードルが上がってしまいます。大正に出した25坪・2階・豪華内装の店舗も同じ理由で撤退しています。日本一敷居の低いワインバーというコンセプトと、豪華な内装・広い空間・2階という立地は根本的に矛盾していたんです」(東口さん)

 

ビール専門店や唐揚げ専門店への参入、あるチェーンへのFC加盟も失敗しています。情熱の薄い業態に手を出したこと、そして何より「なぜその店でなければならないのか」というコンセプトの設計が甘かったことが原因だった。そう東口さんは付け加えます。

 

失敗の共通点は明快です。「売上が伸びてきたから拡大したい」「あの業態が流行っているから参入したい」。こうした判断はコンセプトではなく、欲や市場トレンドを起点にしています。コンセプトを起点にしない拡大は、成功の理由そのものを壊すことになります。

 


起業に活かす「2つの問い」


luvwineのモデルが教えてくれることを、冒頭の2つの問いに戻って整理します。

 

「選ばれ続ける理由は何か?」

この問いへの答えがコンセプトです。「誰に・何を・なぜその形で」を一文で言えるまで磨くこと。そしてそのコンセプトが、「やらないこと」の判断基準になるまで具体化すること。luvwineで言えば「ビールを置かない」「ソムリエを置かない」という決断は、すべてコンセプトから自動的に導かれたものです。

 

「利益を生む仕組み化ができているか?」

コンセプトは理念だけでは終わりません。高回転・高密度・ロス極小・コスト抑制という4つの設計が、コンセプトと一致した形で組み合わさっているから、利益が出ます。コンセプトが絵に描いた餅にならないためには、それを数字と構造に落とし込む設計が不可欠です。

この2つがそろったとき、はじめてビジネスは「回り始める」のです。

 


チェックリスト——あなたのビジネスを点検する5つの問い


1)「なぜあなたの店でなければならないのか」を一文で言えますか?

言えないなら、コンセプトはまだ固まっていません。

 

2)コンセプトから「捨てるもの」を明確にできていますか?

絞り込みのない専門店は、専門店ではありません。

 

3)客単価・回転率・コスト構造が、コンセプトと一致していますか?

コンセプトと利益構造がバラバラなビジネスは、いずれ迷走します。

 

4)「拡大したい」と思ったとき、その方向はコンセプトと一致していますか?

成功の理由を壊す拡大は、拡大ではなく後退です。

 

5)専門スキルがなくても運営できるオペレーションになっていますか?

人への依存はリスクです。仕組みで動く設計を目指しましょう。

 

「コンセプトは、飾りではありません。選ばれ続ける理由であり、利益を生む仕組みの設計図でもあります。luvwineが6坪で月商600万円を達成しているのは、奇跡でも才能でもなく、この2つを徹底して設計し、守り続けた結果です。起業を考えているなら、なぜ、選ばれるのかを考え抜く。そしてその答えを、利益が出る構造に落とし込む。それがこのビジネスから学べる、もっとも本質的な教訓だと思います」(東口さん)


【話を聞いた人】

東口浩二(ひがしぐち・こうじ)

1971年奈良県生まれ。高校卒業後、本田技研工業に就職するも海外への情熱から退職。その後、約10年間にわたって世界各地を放浪したあと、英語ビジネススキル研修会社に就職し営業を担当し、のちに退職。2006年、株式会社SEVEN SEASを設立し、大阪・天満に「お気軽高級ワインバー luv wine(ラブワイン)」を開業。高級ワインをグラス1杯1000円台で楽しめる業態で注目を集め、現在は5店舗を展開し全国フランチャイズ準備中。

著書『1坪で月100万円稼ぐ 繁盛店の作り方』

 
 
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